自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第4章

第154話 お約束、成らず

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「うわっ!来る!」
「お茶とか隠そう!マジックバックも見つからないようにして!」

ラルフ君達はそういうと、僕にお茶のカップを手渡した。ラグから出て靴を履いて身構える。
ピンクツインテールの後ろから王子達も追いかけてくる。オリーヴィアさんのところからもファビアンさんが飛び出して来ていた。
オリーヴィアさんも立ち上がっている。
何が起きるか分からない感じがして、僕とリヒャルトさん達も靴を履いてラグから出た。

「あー!!なによぅ。こんなに採ってぇ!」
僕達が居る木陰の近くまで来たと思ったら、指差して怒鳴って来た。

「貴方達が、採りすぎるからあの子達が採れないんでしょう!ズルしないでよぅ!」
「はぁ?」

ズル、とは?よくわからない事を言われたぞ。
追いついて来たイーチ王子が、僕たちのラグの上の眺める。

「ふむ。そちらはずいぶん採取できたようだな。」
「イーチ様ぁ、こんなに採られちゃったから、あの子達が薬草採れなかったんですよぉ。あの子達が可哀想でぇ。」

ピンクツインテールが両手で顔を覆った。

「ああ、レーナは優しいな。」

イーチ王子がレーナの肩を抱く。
いや、さっき、ギュンター君達のこと怒鳴ってたじゃん。

「ずるいじゃないですかぁ。そっち大人も交じってるからですよぉ。」

ピンクツインテールがちらっとこちらの方を見た。

「そうだな。おい、そこの二人。こっちのチームに加われ。」

イーチ王子が、リヒャルトさんとインゴさんに向って言った。

は、何馬鹿なこと言ってんだ?

「何馬鹿な事言ってるんですか!!」

僕の心の声を代弁したように発言したのは、今到着したばかりのオリーヴィアさんだった。

「ば、馬鹿だと!?」

イーチ王子の顔にさっと赤みが差した。

「馬鹿でなければ、卑怯です!勝負の途中でルールを変えるのが卑怯でなくてなんだというんです!」

「俺が、卑怯だというのか!?」
「それに収穫量が少ないからと、怒鳴りつけるなんて、圧政をする暴君と変わりないじゃないですか!」
「な‥‥!」

イーチ王子の身体の周囲にゆらっと魔力がわき上がった。顔が真っ赤で、眉はつり上がって、凄い形相でオリーヴィアさんを睨んでいる。

「‥‥さすがに、今の発言の看過できぬ!」

なんか悪い予感がするぞ。

ダン!と一度、右足で地面を踏みしめ、それから、オリーヴィアさんの事を指差した。

「オリーヴィア・ブランシュ侯爵令嬢!! 貴様との婚約を「魔獣だー!!魔獣が出たぞー!!!!」」

イーチ王子の言葉を遮るように、大声が響いた。振り向くと、ギュンター君達が、こちらに向って走ってくる後ろを、角狼の群れが追いかけてきていた。

「キャー!! こっちに来ないでよー!!!」

ピンクツインテールが叫ぶ。
イーチ王子が、自分の背中にてをのばそうとして、「大剣が‥‥。」とつぶやいた。大剣を、先ほどいた木陰に置いて来てしまったようだ。
すぐに、切り替えて、腰の短剣を抜いて身構える。
ギュンター君達も逃げながら短剣を振っている。
ベルンハルト君の剣が、角狼の前足切り裂いた。
ギルベルト君が角狼に飛びかかられて、吹っ飛ばされた。ゴロゴロと転がって、すぐに起き上がり走り出す。
ギュンター君達の様子を目で追っていたとき、目の端に何かが動くのが見えた。

「あ!」

別方向から飛び出して来た角狼がイーチ王子に向って襲いかかって来た。

「イーチ様!危ない!」
オリーヴィアさんが、弓を振り回して、角狼の頭を叩いた。

「オリーヴィア!?」

頭を叩かれて体勢をくずした角狼に対して、イーチ王子がすかさず、短剣を振るう。
騎士団長令息、アルベルトさんが、剣でとどめを差した。
続けて迫ってくる角狼を、魔法師団長令息のヘルマンさんが、水の刃を放って、撃退している。
ファビアンさんは、オリーヴィアさん達令嬢を木の傍まで避難させて、庇う用に前に立った。
ギュンター君達三人がやっと、近くまでたどりついた。

「こっちまで来て!!」

僕は、木の近くまで来るように、三人に声をかけた。
三人が駆けて来てラグの上に倒れ込んだ。
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