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第32章 瑛太11
第290話 凍った葡萄
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コホンと、柄舟さんが咳払いをした。
「国境付近で保護した中でも、柊はスマホ持ってたじゃないか。石倉ちゃんは持ってなかったとしても、一人位は持ってるかもしれないじゃないか。」
「だからって、どうして行こうと思うんですか?」
暫くの間黙って話を聞いていた尾市さんが柄舟さんと江角さんの顔を見つめた。不機嫌そうに言う。
「この村へと出発した日に、やつらの心配やら世話やらは止めたんだと思ってました。」
確かにそうだ。江角さんと柄舟さんは、頼りにされていたみたいだったのを振り切ってこっちに来たんだったよな。
柄舟さんが頷いた。
「他の召還者を見つけて,救い出す活動をすることは止めたよ。。
それにビーチの言う通り、自分で選んだ人生を生きたいって置いて来ちゃった時点で、もうかれらの心配だとか世話焼きとかは止めたね。
まあ、でも同郷の奴らだろ‥‥。
家族と連絡が取れるって凄く重要なことじゃないか。この世界に連れて来られた時点でもう不可能かと思ってたのにさ。
だから、もしかしてスマホの充電さえ出来れば家族と連絡が取れるかもしれないのに、知らん振りしていて良いのかって思っちゃってさ。」
「‥‥お人好しなんだよ。もう。」
緒方さんがブツブツと言った。それから、大きく溜め息をついてから、テーブルに両手をついて、ぐっと江角さんと柄舟さんの顔を覗き込んだ。
「なあ、止めた方が良いよ。やっぱり無理があると思うぜ。気持ちはわからなくもないけどさ。
全員がスマホを持っていないかもって、椎名が言ったのを聞いて気がついたよ。
彼らは彼らなりに落ち着いて生活をしているかもしれないのにさ。
そこに、家族と連絡が取れるやつと取れないやつが出て来ちゃうってことだぜ。
少なくとも石倉ちゃんはスマホを持ってなかったよな。
仲良く助け合って生活してたところが、ぎくしゃくするかもしれないじゃないか。
それとな。もし一度連絡がとれたとして、それで満足すると思うか? 彼らも、彼らの家族もさ。充電切れました。それっきりですって。」
緒方さんが俺の方をチラリと見た。
「瑛太のソーラーバッテリー寄越せとか言い出すかもしれないぞ。」
緒方さんの言葉に俺はギョッとした。
「寄越せって‥‥、まさか‥‥。」
「そうじゃなきゃ定期的に充電できるようにしろって言ってくるんじゃないか?
だって、諦めると思うか?充電すれば家族と連絡がとれるなんて知ったらさ。」
「‥‥。」
緒方さんの言葉を聞いて、俺はブルっと身震いした。
一瞬、圭が遺してくれていたソーラーモバイルバッテリーに、群がってくる人々を想像してしまった。
まさか‥‥、とは思いつつ、全くあり得ないとも言えない。
「エイター!」
動揺していた俺に、ケイン君が話しかけて来た。何か差し出して来ている。
「‥‥ケイン君、どうしたの?」
「はい!」
ケイン君が差し出した小さい手を広げると、紫色の丸い実が出て来た。葡萄だ。巨峰と断言してよいのかわからないけど、巨峰っぽい大きい実だった。
「え?俺にくれるの?」
「ん!」
おままごとみたいなやりとりだな、と思いつつ、手を出すと、ケイン君が俺の手の上に葡萄の実を置いた。
冷んやりとした感触があった。
「え?冷たい?」
葡萄を指で摘んでみるとカチカチに凍っていた。
「凍ってる!」
「ん!」
ケイン君が満足そうに頷いた。
「ありがとう。」
俺はケイン君にお礼を言うと、皮をむいて凍った実を口の中に含んだ。冷えた甘味が心地よい。
「懐かしい。子供の頃、良く凍った葡萄を食べたなぁ。」
