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第3章

第97話 プティちゃん双六

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それから、アリサ姉様のお友達候補は、他にも何人か家に招待をされたけど、ビアンカ嬢が一番アリサ姉様と気が合うみたいだった。
アリサ姉様がビアンカ嬢の家に行くこともあるんだけど、うちの屋敷に来る事の方が多い。
プティのヘアケア製品とかを一緒に試したり、新作のお菓子を試食したりするのが楽しいらしい。

姉様のお友達候補の人って、みんな婚約者が居るようだ。
姉様の年齢くらいでは、もう婚約者が居る人が多いってことかな。そりゃ、ラルフ君達がお茶会であきらめた様子なのも頷けるよ。
アリサ姉様自身は、領地では貴族同士の交流があまり持てなかったから、まずは、同性のお友達を作るところからしたいんだって。

ラルフ君とロルフ君も、ツヴァイトベック侯爵夫人のダニエラ様と一緒に遊びに来てくれた。
ダニエラ様と母様は、母様の兄で、ダニエラ様の夫でもあるラインハルト伯父様の事を話していた。

僕はラルフ君とロルフ君と一緒に、ボードゲームをする。
サイコロを振って出た目の数だけ駒を進める双六みたいなゲームだけど、駒の進む道が、猫の足跡の形になっていて、駒を進めるときに「プティちゃんお願い」といって、駒を置くと、ランダムに素早さや力が少しだけアップする魔法陣が発動する。
効果は30分くらい。
発動するときとしないときがあって、発動しないときは、しょぼい音が出る。でも、「プティちゃんお願い」と言わないときは絶対発動しないんだ。
双六に素早さや力は、必要なくても、何かアップすると嬉しいよね。

「プティーちゃーん!お願いします!」

ロルフ君が、叫んで、駒をポンと進めた。ぴかっと、中央の魔石が青色に光った。

「やった、素早さアップ!これで2回目!」
「いいなー、これ。冒険者にも人気でるんじゃない?」
「魔獣の前でゲームしている暇はないんじゃないかな。」
「ダンジョンのボス部屋の前とかは、安全地帯で敵が襲ってこないとかいうから、そこでやるとかさ。」
「ボス部屋の前で、このゲームやってる光景って凄いな」
「まあ、僕達がダンジョンに行けるのはまだまだ先だけどね。」
ラルフ君もプティちゃんプティちゃんと叫んで、駒を進めた。魔石は無反応。
「なんで!?キュポンとも言わないの?」
「『お願い』って言ってないじゃん」
「あー!」

ラルフ君とロルフ君がわーわーと騒いでいる時、窓辺に座っていたプティが毛繕いをしながらつぶやいた。

(神力がどんどん上がってるニャ)

効果があるらしい。もっと冒険者が持ち運びしやすいデザインにしてみようかな。

「そう言えば、冒険者活動は順調?『プティちゃんお願い』」

僕がポンと駒を置くと、中央の魔石が、黄色く光った。黄色は力アップだ。今のところ光る確率が100%なんだけど、プティ、加減してね。

「まあ、順調だよ。怪我もしていないしね。あ、新しくパーティメンバーが入ったんだよ」
「へー。」

聞けばラルフ君達と同い年の見習い冒険者の女の子なんだって。

「ゾフィーちゃんていうんだ。僕たちと同い年だけど、見習い期間は僕たちよりちょっと長いから、依頼のこととか詳しいんだ。結構可愛い子だよ」
「そうなんだね。」

ゾフィーちゃんは平民の女の子なんだそうだ。
ラルフ君達が依頼で配達をしているときに、ゾフィーちゃんが破落戸に絡まれているのを見つけて助けた縁で、パーティメンバーに加わったんだそうだ。

「平民の娘って貴族の令嬢と全然態度が違うんだよ。ツンケンしてないんだ。」
「僕達を頼りにしてくれて、守りたくなっちゃうよ」

ラルフ君とロルフ君がそろってにやけている。

「プティちゃん、恋愛運もアップしてくれないかな。『お願い』!」

シーン‥‥。魔石は反応しない。

「ラルフ、おまじないはちゃんと言わないと、『プティちゃんお願い』」

ピカ!魔石が青く光った。

「素早さか~。でもアップは嬉しい。」

ロルフ君がニコニコしながら、両手の間で、サイコロを高速で投げてみせてから、サイコロを僕に渡した。
僕はサイコロを振って、「プティちゃんお願い」と言ってから駒を進めた。魔石が赤く光った。ラルフ君達がどよめく。

「赤ってなに?もしかして恋愛運?」
「いや、火耐性」
「なんだー。でも冒険者活動しているときなら火耐性いいよね。」

他には緑に光ったら器用さアップだよと、教えると、おもしろがって「緑こい緑こい」て祈ってから、サイコロを振っていた。

このゲームは、エルスト商会で発売の準備中なんだけど、魔法陣をつけたから結構値段が高くなっちゃいそうなんだよね。
でも想定しているお値段をラルフ君達に言ってみたら、買いたいって言っていたから、貴族向けにそこそこ売れるかな。
ダンジョンに行く冒険者向けにっていうのは、ありかもしれないから叔父様に伝えておこう。
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