上 下
125 / 466
第3章

第125話 混乱は手鏡の所為です、多分

しおりを挟む
しばらくの間、彼らが、ギュンター君が捕えられている地下室に向わないように見張っていると、何か騒がしい声が聞こえてきた。
乱暴に扉がノックされ、乱暴にドアが開き御者台に居た男が入って来た。

『おい!王国騎士団がきたぞ!やつらを隠せ!』
『は?』
『今、村の門で足止めしている。今のうちに証拠を隠せ!』
『計画が漏れたってことか?』
『さあな、とにかく役所の地下牢に貴族の坊ちゃんがいるのはまずい。どこかに移動させて隠せ。』

御者台の男に言われて、一人の男が、奥の地下室に向う扉を開けようとした。
バチンと音がして、弾かれる。
見張っている間に密かに結界の魔道具を起動していたんだ。

『どうしたんだ?』

御者台の男が、室内に足を踏み入れた。御者台の男が完全に部屋の中に入ってから、その扉の所でも結界魔道具を発動させた。
最初、地下室へ続く扉が開けないと騒いでいたけど、戻って、報告しようとして、入って来た方の扉も開かなくなっていることに気がついたようだ。

『何だ?どうなっている!?』
『出ようとすると、何かに弾かれるぞ!』

窓から出ようとし始めたので窓にも結界の魔道具を発動させておこう。

村の門近くの映像を見てみる。
王国騎士団の紋章がついた鎧を着た騎士達が、十数名、村の門の前で門番とにらみ合っていた。
馬車が2台と馬に乗った騎士。先頭の騎士達は、馬から下りて、門番と話をしていた。

『捜査令状が出ている!早く中に通せ!拒否は許されんぞ!』
『ですから、只今村長に伝えていますんで、お待ち下せぇ』

村の門の前で髭面の門番が一人、騎士達と話している後ろで、門は閉ざされていて、内側に別の門番が立っていて、門に背を向け村の中央の方に目を向けていた。
門のところで、時間稼ぎをしてその間に隠蔽しようとしているのか。

村役場の建物の映像に切り替える。バタバタと慌ただしくなっていた。
灰色の髪の男が怒鳴っている。

『奴らを運び出せって言っただろう!まだなのか!騎士団が入って来てしまうぞ』
『ちょっと確認してきやす』
『村長~。荷車持ってきやした~。来たら教会裏の倉庫に運べばいいんで?』
『ああ、そこで待ってろ!』

奥の部屋に居た人達以外にも、仲間がいたのか。
逃がさないようにしよう。建物の外を偵察君で一周して、窓と裏口に結界を張った。最後建物入り口の扉がしまったタイミングを見計らって
入り口も結界で塞ぐ。

「騎士団の人達が、すぐに場所がわかったほうがいいよね。」

発煙筒のようなものをつくろう。火の魔石と、何か燃えるもの。草、布、油をストレージ錬金ボックスに入れて、燃えて煙がもくもくと出て、その煙をカプセルに閉じ込めるイメージを浮かべる。チン! 出来上がり。簡易発煙筒、「もくもく君」だ。

これを建物の二階の部屋に放り込んで、煙を出せば、騎士団が村に入って来たときに目印になるんじゃないかな。
もくもく君を量産しようとしたら、プティがもくもく君に前足をちょんと乗せた。もくもく君カプセルがぴかっと光った。

(威力アップにゃ)
「プティ。ありがとう」

もくもく君威力マシマシを、10個くらいつくって、建物の二階の部屋に放り込んだ。窓を開け、煙が出るようにしておく。
途端に、煙が凄い勢いで、広がって行き、窓から流れ出て立ち上った。

村の門のところからも、立ち上る煙が見えたようだ。

『何だ?火事か?煙が!?』
『なんだあの煙』
『早く門を開けろ!燃え広がるぞ!』

煙を見て門番達が慌て出すと、騎士が門番に詰め寄った。

『え、いや‥‥あの‥‥』
『村が燃えちまうぞ!』
『あぁ~』

動揺した門番は、門の内側にいる門番に開けるように指示を出した。

村役場の一階では、2階から煙が流れてきて大騒ぎになっている。

『ごほっごほっ。何故出られない!だれか、扉を壊せ!窓でもいい!』

煙が広がって来ているのに、外に出られなくなってパニック状態になっているようだ。
奥の部屋は、結界のおかげで煙は流れて来ていないけど、部屋から出られなくなったのでなんとか外に出ようと
叫び声をあげながら、扉に体当たりしたり椅子をぶつけたりしている。

