自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第3章

第91話 危険なところからは撤退です

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「‥‥っく‥‥。見習いの年齢には達してます!」

ギュンター君が苦しそうにしながら、言った。ラルフ君とロルフ君は、大柄な男の仲間らしい人達に腕を掴まれている。

「そうだよ! それに僕たち並んでたんだから順番守ってください!」
「正規の冒険者様が優先に決まってるだろ!」

カウンターの中の受付嬢は、特に表情も変えずにその前に並んでいる人の受付を続けている様子だ。
他のギルドの職員も、止める様子はなさそう。
ぶんっと、大柄な男性が腕を振った。ギュンター君が投げ飛ばされ、ラルフ君の頭に肘が当たって、ラルフ君も床に転がされた。
ロルフ君も、仲間の男に突き飛ばされて床に尻餅をついた。

僕が慌てて駆け寄ろうとしたら兄様が僕の腕を掴んだ。
そして僕を背で庇うように、人が立つ。あ、いつもの護衛の人だ。今日は、冒険者っぽい格好をしている。
もう一人、見覚えのある護衛の人が、僕達の方を見て、うなずいて、前に進み出て行った。
兄様が何か指示しているのかな。

「王都の冒険者ギルドは一般人に暴力を振るうのかな」
「は?」

大柄な男性は、ラルフ君を蹴ろうとしていたのか、振り上げていた足を止めた。
ざわざわしていたギルド内が、一瞬静まりかえる。

「こ、こいつらは見習い冒険者って‥‥。」
「冒険者証は確認したのかな」

護衛の人、確か名前は‥リヒャルトさんだったかな。が言うと、大柄な男が表情を変えて、ギュンター君に言った。

「おい、冒険者証は?見習いじゃないのか」
「ぼ、僕達は登録はまだ‥‥。」

ギュンター君がそういうと、それまで座って書類仕事をしていた様子のギルド職員が立ち上がった。

「アントン、並びに銅級パーティ黒剣の響きのメンバー。一般人に暴力を振るうのはギルドの規則違反ですよ。」

ギルド職員がそう言った後、他の職員も出て来て、大柄な男のパーティと、ラルフ君達が、別室に連れて行かれた。
彼らの姿が見えなくなると、少しの間静まり帰っていたギルド内が、ざわざわとし始めた。
取り残されてどうしようと思っていると、僕の肩に兄様が手を置いた。

「ソーマ、ここを出よう。」
「え、でも、兄様。まだ、ラルフ君達が‥‥。」
「伝言しておくから」

兄様は、メモ用紙とペンを出して、さらさらとメモ書きをした。兄様が持っているペンは、インクがペンの中に入っている万年筆みたいなやつだ。
一旦ギルドを出ます。馬車内にいます。と書いた紙を、護衛のリヒャルトさんに渡して、ギルド職員に届けてもらう。

ギルド内を見回して、その場にいたギルド職員はカウンターの中の受付をしている人だけだった。兄様は最初自分でカウンターに行こうとしたけど、リヒャルトさんが、先ほどの事もあるから、届けますと言ってくれたんだ。

ラルフ君達やギュンター君達にも従者がついていたはずなんだけど、ギルドの奥の部屋についていったり、屋敷に報告に行ったりしているようだ。
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