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第3章

第112話 腕輪の量産

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叔父様が接客を終えて商談室に来ているかもしれないので、作業室にはあまり長居せずに、商談室に戻った。
叔父様はまだ来ていなかった。テーブルの上にお菓子と果実水が並べられている。

「おかえり、叔父上はもう少しで来るって。」
「そうなんだ。じゃあ、ちょうど良かったね。」

僕は兄様の隣に座って、果実水を飲んだ。今日の果実水は桃みたいな香りがする。
兄様が言った通り、少しして叔父様が部屋に来た。

「やあ、お待たせしたね。」
「いいえ、コチラこそ、急にお邪魔してしまったので。」

叔父様は兄様と僕を交互にハグした。

「また何か作ったと聞いたけれど‥‥。」

叔父様は、テーブルの隅に置いた箱を覗き込んだ。腕輪の形状から、すぐに何か気がついたようだ。

「これは‥‥。なるほど。」

叔父様は鑑定器具を出して来て、腕輪を一つ一つ確認した。
そして、全部確認終えてから顔を上げて、急に立ち上がって、片手で僕を抱え上げた。

「混乱耐性の腕輪だね。しかもこんなに早く!素晴らしいよ、ソーマ!」

クルーリと一周回ってから、長椅子に降ろされた。

「もしもの時に備えて。あ、母様が、屋敷の使用人全員分欲しいんだって」
「すぐに作らせよう。これがベースの魔石だね。従業員の分も作らないとね。」

叔父様は、腕輪と一緒に箱に入っていた魔法陣魔石を手にとって、窓からの光に透かして、魔法陣を眺めた。

「‥‥、最近色々事件があるからね。こういう物を作ってくれて、本当に助かるよ」
「えへへ。」

叔父様がそう言って僕の頭を撫でたので、僕はちょっと照れくさくなって、笑った。
役に立てたなら嬉しいな。

商会に魔法陣魔石を持って行った二日後に、叔父様とヘンリーさんが屋敷にやって来た。
出来上がった使用人用の混乱耐性のペンダントと腕輪を持って来てくれたんだ。
腕輪だと騎士の人とか激しく動く人が壊しやすいかもしれないからって、腕輪かペンダントか選べるようにしてくれたんだって。
ペンダントも腕輪も、混乱耐性の他に魅了耐性の魔石もつけてある。さらに追加もしやすい作りになってるんだけど、もう変な状態異常とか、ないほうがいいよね。

「それと、シュナイダー伯爵令嬢の件、トリット伯爵令息の思い込みだったことを示す映像が見つかったよ」

ヘンリーさんは僕が見た映像の記録魔石以外にも、条件で抽出しただけの記録魔石とかもチェックしてくれたようだ。

「ゾフィーって子の兄が、トリット伯爵令息を嵌める為に、破落戸を雇ってゾフィーを襲うふりをさせて、トリット伯爵令息に近づいたようだ。
貴族だから金払いがいいだろうと見込んでいたらしいんだが、思ったほどではなかったのか、破落戸を雇ったときの金が払えず、怒りを買ってゾフィーの装備品を持って行かれたというのが真相のようだよ。」

既にビアンカ嬢の家であるシュナイダー伯爵家には報告に行っていて、後はシュナイダー伯爵家と、ギュンター君の家のトリット伯爵家の話し合いになるみたい。

「それで、状態異常の何かを持っているかもしれない少女はどうなったのかしら。」

母様は、出来上がった腕輪やペンダントを眺めてから、顔を上げて叔父様を見て行った。
叔父様は肩を竦めた。

「映像を見る限り魔道具らしきものは、映ってはいなかったんだ。
 周辺の言動が少しずつ変になっているようには見えるんだけどね。濡れ衣を着せられた件でシュナイダー家が動いて身柄を確保してからになるね。」

ビアンカ嬢の家の騎士にも、混乱耐性の魔道具を渡して来たんだって。確かに捕まえようとして混乱状態になったら大変だよね。

「そう‥‥。まだ街中を歩いているかもしれないのね。」
「この魔道具があれば、遭遇したとしても大丈夫だとは思うけど‥、実際に試してないから、ケニーもアリサもソーマも気をつけるんだよ」

叔父様が、僕と兄様と姉様を見て言った。
僕達は頷いた。

もしもどこかで遭遇したとしたら、お茶会で遭っているアリサ姉様が、近づかれる可能性が一番高いのかな。
でも、僕と兄様もお茶会では目立たなかったけど、ギュンター君と面識があるから、ゾフィーがギュンター君と一緒に居るところとかに遭遇したら
声をかけられたりする可能性はあるんだよね。
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