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第3章

第122話 あの建物は

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王都の外に出ると映像が途端に小さくなる。
王都内より記録魔道具を配置している数が少ないんだった。それでも視界を遮る物が少ないので、いまのところ街道を走って行く馬車の姿を追うことが出来ている。

ほぼ真っ暗な平原に、馬車のランタンの灯りだけがぽうっと光って移動している。
その映像は映し出したまま、別画面にマップを表示した。マップの中に追尾対象となっている馬車の位置を表示してある。
その馬車の行く街道の先に村がある。この村ってこの間探索しにいった村じゃないかな。

馬車で一時間くらいの距離だけど、夜だし、馬車の移動速度はもう少し遅そう。
今馬車を表示している映像の時刻を開始日時にして、村の門付近の記録魔石の映像から馬車の姿を検索。1時間半後にヒットした。
馬車が村の門を入って行く。門から馬車の姿を追う。
街道を走っている途中で何かある可能性もあるから、街道の映像は村のところまで、記録魔石に転写しておこう。

村の中央の道を馬車が通って行く。村には街灯がないのか真っ暗だ。所々、民家の窓から灯りが漏れているけれど、暗くて進みにくいのか、馬車はゆっくりと移動している。
馬車が建物の前で停車した。

馬車の荷台から一人飛び降りてきて、建物のドアを叩く。
ドアが開いて、痩せた灰色の髪の男が顔を出した。背はあまり高くない。荷台から降りて来た大柄な男がぼそぼそと何か言うと、ドアから出て来た灰色の髪の男が、
馬車の方を見た。

『もう連れて来ちまったのかよ。業者はまだ数日来ねえぞ。』
『兄貴はどこだとかごちゃごちゃ言い出したから、黙らせた。』
『おい、傷を付けると売値が下がるだろうが。』
『顔は避けたぞ』

御者台に居た男と、荷台にいたもう一人の男が、馬車の荷台から二つの袋を抱えて降ろした。
灰色の髪の男が袋を見下ろす。

『もう一人は?』
『貴族の坊ちゃん』
『おい、ばれたらまずいだろうが』
『探しにくる前に売っちゃえばいいだろ』
『しょうがねぇなぁ。』

灰色の髪の男が、ドアを大きく開けてから、指図するように顎を動かした。
男たちが袋を肩に担ぎ上げて、ドアの奥に入って行ってドアが閉まった。御者の男は、馬車に戻っていって、馬車をどこかに移動させていった。
場所を確認しようとして、周囲を見回すように見た。
建物にある看板を見てギョッとする。この建物、役場と冒険者ギルドのある建物じゃん。

村役場か冒険者ギルドが誘拐に関わっている? もしかして両方?

村の役場前の座標の記録魔道具の映像に切り替える。今の時間は、夕方でまだ日が暮れていないから急に外が明るくなったように見えた。
ゲートを開いて、偵察君を送り込む。建物の中に一つ。外に一つ。
建物の中の偵察君は、ギュンター君を捜すように設定した。
外のは周囲を確認するためだ。
役場と冒険者ギルドの看板がある建物だ。通りには人がいない。
建物の偵察君が、ふよふよと飛んで中の様子を映し出している。カウンターがあって、そこに年配の女性が一人座っている。
カウンターのところに、役場と冒険者ギルド両方の張り紙が張ってある。受付一つなんだ。

偵察君は奥の扉のところまで飛んだ。通り抜ける隙間がなさそうなので、扉の向こう側の天井付近の座標にゲートを開いて移動させる。
扉の向こう側は廊下だった。いくつかの部屋を見て回る。一番奥の扉の部屋の中に入ってみると人が居た。

窓際に置かれた執務机のところに灰色の髪の男が座っていた。何かを感じ取ったかのように顔を上げて周囲を見回した。
気づかれた?ドキーンと、心臓が飛び出しそうになる。
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