自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第3章

第86話 お手紙書こう

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翌日には、ラルフ君とロルフ君の家、ツヴァイトベック侯爵家から手紙が来た。
来週冒険者ギルドに行く予定の日にちのお知らせと、伯父様から今度遊びにおいでという、お誘いだった。
早速お返事を書こう。
僕は机の引き出しを開けて、中を覗き込んだ。

「うーん‥‥。」

引き出しの中には、羽根ペンとインク壷。太い鉛筆みたいなやつと、お絵描き用の紙と、お勉強用のノート。
窓辺で寝そべっていたプティが、起き上がって来て、ピョンと、机の上に乗った。

(何してるのニャ?)
「お手紙書こうとしたけどレターセット持ってなかった。」

考えてみたら、ちゃんとした手紙を書いた事ないかも。お絵描きにメッセージを添えて叔父様に渡したことは何度かあるけれど。

(お手紙、プティも欲しいにゃ)
「え、プティも欲しいの? じゃあ、書くよ!可愛いレターセットがいいね。」

ラルフ君達宛だったら可愛くなくてもいいというわけじゃないけど、プティへのお手紙は可愛いのにしたいな。

ラルフ君とロルフ君から僕宛に届いた手紙は、少しだけベージュがかった無地でシンプルな紙でできていた。少しざらざらした手触りだ。
この世界は紙の文化はあるけれど、あまり質がよい紙は一般的ではないみたい。
僕は、お絵描き用の紙を取り出した。手紙用の紙より、分厚くてごわごわしている。

「この紙から、レターセット用に作り替えられないかな。うーん、浄化魔法で白くは出来そうだけど‥‥。」
(紙を作りかえるのにゃ?)
「うん、もうちょっと手触りよくしたいんだよね。。」
(紙の手触りをよくする魔法にゃ?)
「色も変えたいし、ペンで書いてもインクがにじまないようにしたいし。」

僕がどんな魔法なら紙の質を変えることができるか考えていたら、プティが、僕の手に肉球をポンと押し付けた。

(やってみればイメージが湧いて、魔法を作れるニャ)

何か、魔力のような物がどーんと流れ込んでくる感覚があった。

(ストレージ錬金ボックスにゃ)
「錬金ボックス?」

プティに言われて、ストレージルームに意識を向けると、なにか新しい領域ができているような感覚があった。

「材料を入れて、加工結果をイメージするのか‥‥。」

プティが錬金ボックスといっただけあって、その領域に必要な材料を入れて、結果をイメージしながら魔力を流し込んだら、材料から物を作り出す事ができるようだ。

「プティありがとう。」
(プティに手紙を書いて欲しいのにゃ。可愛いセットで手紙が欲しいのにゃ)
「よーし!頑張っちゃうぞ!」

僕は、プティを撫でてから、部屋の中を見渡した。花瓶に花が生けてある。ちょっともらってもいいかな。
材料として、花瓶の花を数本取って、ストレージ錬金ボックスに入れた、それと、お絵描き用の紙も何枚か入れてみよう。あと糊を追加。
赤い花びらの色が少し入って、薄くて滑らかな紙をイメージ。ちょっと透かしにプティのシルエットを入れよう。
封筒と便箋をしっかりとイメージして、チン! 出来た!

出来上がったものがポンと机の上に出て来た。
見てみるとみると、薄いピンク色の手触りが滑らかな封筒と便箋が出来上がっていた。

「出来たー!!出来たよ!プティ!」
「にゃーん」
(やったにゃん。よかったにゃん。)

僕は嬉しくなってプティを抱え上げて、くるくると回った。
早速、お手紙を書こう。
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