自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第3章

第92話 都会のギルドは‥‥

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馬車に戻ると、兄様はふぅーっと溜め息をついた。

「王都のギルドは荒れているね。色々なところから人が入ってくるせいかな。子供が絡まれていても、従業員が注意もしないなんて。」

エルストベルク領では、正規の冒険者でも新人とかが絡まれていたら、ギルド職員が助けに入るんだって。
というか、兄様は既に領内で冒険者登録をしてたらしい。
辺境では、魔獣対策で冒険者の力を借りる事も多いから、領主の息子は、早くから冒険者登録をして、冒険者ギルドの状況も把握しておくものなんだって。

「えー、じゃあ、僕も領で登録してきたかったよ。」
「僕も12歳になってから正規登録したんだよ。」

見習い冒険者登録は、エルストベルク領ではほとんどしないらしい。街の外の魔獣が危険で薬草採取に依頼も出すには危険だし。貧しくて、稼ぐ必要がある子供には、無料で職業学校に通わせて、学校で作ったものを領で買い上げたりしているから無理に冒険者として活動しなくてもすむようになってるんだって。

「それだと、将来冒険者を目指す人が少なくなっちゃわない?」
「命落とすよりいいと思うよ。というか、職業学校作れっていったのソーマだったよね。」
「あれ、そうだっけ?」

そう言えば、エルスト商会で僕が考えた商品を売ってもらうのに、製作する人手が足りないっていったから、作れる人を育てたらって言った気がする。
結局、王都の冒険者ギルドは職員の対応が信用できないし、領では、見習い登録ができないとなると、僕が冒険者登録できるのは先になりそうだね。

僕は、マジック財布から、コップと、お茶の入ったポットを取り出した。時間停止機能はないので温いけど、ミントと蜂蜜が入ったさっぱりとしたお茶だ。僕はコップにお茶を注いで、兄様に手渡した。
兄様はにっこりと微笑んで僕にお礼を言った後に、ちょっとだけ小声で言う。

「ありがとう、でもコレは人前で出したらダメだからね。特に冒険者ギルドとかで出したら大変だよ。」
「うん。わかってるよ」

人前では、出さないけれど、ポットのお茶がこぼれる心配なく運べるのは便利なので、馬車で兄様と飲もうと思って持って来たんだ。
兄様とお茶をしていたら、しばらくして、馬車の扉がノックされた。
ラルフ君達がギルドから出て来たらしい。
ラルフ君は、大柄な男の肘が当たったときに、口の端を少し切ってしまったようで、赤くなっていた。

「いやー、思ったより荒々しいところだね」

そう言いながらも、三人とも、見習い冒険者登録をすませてパーティ登録もしたんだって。
僕は?と訊かれたので、ごめんなさいと頭を下げた。

「あの感じだと、まだ僕に無理かなって思って。」
「そうだよね。僕らは来年登録できる年齢なのに、あの扱いだもの。」

ラルフ君達も、ギルド職員の対応には不満があったみたいなんだけど、将来冒険者で活動することも考えて、登録することにしたんだって。

「まあ、家からはしっかり抗議をさせてもらうよ。」

ギュンター君はむすっとしてへの字口にしていた口を開いて言った。
登録前で一般人のしかも貴族の子息に絡んで暴力を振るった冒険者達は、降格の上、罰金と、1ヶ月の活動禁止になったんだそうだ。

その後、ギルドで紹介された武器屋と防具屋に行くんだという、彼らについて、ちょっと見学をさせてもらってから別れた。
彼らはその後軽く、冒険者の初依頼を受けてみるらしくまたギルドに戻って行った。
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