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第2章
第40話 お目当てはチョコレート
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商会の階段を下りて、一階のフロアまで戻ってくると、兄様が、隣で小さく声をあげた。
「ミラ嬢だ」
見ると、一階のフロアに金髪のおさげのミラ嬢がいた。隣に、銀髪ドリルの女の人もいる。
映像でみたことある、エミリア・アドラー公爵令嬢だ。
ミラ嬢も、僕たちに気がついたようで、目が合うと、にこりと微笑みかけてくれた。
近くに行って挨拶をする。
エミリア嬢とこの国の第二王子が関わった事件が解決してから、一ヶ月くらいなんだけど、エミリア嬢は、もう、新しい婚約の話が進んでいるんだって。
相手の方は、隣国のノルヴァン王国の方で、第三王子らしい。
この国に留学してきて卒業後に結婚をする予定なんだって。
今日は、ミラ嬢の案内で、エルスト商会で、相手の王子に贈るものを選びにきたということなんだけど本当は、商談の席で出される噂のチョコレートがお目当てなんだって、こっそりと教えてくれた。
プティが、ちょっともぞもぞとして前足をちょいちょいと動かした。
目線の先は、エミリア嬢の、ドリルヘアーの髪の先が、少し揺れているところだった。触れてはいないけど、揺れていると気になってしまうみたいだ。
エミリア嬢の銀髪の縦ロールは、「そういうお菓子がありそうだな」と思うくらいきちっとロールになっている。
(揺れると気になるにゃ。気になるんにゃ。)
プティは、エミリア嬢の毛先をつつくのは我慢しているらしくて、前足がぴくぴく動いて空を切っている。
「あら‥、うふふ。」
エミリア嬢が僕とプティの様子に気づいて、微笑む。
すごいドリルですねとか言うと失礼だよね‥‥。
「その‥‥、素晴らしい巻き毛ですね‥。」
ちょっと言葉に気をつけながら言ってみる。
「ありがとう。」
エミリア嬢が優雅に笑顔を見せた。ドリルの巻き毛と同じ色の、長い睫毛がばさりと音を立てるようだ。
「ここまで、見事にセットするにはかなりお時間がかかるのではないでしょうか」
侍女の人が、複数人でカーラーを巻いているイメージだ。
兄様も、僕と同じ想像をしたのか、エミリア嬢に質問をしている。
「自然にこうなるの。だから想像されるよりは時間はかかっていないと思うわ。」
「え、まさかの天然!」
僕は思わず大きめの声を出してしまって、「失礼しました」と言って慌てて俯いた。クスクスとエミリア嬢が笑っている。
「よく言われるわ。どうにかならないかと思うほど、常に巻き毛なのよ」
エミリア嬢がそういうと、ミラ嬢が、「いいえ!」と声をあげ首を横に振った。
「エミリアお姉様の御髪は素晴らしいです。私なんて、クセっ毛で、本当にまとまらなくって!」
ミラ嬢は、放っておくと膨らんでしまう髪質なんだそうで、まとまりにくくて、三つ編みにしているらしい。
兄様は、ミラ嬢の髪を見つめて、ちょっともじもじしながら言った。
「ミ、ミラ嬢の髪も素敵だと思います。ふわふわ柔らかそうで‥‥。」
ぽっ、と兄さまの頬が赤く染まる。
「まあ、ケニー様ありがとう。でももっとまとまりが良くなって欲しいって思ってしまうのよ」
ミラ嬢が、兄様ににっこりと微笑んで礼を言った。
兄様は、更に顔を赤くした。それから、はっとして一瞬僕の方に目線を動かした。
「ミラ嬢だ」
見ると、一階のフロアに金髪のおさげのミラ嬢がいた。隣に、銀髪ドリルの女の人もいる。
映像でみたことある、エミリア・アドラー公爵令嬢だ。
ミラ嬢も、僕たちに気がついたようで、目が合うと、にこりと微笑みかけてくれた。
近くに行って挨拶をする。
エミリア嬢とこの国の第二王子が関わった事件が解決してから、一ヶ月くらいなんだけど、エミリア嬢は、もう、新しい婚約の話が進んでいるんだって。
相手の方は、隣国のノルヴァン王国の方で、第三王子らしい。
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エミリア嬢の銀髪の縦ロールは、「そういうお菓子がありそうだな」と思うくらいきちっとロールになっている。
(揺れると気になるにゃ。気になるんにゃ。)
プティは、エミリア嬢の毛先をつつくのは我慢しているらしくて、前足がぴくぴく動いて空を切っている。
「あら‥、うふふ。」
エミリア嬢が僕とプティの様子に気づいて、微笑む。
すごいドリルですねとか言うと失礼だよね‥‥。
「その‥‥、素晴らしい巻き毛ですね‥。」
ちょっと言葉に気をつけながら言ってみる。
「ありがとう。」
エミリア嬢が優雅に笑顔を見せた。ドリルの巻き毛と同じ色の、長い睫毛がばさりと音を立てるようだ。
「ここまで、見事にセットするにはかなりお時間がかかるのではないでしょうか」
侍女の人が、複数人でカーラーを巻いているイメージだ。
兄様も、僕と同じ想像をしたのか、エミリア嬢に質問をしている。
「自然にこうなるの。だから想像されるよりは時間はかかっていないと思うわ。」
「え、まさかの天然!」
僕は思わず大きめの声を出してしまって、「失礼しました」と言って慌てて俯いた。クスクスとエミリア嬢が笑っている。
「よく言われるわ。どうにかならないかと思うほど、常に巻き毛なのよ」
エミリア嬢がそういうと、ミラ嬢が、「いいえ!」と声をあげ首を横に振った。
「エミリアお姉様の御髪は素晴らしいです。私なんて、クセっ毛で、本当にまとまらなくって!」
ミラ嬢は、放っておくと膨らんでしまう髪質なんだそうで、まとまりにくくて、三つ編みにしているらしい。
兄様は、ミラ嬢の髪を見つめて、ちょっともじもじしながら言った。
「ミ、ミラ嬢の髪も素敵だと思います。ふわふわ柔らかそうで‥‥。」
ぽっ、と兄さまの頬が赤く染まる。
「まあ、ケニー様ありがとう。でももっとまとまりが良くなって欲しいって思ってしまうのよ」
ミラ嬢が、兄様ににっこりと微笑んで礼を言った。
兄様は、更に顔を赤くした。それから、はっとして一瞬僕の方に目線を動かした。
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