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第4章
第142話 クロケー
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通りからお店の中を見ていると、男の子が気がついて、こちらに歩いて来た。
「‥‥3人かぁ?今日は、クロケーかシチューだぞ!」
緑色のクセ毛の髪の男の子が僕の目の前で得意げに言った。僕より頭半分くらい背が高い。
「クロケー?」
「知らないんか。なんかジャガイモやら干した魚やらを丸めて、油焼きしたやつだよ。あ、今日のは、ジャガイモだけだって。」
「油焼き?」
「それも知らないんか。多めの油で焼いてるんよ。」
揚げ焼きか、炒め物みたいな感じなのかな。油とジャガイモなら美味しそうだよね。
「じゃあ、それにする。」
僕がそう言うと、男の子は厨房の方を振り返って、大きな声で言った。
「クロケー三つ!」
あ、リヒャルトさん達の分も同じになっちゃった。慌てて二人の方を見ると、「問題ない」という様子で頷いてくれる。
食堂には4人用のテーブルが6つ。
奥の方のテーブルに案内された。席に着くのと同時くらいに、厨房からジュアーという油で揚げるような音が聞こえて来た。
しばらく待っていると、女将サンとマルセル君でお皿を運んで来た。
「はいよ。クロケー三つ。」
テーブルの上に置かれたお皿の上には、クロケーと呼ばれる、コロッケがあった。
付け合わせに人参のソテーと、キャベツの漬け物のような物が乗っていた。
ナイフで切ると、サクッと軽い音がする。断面は、少し粒が残った状態のジャガイモだった。
ナイフで切って一口食べてみる。見た目の通り、僕が知っているジャガイモコロッケだった。
「これは‥キャベツの千切りと一緒にしてソースをかけて食べたい。そしてパンで挟みたい!」
コロッケってなんであんなにキャベツの千切りと合うんだろうね。
コロッケパンを妄想していると、持ち場に戻りかけていたマルセル君が、くるりと振り向いてこちらにやって来た。
「おい、ソースかけたいとか、うちの味付けになんか不満か?」
「マルセル!」
マルセル君の言葉に、女将さんが慌てて振り返った。
あ、お店の味にケチつけたみたいに見られちゃったか。
「ごめんなさい。僕の故郷での食べ方を思い出しちゃったんだ。こういう揚げたお芋にと生の千切りキャベツとソースをかけた料理が大好きで。
とくに、パンに挟むと、冷めてもすっごく美味しいんだ!コロッケパン最高!」
「お、おう。」
コロッケは、エルストベルクの屋敷でも作ってもらった事があったけど、王都に来てから食べてなかったな。
たまに食げると美味しいんだよね。今度作ってもらおう。
「こ、コロッケパン? クロケーとパンってことか?」
「パンに挟むんだよ。お弁当とかにいいんだよ。」
「なんで挟む必要があるんよ。パンと一緒に食べれば一緒だろ。」
「えー、別々に食べてももちろん美味しいんだけど、挟んだ時は格別なんだよ。やってみればわかるよ。」
パンで挟んで食べる習慣がないのかなー。
「‥‥。」
マルセル君はパッと女将さんの方を振り向いた。
「母さん、俺、パンに挟むってやつやってみたい。」
「もう。お客さんの前だろう。後になさい。‥‥すみませんねぇ。」
「賄いまだじゃん。裏で食ってくる。」
マルセル君は試してみる気満々になったみたいだ。そういえば、お昼時より少し早めに入ってしまったから、マルセル君のお昼のタイミングがずれてしまったのかもしれない。
まだ、お客さんが他にいないし、マルセル君の給仕の仕事は済んでいるからか、女将さんは、「好きにしなさい」と肩をすくめた。
「‥‥3人かぁ?今日は、クロケーかシチューだぞ!」
緑色のクセ毛の髪の男の子が僕の目の前で得意げに言った。僕より頭半分くらい背が高い。
「クロケー?」
「知らないんか。なんかジャガイモやら干した魚やらを丸めて、油焼きしたやつだよ。あ、今日のは、ジャガイモだけだって。」
「油焼き?」
「それも知らないんか。多めの油で焼いてるんよ。」
揚げ焼きか、炒め物みたいな感じなのかな。油とジャガイモなら美味しそうだよね。
「じゃあ、それにする。」
僕がそう言うと、男の子は厨房の方を振り返って、大きな声で言った。
「クロケー三つ!」
あ、リヒャルトさん達の分も同じになっちゃった。慌てて二人の方を見ると、「問題ない」という様子で頷いてくれる。
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しばらく待っていると、女将サンとマルセル君でお皿を運んで来た。
「はいよ。クロケー三つ。」
テーブルの上に置かれたお皿の上には、クロケーと呼ばれる、コロッケがあった。
付け合わせに人参のソテーと、キャベツの漬け物のような物が乗っていた。
ナイフで切ると、サクッと軽い音がする。断面は、少し粒が残った状態のジャガイモだった。
ナイフで切って一口食べてみる。見た目の通り、僕が知っているジャガイモコロッケだった。
「これは‥キャベツの千切りと一緒にしてソースをかけて食べたい。そしてパンで挟みたい!」
コロッケってなんであんなにキャベツの千切りと合うんだろうね。
コロッケパンを妄想していると、持ち場に戻りかけていたマルセル君が、くるりと振り向いてこちらにやって来た。
「おい、ソースかけたいとか、うちの味付けになんか不満か?」
「マルセル!」
マルセル君の言葉に、女将さんが慌てて振り返った。
あ、お店の味にケチつけたみたいに見られちゃったか。
「ごめんなさい。僕の故郷での食べ方を思い出しちゃったんだ。こういう揚げたお芋にと生の千切りキャベツとソースをかけた料理が大好きで。
とくに、パンに挟むと、冷めてもすっごく美味しいんだ!コロッケパン最高!」
「お、おう。」
コロッケは、エルストベルクの屋敷でも作ってもらった事があったけど、王都に来てから食べてなかったな。
たまに食げると美味しいんだよね。今度作ってもらおう。
「こ、コロッケパン? クロケーとパンってことか?」
「パンに挟むんだよ。お弁当とかにいいんだよ。」
「なんで挟む必要があるんよ。パンと一緒に食べれば一緒だろ。」
「えー、別々に食べてももちろん美味しいんだけど、挟んだ時は格別なんだよ。やってみればわかるよ。」
パンで挟んで食べる習慣がないのかなー。
「‥‥。」
マルセル君はパッと女将さんの方を振り向いた。
「母さん、俺、パンに挟むってやつやってみたい。」
「もう。お客さんの前だろう。後になさい。‥‥すみませんねぇ。」
「賄いまだじゃん。裏で食ってくる。」
マルセル君は試してみる気満々になったみたいだ。そういえば、お昼時より少し早めに入ってしまったから、マルセル君のお昼のタイミングがずれてしまったのかもしれない。
まだ、お客さんが他にいないし、マルセル君の給仕の仕事は済んでいるからか、女将さんは、「好きにしなさい」と肩をすくめた。
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