自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第3章

第99話 まさか、またなの?

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ビアンカ嬢は情緒不安定になっているのか、ほぼ毎日のように屋敷に来ては、
アリサ姉様に愚痴っていっていた。

そんな様子を見ていた母様は、なんとか気分をかえた方がいいと思ったのか、お茶会に行ってみてはどうかと勧めた。

「最近のお茶会は雰囲気がいまいちだと言うけれど、気分転換くらいにはなるかもしれないわよ」

母様の知り合いの家の主催で、前回よりは年齢層が上での集まりみたいだ。なのに、僕にも出席しておいでという。
僕が行くなら兄様も行くって言ったんだけど、兄様が行くのは母様に反対された。

「婚約者の居ない嫡男が行くと注目されて、婚約者募集中と噂されるわよ」

断固行くと息巻いていた兄様の呼吸が一瞬止まった。確かに婚約者募集中って噂になっちゃうのは、ちょっと困るよね。
兄様は気になっているミラ嬢にお芝居とか、ランチとか色々お誘いをしているみたいなんだけど、
今のところ、商会でのお菓子の試食会くらいしか、実現していないみたいだ。
兄様もミラ嬢も学園入学の準備で忙しいっていうのもあるみたいだけどね。

ギュンター君も、お茶会に出席したから、募集中だって話になって、一気に婚約話が進展したらしい。
僕は大丈夫なのかというと、お婿の話が来ても受け付けないけど、目立たないようにしなさいよ、だって。
アリサ姉様にとっては初めてのお茶会になるから、心配みたいだ。
それなら、僕はアリサ姉様に何かあったときにすぐ動けるようにしておかないとね。

そうして翌週開催されたお茶会に参加した。
今回も、庭園での野外のお茶会だった。
建物近くには、弦楽器を演奏する人たちがいて、ぽろんぽろんと静かな音色が庭園に響いている。
アリサ姉様とビアンカ嬢は、プティ印の化粧水とヘアケア製品で、肌も髪もつやつやになっている。
新しく仕立てたドレスも着て、とても華やかだ。
最近落ち込んだ表情しか見ていなかったビアンカ嬢も、着飾って気持ちが向上したのか、笑顔を浮かべている。
なるほど、着飾るだけでも気分転換になるんだね。

僕は、角切りフルーツが入った冷たい果実水のグラスをもらった後、隠密の魔法を発動した。
こうすると、人に認識されにくくなるんだ。僕が誰かに絡まれたりするリスクも減るし、いざというときに動きやすいからね。

まあ、お茶会でいざというときなんて、ないと思うけど。

‥‥と思ったのがフラグだったのか、急に騒がしくなったと思ったら、冒険者の格好をしたギュンター君が突然現れた。

赤毛の女の子の手を引いて、ずんずんと庭園の中をつっきって、アリサ姉様とビアンカ嬢が居る方に進んで行く。
その後ろを、ラルフ君とロルフ君が続いている。二人も冒険者の装備だ。
僕は、駆け出しながら、マジック財布に手を突っ込んで、魔道具を引っ張りだした。腕輪よりちょっと大きくてタンバリンよりは小さい輪っかだ。
魔力を込めて、姉様達に向けて発動させる。シューっと音を立てて、よく見ないとわからない位の霧が姉様達二人の周りにできた。

「ビアンカ・シュナイダー伯爵令嬢!!」

赤毛の女の子の腰に腕をまわしたまま、ギュンター君が、アリサ姉様とビアンカ嬢の前に立った。

「貴様との婚約を破棄する!!」

ギュンター君の声が庭園に響き渡った。弦楽器の音がぴたりと止んだ。

「ギュ、ギュンター様‥‥?なぜですの?」

ビアンカ嬢の顔が真っ青だ。声が震えている。

「何故だと!?‥うっ!?」

一歩進み出ようとしたギュンター君が何かにぶつかった様子で、後退した。

「何だ? 何か壁が‥‥?」

ギュンター君が目を見開いてキョロキョロしている。結界を張ったからね。それ以上は近づけないよ。
ビアンカ嬢は、赤毛の女の子の方をちらりと見て、ギュンター君に言った。

「ギュンター様、やはりその女の子の事を‥‥。」
「黙れ! そうやって勝手に嫉妬して、俺たちの仲を疑い、あろうことか、破落戸を使ってゾフィーの装備を取りあげただろう!!高かったんだぞ!!」
「そ、そんな事はしておりません!」
「ギュンターさまぁ~、あたし、とっても怖くってぇ~」

ギュンター君が怒鳴って、ビアンカ嬢は真っ青な顔をしながら反論している。赤毛の女の子は、ギュンター君の腕にしがみついて胸を押し付けている。
いや、ちょっと待って。またなの? なにこの乙女ゲーム的な展開。
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