ーーーー「混乱」状態にゃ。パニックにゃ。

状態異常耐性の解説が聞こえて来た。よく見ると、手鏡が床に落ちて、割れていた。

ーーーー「混乱」の手鏡にゃ。割れて壊れたニャ。一時的に「混乱」が広がってるニャ。一時間位で収まるニャ。

一時間で収まるなら大丈夫かな?全員暴れているけど本当に大丈夫?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元おっさんは異世界を楽しむ

たまゆら
ファンタジー
不慮の事故によって死んだ須藤ナイト(45)は16歳に若返って新たな世界に転移する。 早々に人狼の幼女達と出会ったナイトは、とりあえず幼女の村で世話をしてもらうことになる。 と、思いきや、幼女の村に強大なモンスターが襲撃してきて……。 そんなドタバタな始まりを迎えるも、元おっさんの異世界生活は順調です!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

テイマーは死霊術師じゃありませんっ!

さんごさん
ファンタジー
異世界に転生することになった。 なんか「徳ポイント」的なのが貯まったらしい。 ついては好きなチートスキルがもらえるというので、もふもふに憧れて「テイム」のスキルをもらうことにした。 転生と言っても赤ちゃんになるわけではなく、神様が創った新しい肉体をもらうことに。いざ転生してみると、真っ暗な場所に歩く骸骨が! ひぃぃい!「テイム!テイム!テイム!」 なんで骸骨ばっかり!「テイム!テイムテイム!」 私は歩く。カタカタカタ。 振り返ると五十体のスケルトンが私に従ってついてくる。 どうしてこうなった!? 6/26一章完結しました この作品は、『三上珊瑚』名義で小説家になろうにも投稿しています

幼馴染みが婚約者になった

名無しの夜
ファンタジー
 聖王なくして人類に勝利なし。魔族が驚異を振るう世界においてそう噂される最強の個人。そんな男が修める国の第三王子として生まれたアロスは王家の血筋が絶えないよう、王子であることを隠して過ごしていたが、そんなアロスにある日聖王妃より勅命が下る。その内容は幼馴染みの二人を妻にめとり子供を生ませろというもの。幼馴染みで親友の二人を妻にしろと言われ戸惑うアロス。一方、アロスが当の第三王子であることを知らない幼馴染みの二人は手柄を立てて聖王妃の命令を取り消してもらおうと、アロスを連れて旅に出る決心を固める。

【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」 前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。 軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。 しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!? 雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける! 登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【完結】猫化の呪い持ちを隠して嫁がされたのに何故か溺愛されています!

長船凪
恋愛
ヴィルシュテッター帝国、ゼーネフェルダ子爵家の長女にとして生まれたエリアナ・ド・ゼーネフェルダ。 満月の晩に獣に変身する(猫耳に尻尾を持つ姿)呪い持ちの子爵令嬢。 旦那様は竜族の血を引子孫のゴードヘルフ・ラ・クリストロ小公爵。 そこに嫁ぎ、子を産むと早死にすると世間では恐れられていた。 今の公爵夫人は再婚で二人目。 呪い持ちを隠して輿入れさせられたのは、父が事業に失敗したあげく、カジノで起死回生を狙うも失敗し、借金が増えた為。 そんな中、不意に届けられた竜族の血を引く一族の末裔、クリストロフ公爵家からの子爵家への求婚状。 何故か子爵家の令嬢なら誰でも良いような書き方で、しかし結婚支度金が多く、金に目が眩んだ子爵は即、娘を売り飛ばすことにした。 しかし、満月の夜にケモ耳っ娘に変身する呪い持ちのエリアナだったが、実はある特殊な権能があった。その権能はデメリットつきではあるが、夢の中の図書館にて異世界の記録、物語、知識等を得られるものであった。 *カクヨム等で先行投稿しています。

召喚されたけど不要だと殺され、神様が転生さしてくれたのに女神様に呪われました

桜月雪兎
ファンタジー
召喚に巻き込まれてしまった沢口香織は不要な存在として殺されてしまった。 召喚された先で殺された為、元の世界にも戻れなく、さ迷う魂になってしまったのを不憫に思った神様によって召喚された世界に転生することになった。 転生するために必要な手続きをしていたら、偶然やって来て神様と楽しそうに話している香織を見て嫉妬した女神様に呪いをかけられてしまった。 それでも前向きに頑張り、楽しむ香織のお話。

処理中です...