自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第12話 依頼事項

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学園長は平謝りしていたけど、父様と兄様はジト目だった。
叔父様は僕が怖がっていないかを気にしていて、頭をなでていてくれる。

「‥‥、エミリア・アドラー公爵令嬢の件は、冤罪の可能性がありますが、フィル・アドラー公爵子息が我が息子、ソーマを誘拐した件は、現行犯からねぇ」

「ううっ」

父様がじりじりと、威圧の圧を強めている。
森でフォレストベアに遭遇したときを思い出す。
あのときは、フォレストベアが、前足を振り上げて二本足で立った状態だったのに父様の威圧を受けて、二本足のまま一瞬後ろに下がったんだよ。まあ、バランスを崩してすぐ四つ足になったけど。

「アドラー家にも昨日のうちに、抗議文を送らせていただいた。昨晩のうちに、ノア・アドラー公爵が子息を伴って謝罪にきたよ」

叔父様は昨日のうちに、父様に連絡をしていて、父様は、即、抗議文を送ったんだって。仕事早いね。
当主のノア・アドラー公爵は、すぐに銀髪男フィルを連れて謝罪にきたらしいけど、僕が怖がるかもしれないから、会わせなかったんだって。

眠っちゃってたしね。

あの銀髪男が謝りにくるのか。意外。

「‥‥、姉の冤罪を晴らすために、犯罪を犯すとは、ちょっと僕には理解できないのですが‥‥」

兄様が、機嫌悪そうな声で言った。学園長は困ったように眉毛を下げた。

「面目ない。我が甥には、あの後きつく言ってきかせた」
「まあ、学園長は、親ではないですから‥‥いや、あの学園の責任者でしたね‥‥」

学園長なら確かに、学園で起きたことと、生徒の教育に責任がないわけではないですねー、と兄様がけんか腰で言ってる。
来年、学園に入学予定なのに、大丈夫かな。

そもそもの、調査の依頼があった公爵令嬢の件は、この国の第二王子であるウーノ殿下と、銀髪男の姉のエミリア・アドラー公爵令嬢が婚約していたんだけど
1年くらい前に、学園に編入してきたカタリーナ・ヴェーゼル男爵令嬢と、ウーノ殿下が親しくなって、エミリア嬢が嫉妬して、カタリーナ嬢に嫌がらせをした疑いがあるってことらしい。

婚約者のいる男性に近寄るなって注意したり、教科書を破ったり、ダンスレッスン用のドレスに赤ワインをかけたり、あげくに階段から突き落としたんだって。

一昨日開催された学園の年度末のパーティで、ウーノ殿下は、婚約者であるエミリア嬢ではなく、カタリーナ嬢をエスコートしてきて、
パーティが始まってすぐに、会場のど真ん中で、エミリア嬢に婚約破棄を宣言して、カタリーナ嬢を害した罪でエミリア嬢を断罪したんだって。

ウーノ殿下は、カタリーナ嬢との婚約を宣言して、未来の王子妃を害したとか、何より、カタリーナ嬢は聖女候補だから、エミリア嬢の罪は重いと主張してるそうだ。


ちょっと待って! 何、その乙女ゲーム要素!


僕の作ったゲームの世界化と思ったけど、乙女ゲームを作った記憶はないよ。

やっぱり、似てるけど違う世界なのかな。でもプティ神はいるし、どうなってるんだろう。

エミリア嬢はその場で、拘束されて、すぐさま国外追放されそうになったけど、騒ぎを聞いて駆けつけた学園長が止めて、
ひとまず正式な法的手続きを取って裁判をするように、その場は説得したらしい。

それで、エミリア嬢の無実を証明するために、学園内の聞き込み調査をしたり、記録の魔道具に何か映ってないか解析することにしたんだって。

記録の魔道具は、もともと警備用につくったやつで、何か事件が発生したときに、詳細を確認する為に、1時間分だけさかのぼって映像を再生できる道具なんだ。

1時間だよ。そういう仕様で説明をして、説明書にも書いて売っているはずなんだよ。

だけど、一応記録は溜め込まれているんで、何日も前の過去の記録でも、開発業者なら再生できるだろう、と。
魔道具は学園の複数箇所に設置されていて
記録の魔石は沢山あるから、さらに高速で再生できないかって、叔父様に依頼したんだって。

んー?

「‥‥階段から突き落とされたっていう事件があったのなら、その場で現場の魔道具を調べることができたのではないんですか。なんでそうしなかったんですか?」

僕は黙って話を聞いていたんだけど、我慢できなくなって発言しちゃったよ。

だって、その場で、ちゃんと調べていたら、僕が銀髪男に攫われるなんてこともなかったはずだよ!
パーティの件もなかったかもしれないよ!

プンスカって、口を尖らせて、抗議をした僕に、学園長はしょんぼりとして頭を下げた。しゅっとしたイケオジだけど、しょんぼりすると威厳がなくなるね。

「階段の件は、当時、生徒会で処理されて、記録の魔道具も確認はされなかったそうだ。報告も届かなくてね、私が階段の件を知ったのは、そのパーティの場でなのだよ」

「学園の管理って大丈夫なんですか?」

僕がそういうと、兄様が強くうなずいた。通いたくなくなっちゃったなーとか言っている。


まあ、そうだよね。何かあっても把握できてなかったなんて。
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