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第3章
第104話 ちょっと思い出しちゃいました
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ラルフ君とロルフ君は、今日の出来事を思い出したのか、またちょっと恐縮した様子になった。
「ゾフィーが破落戸に襲われたんだ。」
「前に、依頼途中で見つけて助けたって行っていた件?」
「そうじゃなくて、今日‥‥あれ?‥‥、今日はゾフィーと待ち合わせをしていて、3人で迎えに行ったんだ。そうしたら、ちょうど破落戸に絡まれているところで
僕たちが駆けつけようとしたら、ゾフィのペンダントと腕輪を取って逃げて行ったんだよ。」
「その人達を捕まえたわけではなかったってこと? なんで、ビアンカ嬢のせいになったの?」
「ギュンター君がそいつらを追いかけようとしたら、ゾフィーがギュンター君を止めたんだ。なんか怯えている様子で。
それ、ギュンター君が『誰かに脅されてるのか? もしかして、ビアンカか?』って。」
「最初ゾフィーも否定をしていたんだけど、ギュンター君が何度も訊いたら、結局頷いて、ペンダントを取り返しにシュナイダー伯爵家に行ったら、
お茶会に行っているって話で。僕たちにもお茶会の招待状が来ていたから、ハーン伯爵家のお茶会かもっていったら‥‥。まさか、あんな風に乱入して行くとは思わなくて‥‥。ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
ラルフ君とロルフ君が、そろってアリサ姉様に頭を下げた。
アリサ姉様は眉を顰め、ふぅーっとため息をついた。
「何それ。破落戸を雇ったとか全く証拠もないんじゃない。」
「うん。ギュンター君の思い込み‥‥、だと思う。僕達止められなくて‥‥。」
「あなた達のせいじゃないわよ。今日のあの様子じゃ何を言っても聞かなかったでしょ。」
「うん。ギュンター君、話聞いてくれないんだ。」
ラルフ君が膝の上に乗せていた拳をぎゅっと握りしめた。
「伯爵家の嫡男だからって、いつも偉そうにしていて‥‥。次男以下のくせにって言われてホント悔しい‥‥。」
ロルフ君の拳もぷるぷると震えている。
母様は、おもむろに扇を広げて口元を隠した。あ、あれ怒っているときのポーズだ。
「‥‥兄様に行っておくわ。あなた達も伯爵家に舐められて、泣いてるんじゃないわよ。ちゃんと言い返しなさいよ。」
「ううっ‥‥。はいっ!叔母様!」
ラルフ君とロルフ君の目からぶわっと涙が溢れた。袖で拭おうとするので、僕は、二人にハンカチを手渡した。
マジック財布には常に複数枚のハンカチが常備しているんだよ。
ラルフ君達は、今日の事だけでなく、冒険者ギルドでもお茶会とかでもいままでずっと悔しい思いをしていたんだと思う。
二人はしばらく声を押し殺して泣いていた。母様は、その後は特に泣くなとか注意をするわけではなく、二人が泣いている間に、何か侍女に指示を出していた。
僕はなんだか胸が苦しくなった。彼らの気持ちがわかるなんて言わないけれど、前世の事を思い出してしまった。父さんも母さんもいなくなってしまって。
そしてプティも‥‥。ちょっと迷惑そうな顔をされながら親戚にお世話になって、また別の親戚の所に行って‥‥。
明日出て行けって言われるかもしれない。高校に行けるかもわからない。ご飯抜きの意地悪をされても、それでもその日住むところがあるだけマシだって
自分に言い聞かせて‥‥。悲しくて悔しくて不安で‥‥。将来どうなるかなんて、もう真っ暗闇の渦みたいで‥‥。
「ソーマ、どうしたの?何でソーマまで泣いてるの?」
「うぅーっ」
兄様がびっくりして抱き寄せてくれたんだけど、涙が止まらなくなってしまった。
ラルフ君とロルフ君も驚いて、僕の顔を覗き込んだ。
「ソーマ君どうしたの? これで涙拭きなよ。ちょっと僕の涙と鼻水ついてるけど」
「‥っ! それは嫌!」
さっき僕がラルフ君とロルフ君に渡した使用済みのハンカチが、差し出された。
べしょっとなったハンカチが近づくのを見て、思わずのけぞってしまう。涙も止まった。
「は、鼻水はちょっと! やめて!押し付けないで!」
「ははっ!やっと笑ったね!」
ラルフ君とロルフ君ももう泣いてなかった。
僕は、マジック財布からハンカチを引っ張りだして。顔に押し当てた。
「ソーマ。」
母様が僕の頭を撫で、そっと抱きしめてくれた。
「ラルフ君とロルフ君につられちゃったのかしら。‥‥大丈夫よ。」
