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第2章
第50話 ご退場技術
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ぼそっと小さな声でつぶやいたのが聞こえた。僕の背後で、ぶわっと殺気がふくれあがった。
振り向くと、兄様と、エミリア嬢が、ヨナスを睨んでいた。
兄様が一歩前に出ようとしたとき、お店の奥から、叔父様の声がした。
「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので、店内ではお静かにお願いいたします。」
叔父様は、挨拶をした後に、穏やかな口調で言った。
「俺は騒いでいるわけではない、チョコとやらを買いにきただけだ!」
ヨナスは、叔父様にも食って掛かった。叔父様は微笑んでいる。でも目が笑ってないかも。
「何度もご説明をさせていただいておりますが、チョコレートは非常に数が少ないために非売品となっております。別のお日にちに商談をご予約いただければ、ご用意さし上げる事が可能です」
「物があるなら売ればいいじゃないか! 商談が必要なら今すぐ商談の席に案内しろ!」
「本日は商談のご予約が埋まっております」
また同じやり取りを繰り返すヨナスと、対応している叔父様。そこに、ピンクブロンドの女性が、割りこんだ。
「ねえ、チョコ食べられないの?」
ピンクブロンドの女性の、グレープフルーツくらい有る胸が、ヨナスの腕にのしかかっている。
ヨナスの口元が緩む。
「ニコラ、待たせてごめんね。今出させるよ。おい! 俺を誰だと思っているんだ! ヨナス・モーガンだぞ!」
ニコラと呼ばれた女性に、甘い口調で言った後、叔父様に向って怒鳴るように言った。
「ヨナス・モーガン侯爵令息様ですね。お母上のモーガン侯爵夫人にはご贔屓にしていただいております」
叔父様は表情を変えずに、答えた。侯爵令息なんだね。
ヨナスは、ふんっと鼻息粗く言った。
「そうだぞ!僕はモーガン侯爵家嫡男、ヨナス・モーガンだ! わかったか!
今すぐ、チョコをよこさないと、今後モーガン家とこの商会との取引はないと思え!」
「‥‥然様でございますか‥‥。では仕方ございません。」
「わかったら早くチョコをよこせ!」
ヨナスがニヤリと笑った。なんだか、「お菓子くれないといたずらするぞ!」って、子供がかぶったカボチャのお化けの笑い顔を連想した。あれもオレンジだったね。
叔父様は、とても残念そうな表情をしながら、言う。
「大変残念でございますが、チョコレートはどうしてもご提供できませんので、モーガン侯爵家と、当エルスト商会のお取り引きは、今後取り止めということになりますね。」
「はあ!?」
「本当に残念でございますが、仕方ございません。ご希望のお品をご用意できず申し訳ございませんでした。」
叔父様が手深くお辞儀をすると、そのタイミングを見計らったようにすーっと、従業員の人達が、ヨナス達二人に近寄り、すーっと外に促して行った。
ヨナス達は、「え?」って顔をしたまま、一言も発せず外に連れ出されて行った。
何だろう、追い出す技術?魔法?
ヨナス達が出て行って、ドアが閉まると、店内に静寂が戻った。
ミラ嬢は、まだ顔を青ざめさせていて、エミリア嬢が、ミラ嬢の背中に手を当てて、支えている。
振り向くと、兄様と、エミリア嬢が、ヨナスを睨んでいた。
兄様が一歩前に出ようとしたとき、お店の奥から、叔父様の声がした。
「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので、店内ではお静かにお願いいたします。」
叔父様は、挨拶をした後に、穏やかな口調で言った。
「俺は騒いでいるわけではない、チョコとやらを買いにきただけだ!」
ヨナスは、叔父様にも食って掛かった。叔父様は微笑んでいる。でも目が笑ってないかも。
「何度もご説明をさせていただいておりますが、チョコレートは非常に数が少ないために非売品となっております。別のお日にちに商談をご予約いただければ、ご用意さし上げる事が可能です」
「物があるなら売ればいいじゃないか! 商談が必要なら今すぐ商談の席に案内しろ!」
「本日は商談のご予約が埋まっております」
また同じやり取りを繰り返すヨナスと、対応している叔父様。そこに、ピンクブロンドの女性が、割りこんだ。
「ねえ、チョコ食べられないの?」
ピンクブロンドの女性の、グレープフルーツくらい有る胸が、ヨナスの腕にのしかかっている。
ヨナスの口元が緩む。
「ニコラ、待たせてごめんね。今出させるよ。おい! 俺を誰だと思っているんだ! ヨナス・モーガンだぞ!」
ニコラと呼ばれた女性に、甘い口調で言った後、叔父様に向って怒鳴るように言った。
「ヨナス・モーガン侯爵令息様ですね。お母上のモーガン侯爵夫人にはご贔屓にしていただいております」
叔父様は表情を変えずに、答えた。侯爵令息なんだね。
ヨナスは、ふんっと鼻息粗く言った。
「そうだぞ!僕はモーガン侯爵家嫡男、ヨナス・モーガンだ! わかったか!
今すぐ、チョコをよこさないと、今後モーガン家とこの商会との取引はないと思え!」
「‥‥然様でございますか‥‥。では仕方ございません。」
「わかったら早くチョコをよこせ!」
ヨナスがニヤリと笑った。なんだか、「お菓子くれないといたずらするぞ!」って、子供がかぶったカボチャのお化けの笑い顔を連想した。あれもオレンジだったね。
叔父様は、とても残念そうな表情をしながら、言う。
「大変残念でございますが、チョコレートはどうしてもご提供できませんので、モーガン侯爵家と、当エルスト商会のお取り引きは、今後取り止めということになりますね。」
「はあ!?」
「本当に残念でございますが、仕方ございません。ご希望のお品をご用意できず申し訳ございませんでした。」
叔父様が手深くお辞儀をすると、そのタイミングを見計らったようにすーっと、従業員の人達が、ヨナス達二人に近寄り、すーっと外に促して行った。
ヨナス達は、「え?」って顔をしたまま、一言も発せず外に連れ出されて行った。
何だろう、追い出す技術?魔法?
ヨナス達が出て行って、ドアが閉まると、店内に静寂が戻った。
ミラ嬢は、まだ顔を青ざめさせていて、エミリア嬢が、ミラ嬢の背中に手を当てて、支えている。
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