自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第3章

第119話 緊急案件ですか?

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最初に出て来た画像は、大きな屋敷の門から、冒険者姿のギュンター君が飛び出して行くところだった。トリット家のお屋敷かな。
貴族街を駆けて行く姿。市民街の通りに入って行く。冒険者ギルドの建物に入ったところも映った。

冒険者ギルドの中の映像。
冒険者ギルドの中にまだ記録魔道具を配置していたんだった。
ギュンター君は冒険者ギルドのフロアをキョロキョロとした後、何人かに話しかけてから、冒険者ギルドを飛び出して行った。
それからまた市民街の通り。
時間帯は夕方らしく、長い影ができている。
ギュンター君は、市民街の通りをうろうろと歩きまわっていて、時々食事処や、色々な店に立ち寄ってはすぐに出てを繰り返していた。段々、日が沈んで来たのか映像が暗くなってきた。

少し寂しげな通りに入ったギュンター君が立ち止まってどこかをみたと思ったら、何か言葉を発してから走り出した。
そして裏路地に入って行った。
裏路地は薄暗くて写りが良くない。既に日が沈みかけていて暗すぎてギュンター君の特徴が認識できなくなったのか映像が途切れてしまった。
ある程度暗くても映るように改良しないといけないな。露出とか調整してみよう。赤外線とか必要かな。
いや、魔力を可視化できるようにするのもありかもしれない。今度検討しよう。

今後の改良案を考えながら次の映像を待っていたんだけど、出てこない。
「あれ?」
(続きがにゃいにゃ?)

僕の隣で、香箱座りをして映像を見ていたプティが言った。

「夜になって暗くなったから映らなくなったのかな。次の日とかは‥‥。」

まだ、解析処理中なので、しばらく様子をみていたんだけど、なかなか次の映像がでてこない。何だか嫌な感じがする。
処理を待っている間に、最後に映っていた映像の周辺の映像を見てみた。
ギュンター君が立ち止まっていた場面を後ろから映している映像があった。ギュンター君の視線の先に、女の子の姿が映っていた。
ゾフィーだ。

『ゾフィー、待って!話がしたいんだ!どこに行くの?』

バタバタという足音。ゾフィーらしき人影は、足を止める事なく走っていく。ギュンター君が追いかけていく。小さくなって行く後ろ姿が別の路地に入って行くのが映ってそこから姿が見えなくなってしまった。
その先の路地の映像を映してみたけど、凄く暗い。夕闇で辺りが段々と暗くなって行く上に、裏路地には街灯とかがない。走って行く足音が段々小さくなっていく。

「うわー、どうしよう。課題山積みだけど‥‥。今はギュンター君を見つけなくちゃ。」
一旦映像を止めて、検索条件を変更。

ギュンター君の声のサンプルを集めて、条件に追加した。それと暗くても解析できるように明るさの補正もしておこう。
時系列に抽出するようにする。開始座標と時刻は先ほどの路地裏の場面を設定。
これで一旦検索を開始してみる。
今度は結果が表示された。
薄暗い中走って行く人影。バタバタという足音。時々、ギュンター君がゾフィーを呼ぶ声。

『ゾフィーどこに行くの? 待って!』

ギュンター君が、ゾフィーに追いついたようだ。ゾフィーの腕を掴んでいる。

『ギュンターさまぁ、あのぅ~あたし~』
『ゾフィ一体どうしたんだい?どうして逃げたの?』
『ちがうのぉ~。あたしぃ~あのぅ~』
『ゾフィ?』
『そのぅ~、ご、ごめんなさぁい~』
『何が‥‥うっ‥‥』

ギュンター君の後ろから、いきなり、大きな人影が現れて、腕を振り上げギュンター君の頭を何かで殴った。ガツンという音とギュンター君が呻くような声がほぼ同時に聞こえた。ドサッと、ギュンター君が倒れた。

ギュンター君を殴った男の顔が映る。見た事ある顔だぞ。
確か、大根役者の破落戸の一人だ。
その人物が、ギュンター君を肩に担ぎ上げ、歩きだした。ゾフィーが後からついて歩いている。
そして、路地を何回か曲がったところにある建物に入っていってしまった。

「これ‥、まずくない?」
(誘拐にゃ?)
「誘拐‥だと思うけど‥‥、ギュンター君は気を失っただけ、だよね‥‥。」
(殴られて倒れたのは間違いにゃいにゃ。気を失っただけかはわからにゃいにゃ。)
「プティ、冷静。‥‥とりあえず、叔父様に連絡しよう。」
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