自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

第3章

第90話 テンプレですか？

冒険者ギルドの建物は、王都の市民街の中心くらいの場所にあった。
重厚な三階建ての建物は、また既視感がある。二階に資料室。地下に訓練場があるんじゃないかな。

扉の感じとかも僕が作ったゲームの世界の冒険者ギルドの様子に似ている。
ラルフ君達とは、冒険者ギルドの前で待ち合わせをしていた。
僕と兄様が馬車から降り立つと、ギュンター君がふんっ、とちょっと鼻で笑った。

「あれ、保護者付きなんだ。」

兄様を包む空気が、すっと冷たくなった。ギロリとギュンター君を見る。

「彼は？」
「あ、ギュンター・トリット君だよ。ギュンター君。兄のケニーです。」

ちょっと雰囲気が怪しくなっったので、僕は慌てて、紹介した。
先に着いていて、冒険者ギルドの中の様子を伺っていたラルフ君達が、駆けて来た。

「やあ！　そろったね。あ、ケニー様も一緒なんですね。」

兄様とラルフ君達は、会った事があるらしいので紹介は不要だ。軽く挨拶をした後、冒険者ギルドの中に入ってみる事にした。

扉を開けると、ギィィーという音が響く。ギルドの中は、ガヤガヤと喧噪に包まれていた。その中で何人かがちらりとこちらを振り返った。
むんっと、ちょっと蒸し暑くて、なんか色々な匂いがする。革のような匂いや獣臭い匂い、それと汗臭い。
匂いに顔をしかめて、立ち止まった僕を置いて、ラルフ君達とギュンター君が中に進んで入って行った。
兄様は僕の隣に立っている。

「ソーマ、大丈夫？」

兄様が僕の背中に手を当ててくれる。

「うん、大丈夫だよ。空気が違うからびっくりしちゃった。」

先に進んだラルフ君達を探そうときょろきょろして、辺りを見回す。ふと、プティのマークを発見した。

「あ、プティちゃんグッズの人がいる。」

プティのマークのは行った腕輪をしている人がいた。アレは防御力を少しだけアップする腕輪だ。
僕は、駆け出していって、腕輪をした人に近づいて話しかけた。

「こんにちは。僕、ソーマといいます。その腕輪はプティちゃんグッズですよね」

腕輪をした人は、背の高い女性の冒険者だった。

「あら、こんにちは。この腕輪を知っているの？先週やっと手に入ったのよ」

人気らしくて入荷待ちだったそうだ。プティは人気があるね。

「そうなんですね。効果はありましたか？」
「ええ、普段だったら怪我しそうな場面で、怪我せずにすんだわ。なかなかよいわよ」
「わー！そうなんですね！」

効果がでてるのも嬉しいけど、またプティちゃんお願いってしてもらえれば、プティの神力が上がりそうなのも嬉しい。
僕が満足してうんうんと頷いていたら、少し離れたところで怒鳴り声が聞こえた。

「なんだぁ？　ここはお前達見たいなガキが来るところじゃないって言ってんだろ！」
振り向くと、カウンターの近くで、大柄な男がギュンター君の胸ぐらを掴んでいた。