圭の家に遊びに行くと、圭が時々おやつに凍らせた葡萄を出してくれたのを思い出した。最初の一粒を、今のケイン君みたいに差し出してくれた光景が頭をよぎった。
「国境付近で保護した中でも、柊はスマホ持ってたじゃないか。石倉ちゃんは持ってなかったとしても、一人位は持ってるかもしれないじゃないか。」
「だからって、どうして行こうと思うんですか?」
暫くの間黙って話を聞いていた尾市さんが柄舟さんと江角さんの顔を見つめた。不機嫌そうに言う。
「この村へと出発した日に、やつらの心配やら世話やらは止めたんだと思ってました。」
確かにそうだ。江角さんと柄舟さんは、頼りにされていたみたいだったのを振り切ってこっちに来たんだったよな。
柄舟さんが頷いた。
「他の召還者を見つけて,救い出す活動をすることは止めたよ。。
それにビーチの言う通り、自分で選んだ人生を生きたいって置いて来ちゃった時点で、もうかれらの心配だとか世話焼きとかは止めたね。
まあ、でも同郷の奴らだろ‥‥。
家族と連絡が取れるって凄く重要なことじゃないか。この世界に連れて来られた時点でもう不可能かと思ってたのにさ。
だから、もしかしてスマホの充電さえ出来れば家族と連絡が取れるかもしれないのに、知らん振りしていて良いのかって思っちゃってさ。」
「‥‥お人好しなんだよ。もう。」
緒方さんがブツブツと言った。それから、大きく溜め息をついてから、テーブルに両手をついて、ぐっと江角さんと柄舟さんの顔を覗き込んだ。
「なあ、止めた方が良いよ。やっぱり無理があると思うぜ。気持ちはわからなくもないけどさ。
全員がスマホを持っていないかもって、椎名が言ったのを聞いて気がついたよ。
彼らは彼らなりに落ち着いて生活をしているかもしれないのにさ。
そこに、家族と連絡が取れるやつと取れないやつが出て来ちゃうってことだぜ。
少なくとも石倉ちゃんはスマホを持ってなかったよな。
仲良く助け合って生活してたところが、ぎくしゃくするかもしれないじゃないか。
それとな。もし一度連絡がとれたとして、それで満足すると思うか? 彼らも、彼らの家族もさ。充電切れました。それっきりですって。」
緒方さんが俺の方をチラリと見た。
「瑛太のソーラーバッテリー寄越せとか言い出すかもしれないぞ。」
緒方さんの言葉に俺はギョッとした。
「寄越せって‥‥、まさか‥‥。」
「そうじゃなきゃ定期的に充電できるようにしろって言ってくるんじゃないか?
だって、諦めると思うか?充電すれば家族と連絡がとれるなんて知ったらさ。」
「‥‥。」
緒方さんの言葉を聞いて、俺はブルっと身震いした。
一瞬、圭が遺してくれていたソーラーモバイルバッテリーに、群がってくる人々を想像してしまった。
まさか‥‥、とは思いつつ、全くあり得ないとも言えない。
「エイター!」
動揺していた俺に、ケイン君が話しかけて来た。何か差し出して来ている。
「‥‥ケイン君、どうしたの?」
「はい!」
ケイン君が差し出した小さい手を広げると、紫色の丸い実が出て来た。葡萄だ。巨峰と断言してよいのかわからないけど、巨峰っぽい大きい実だった。
「え?俺にくれるの?」
「ん!」
おままごとみたいなやりとりだな、と思いつつ、手を出すと、ケイン君が俺の手の上に葡萄の実を置いた。
冷んやりとした感触があった。
「え?冷たい?」
葡萄を指で摘んでみるとカチカチに凍っていた。
「凍ってる!」
「ん!」
ケイン君が満足そうに頷いた。
「ありがとう。」
俺はケイン君にお礼を言うと、皮をむいて凍った実を口の中に含んだ。冷えた甘味が心地よい。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
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