自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第3章

第105話 叔父様は素敵だよね

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メイドがお茶を淹れ直してくれた。温かいミルクティを一口飲み、ふぅっと深く息を吐いた。
さっきは何だか、感情が高ぶってしまった。皆に心配かけちゃったし、ちょっと恥ずかしいかも。

とりあえず気持ちを落ち着けようと、ゆっくりとミルクティを飲んでいるとノックの音がして叔父様が入って来た。

「やあ、こんにちは‥‥。」

叔父様は挨拶して部屋の中を見回した。僕と目が合ったと思ったら、まっすぐ僕のところに歩いて来て、
ひょいと抱え上げられた。

「ソーマ、どうした?目と鼻が赤いよ。何か有ったのかい?」

僕は今年に入ってから身長だってちょっと伸びたはずなのに、叔父様は、軽々と持ち上げちゃうんだな。
スラッと細身なのに、中身はゴリラみたいに筋肉質なのかもしれない。辺境育ちだもんね。

「ううん。なんでもないよ。ラルフ君達の話を聞いていたら、ちょっと悲しい気持ちになっちゃったんだ。あ、ラルフ君達は全然悪くないよ!」

ラルフ君の名前を出した途端、叔父様の目がギラリとしたので、慌てて補足しておく。
さっき聞いた話をかいつまんで、叔父様に伝えた。
叔父様は、大きく呼吸した後、長椅子に腰を下ろして僕を膝の上に乗せた。
そして母様の方を見て、よく通る低い声で言った。

「なるほど、少しだけ状況は飲み込めましたが、義姉上が僕を呼んだ理由は、トリット家の長男に関する調査ですか?
それとも、伯爵家と冒険者ギルドとの取引の制限ですかね。」
「察しが早くて助かるわ、マーカス。全部お願いできるかしら。」
「ソーマを泣かすなんて許せませんからね。」

え?僕? 僕直接は全然関係なくない?

「叔父様、僕じゃなくて、ビアンカ嬢とラルフ君とロルフ君のこと‥‥。」
「わかってるよ、ソーマ。」

叔父様はぽんぽんと僕の頭を撫でた。

「あ、あのっ! エルスト商会会長のマーカス・エルストベルク様でしょうか。」

ラルフ君とロルフ君がおずおずと言った様子で、叔父様に話しかけた。

「ああ、マーカス・エルストベルクだ。ラルフ君とロルフ君だね。初めまして。」
「はい!初めまして!」
「うわー! マーカス卿にお会いできるなんて!憧れなんです!」

ラルフ君とロルフ君のテンションが急に上がった。キラキラした目で叔父様を見ている。

「憧れ‥かい?」
「はい。あの、僕たち次男と三男で‥‥。嫡男でないマーカス卿が国一番の商会を作り上げられたのが本当に凄いなって。‥‥あ、気に障ったら申し訳有りません。」
「いや、別に気に障ったりしないよ。お褒めいただきありがとう。」

エルスト商会って国一番なの?知らなかったよ。
ラルフ君とロルフ君は、叔父様と挨拶をして、とても嬉しそうにしていた。それから、叔父様の膝の上に乗せられている僕をみて言った。

「ソーマ君。君、素敵な叔父様にかわいがられているんだね。」
「うん、叔父様は、力持ちで優しくて素敵だよ。」
「いや‥、そこじゃ‥‥。うん、素敵だね。」

ラルフ君は何か言いかけた感じだったけど、言うのをやめたみたいだ。とりあえず叔父様は素敵だよね。
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