自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第3章

第88話 可愛いレターセット

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メイドに、手紙を出したいから封蝋用のシーリングワックスと、シーリングスタンプを使いたいと言ったんだけど、なぜか、母様と兄様がいる居間に呼ばれた。

「ソーマ、お手紙を書いたんだって?」
「うん! ラルフ君達から手紙がきたからお返事を書いたんだよ」

兄様は、僕が差し出した封筒を受け取って、じっと見つめた後に、その封筒を母様に手渡した。

「お手紙を書いたのは初めてだよね。」
「うん!宛名はラルフ君達の家名が入っていたら大丈夫?」

僕宛の手紙も、住所とかでなくて、「エルストベルク辺境伯家 ソーマ・エルストベルク様」って書いてあった。王都なら、家名だけで宛先が分かるからそのまま届けてくれるんじゃないかな。

「ちょっと見せて。‥‥うん、宛先は大丈夫だけど‥‥。」

兄様は僕から封筒を受け取って、少し眺めてから、母様の方を見た。母様に封筒を手渡す。
母様は、封筒を受け取って見つめた後、手で撫でたり光にかざしてみたりした。

「ソーマ、宛先は大丈夫だけれど、この封筒はどうしたのかしら?」
「作ったんだよ。レターセット持ってなかったから」
「そうなのね。‥‥マーカスを呼びましょう」

母様はそう言うと、メイドを呼んで、叔父様に使いを出した。

どうやら、封蝋を持って来てとメイドに言ったときに、僕が持っていた封筒が見た事がないピンク色の封筒だったので、母様と兄様にすぐに連絡をしたようだ。
手紙を出す前に確認しようということになったみたい。

「この色とても素敵ね。手触りもいいし‥‥。この猫ちゃんのマークはどうやって入っているのかしら‥‥。」
「透かしだよ。そこだけ薄く作ってるんだよ」

えへっと僕は胸を張った。でも、母様と兄様はちょっと残念そうな様子だ。

「ソーマ、叔父様に判断してもらうけど、この封筒は素晴らしすぎて、送ったらすごく話題になってしまうかもしれないよ。
せっかく書いたお手紙だけど、別の封筒に入れ替えてもらうかも‥‥。あ、もしかして中の便箋も、かな?」
「うん! 便箋もお揃いだよ」

可愛いでしょ、というと、兄様は微笑んで頷いた。

「ソーマ、これはやっぱり目立ちすぎると思うわ。」

手触りがよかったり透かしだけならまだしも、うっすらピンク色の封筒は、他の手紙と一緒においていてもすごく目立ってしまうだろうと母様が言う。
この手紙の用紙はどうしたんだと、ツヴァイトベック家から聞かれる可能性が高いから、答えられる準備をしておく必要があるんだって。

確かに、プティ用に可愛くしたくてピンクにしたけど、ラルフ君達宛もピンクにしなくてもよかったかもね。
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