ふわっと母様の感触は柔らかくて、かすかに甘い香りがする。安心する香りだ。
「母様。うん。もう平気‥‥。」
僕はえへへと笑ってみせた。
「ゾフィーが破落戸に襲われたんだ。」
「前に、依頼途中で見つけて助けたって行っていた件?」
「そうじゃなくて、今日‥‥あれ?‥‥、今日はゾフィーと待ち合わせをしていて、3人で迎えに行ったんだ。そうしたら、ちょうど破落戸に絡まれているところで
僕たちが駆けつけようとしたら、ゾフィのペンダントと腕輪を取って逃げて行ったんだよ。」
「その人達を捕まえたわけではなかったってこと? なんで、ビアンカ嬢のせいになったの?」
「ギュンター君がそいつらを追いかけようとしたら、ゾフィーがギュンター君を止めたんだ。なんか怯えている様子で。
それ、ギュンター君が『誰かに脅されてるのか? もしかして、ビアンカか?』って。」
「最初ゾフィーも否定をしていたんだけど、ギュンター君が何度も訊いたら、結局頷いて、ペンダントを取り返しにシュナイダー伯爵家に行ったら、
お茶会に行っているって話で。僕たちにもお茶会の招待状が来ていたから、ハーン伯爵家のお茶会かもっていったら‥‥。まさか、あんな風に乱入して行くとは思わなくて‥‥。ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
ラルフ君とロルフ君が、そろってアリサ姉様に頭を下げた。
アリサ姉様は眉を顰め、ふぅーっとため息をついた。
「何それ。破落戸を雇ったとか全く証拠もないんじゃない。」
「うん。ギュンター君の思い込み‥‥、だと思う。僕達止められなくて‥‥。」
「あなた達のせいじゃないわよ。今日のあの様子じゃ何を言っても聞かなかったでしょ。」
「うん。ギュンター君、話聞いてくれないんだ。」
ラルフ君が膝の上に乗せていた拳をぎゅっと握りしめた。
「伯爵家の嫡男だからって、いつも偉そうにしていて‥‥。次男以下のくせにって言われてホント悔しい‥‥。」
ロルフ君の拳もぷるぷると震えている。
母様は、おもむろに扇を広げて口元を隠した。あ、あれ怒っているときのポーズだ。
「‥‥兄様に行っておくわ。あなた達も伯爵家に舐められて、泣いてるんじゃないわよ。ちゃんと言い返しなさいよ。」
「ううっ‥‥。はいっ!叔母様!」
ラルフ君とロルフ君の目からぶわっと涙が溢れた。袖で拭おうとするので、僕は、二人にハンカチを手渡した。
マジック財布には常に複数枚のハンカチが常備しているんだよ。
ラルフ君達は、今日の事だけでなく、冒険者ギルドでもお茶会とかでもいままでずっと悔しい思いをしていたんだと思う。
二人はしばらく声を押し殺して泣いていた。母様は、その後は特に泣くなとか注意をするわけではなく、二人が泣いている間に、何か侍女に指示を出していた。
僕はなんだか胸が苦しくなった。彼らの気持ちがわかるなんて言わないけれど、前世の事を思い出してしまった。父さんも母さんもいなくなってしまって。
そしてプティも‥‥。ちょっと迷惑そうな顔をされながら親戚にお世話になって、また別の親戚の所に行って‥‥。
明日出て行けって言われるかもしれない。高校に行けるかもわからない。ご飯抜きの意地悪をされても、それでもその日住むところがあるだけマシだって
自分に言い聞かせて‥‥。悲しくて悔しくて不安で‥‥。将来どうなるかなんて、もう真っ暗闇の渦みたいで‥‥。
「ソーマ、どうしたの?何でソーマまで泣いてるの?」
「うぅーっ」
兄様がびっくりして抱き寄せてくれたんだけど、涙が止まらなくなってしまった。
ラルフ君とロルフ君も驚いて、僕の顔を覗き込んだ。
「ソーマ君どうしたの? これで涙拭きなよ。ちょっと僕の涙と鼻水ついてるけど」
「‥っ! それは嫌!」
さっき僕がラルフ君とロルフ君に渡した使用済みのハンカチが、差し出された。
べしょっとなったハンカチが近づくのを見て、思わずのけぞってしまう。涙も止まった。
「は、鼻水はちょっと! やめて!押し付けないで!」
「ははっ!やっと笑ったね!」
ラルフ君とロルフ君ももう泣いてなかった。
僕は、マジック財布からハンカチを引っ張りだして。顔に押し当てた。
「ソーマ。」
母様が僕の頭を撫で、そっと抱きしめてくれた。
「ラルフ君とロルフ君につられちゃったのかしら。‥‥大丈夫よ。」
ふわっと母様の感触は柔らかくて、かすかに甘い香りがする。安心する香りだ。
「母様。うん。もう平気‥‥。」
僕はえへへと笑ってみせた。
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