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第23話 聖水は常備品
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とにかく今は兄様だ、と思って、僕は兄様の腕を引っ張った。
兄様は、名残惜しそうにお店の出入り口をみていたけど、特に反対することなく、僕と一緒に帰ってくれた。
タウンハウスについても、兄様はなんとなくぼーっとした様子だった。
兄様には居間にいてもらって、僕は父様を呼びにいった。
「魅了?」
「そ、そうじゃないかなって。兄様が急にぼーっとし始めたんだ」
兄様が、魅了にかかっているかもしれないと、父様に伝えたら、父様はものすごく険しい顔をして、立ち上がった。
プティの加護のこと、まだ自分でもよくわかっていないので、それは言わないで、様子が変だって言ってみた。
自然に解除されるっていっていたけど、様子を見てもらった方がよいと思って父様を呼んだ。
「父様、どうされましたか?」
父様と一緒に居間に着くと、兄様は不思議そうな顔をした。普通の反応だ。もう解除されたのかな。
「ソーマがケニーの様子が変だというので、来てみたんだよ」
「僕が? ソーマ、僕何か変だったかな」
兄様がきょとんとして僕を見る。
「兄様、さっきの馬車から出てきた女の人を見たとき‥‥」
「ああっ!さっきの女神様だね!とても美しかったね!」
さっきすれちがった女の人の話をしたら、兄様は途端にうっとりとした顔をした。
まだ解除されていないってことかな。
「ケニー、その女の人とは?」
「アクセサリー店の前で、とても綺麗な人とすれ違ったんだ。」
「そんなに美人だったのかい。どんな女性だった?」
「髪は、金髪?銀髪かな。長かったかな、あれ、まとめてたかもしれない。瞳の色は見えなかったな。
ほっそりとしていて‥‥、あれ、少しふくよかだったかもしれない‥‥。とにかく綺麗だったんだ。」
「一目惚れしたにしては‥‥、覚えていないのかい」
「‥‥、でもすごく綺麗だったよ。優しくて、慈悲深くて‥‥」
「すれ違っただけなんだろう。優しいとわかるのかい?」
「優しいに決まっているさ。あんなに優しい人は他にいないよ」
「‥‥。」
プティ、「ごくわずかな魅了」って言ってなかった?やばくない?
父様は、表情を変えないまま、執事のセバシに、指示を出した。
セバシが、水の入ったピッチャーとグラスを、トレーに載せて、戻ってきた。
グラスに水を注いで、兄様の前と、僕の前に置いた。
父様が言う。
「飲みなさい。ソーマもね。」
帰ってきたばかりで、ちょうど喉も乾いていたので、グラスを手に取って、一口水を飲んだ。
ーーーー聖水にゃ。特に状態異常はないから、影響なしにゃ。
プティの声で、これはただの水ではなく、聖水なんだってわかった。聖水って常備してるの?
兄様は、名残惜しそうにお店の出入り口をみていたけど、特に反対することなく、僕と一緒に帰ってくれた。
タウンハウスについても、兄様はなんとなくぼーっとした様子だった。
兄様には居間にいてもらって、僕は父様を呼びにいった。
「魅了?」
「そ、そうじゃないかなって。兄様が急にぼーっとし始めたんだ」
兄様が、魅了にかかっているかもしれないと、父様に伝えたら、父様はものすごく険しい顔をして、立ち上がった。
プティの加護のこと、まだ自分でもよくわかっていないので、それは言わないで、様子が変だって言ってみた。
自然に解除されるっていっていたけど、様子を見てもらった方がよいと思って父様を呼んだ。
「父様、どうされましたか?」
父様と一緒に居間に着くと、兄様は不思議そうな顔をした。普通の反応だ。もう解除されたのかな。
「ソーマがケニーの様子が変だというので、来てみたんだよ」
「僕が? ソーマ、僕何か変だったかな」
兄様がきょとんとして僕を見る。
「兄様、さっきの馬車から出てきた女の人を見たとき‥‥」
「ああっ!さっきの女神様だね!とても美しかったね!」
さっきすれちがった女の人の話をしたら、兄様は途端にうっとりとした顔をした。
まだ解除されていないってことかな。
「ケニー、その女の人とは?」
「アクセサリー店の前で、とても綺麗な人とすれ違ったんだ。」
「そんなに美人だったのかい。どんな女性だった?」
「髪は、金髪?銀髪かな。長かったかな、あれ、まとめてたかもしれない。瞳の色は見えなかったな。
ほっそりとしていて‥‥、あれ、少しふくよかだったかもしれない‥‥。とにかく綺麗だったんだ。」
「一目惚れしたにしては‥‥、覚えていないのかい」
「‥‥、でもすごく綺麗だったよ。優しくて、慈悲深くて‥‥」
「すれ違っただけなんだろう。優しいとわかるのかい?」
「優しいに決まっているさ。あんなに優しい人は他にいないよ」
「‥‥。」
プティ、「ごくわずかな魅了」って言ってなかった?やばくない?
父様は、表情を変えないまま、執事のセバシに、指示を出した。
セバシが、水の入ったピッチャーとグラスを、トレーに載せて、戻ってきた。
グラスに水を注いで、兄様の前と、僕の前に置いた。
父様が言う。
「飲みなさい。ソーマもね。」
帰ってきたばかりで、ちょうど喉も乾いていたので、グラスを手に取って、一口水を飲んだ。
ーーーー聖水にゃ。特に状態異常はないから、影響なしにゃ。
プティの声で、これはただの水ではなく、聖水なんだってわかった。聖水って常備してるの?
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