半分異世界

月野槐樹

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第28章 瑛太10

第264話 勇者や聖女とは

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「聖女!」
柄舟さんの言葉を聞いて、椎名さんが前のめりになって勢い良く柄舟さんに近付く。

「召還者の中に聖女なんているんですか?」
「‥‥勇者にも反応してあげてよ。」
「だって。もともと周辺国を攻撃刷るための『勇者』の召還ですよね。聖女って何する人なんですかね。やっぱり美人なんですかね。」

「やだ。何の妄想?」

聖女の話に食い気味の椎名さんに、ワイちゃんが冷ややかな言葉を浴びせた。藍ちゃんは冷めた目で見ている。

「ええ~?ちょっと気になっただけだろ?」

椎名さんが、不満そうに言うと、江角さんがコホンと咳払いをした。

「勇者や聖女は居るって噂だけど、基準は能力的なものだと思うよ。俺達だって召還された時、能力判定みたいなのをさせられただろう?」
「ああ‥‥。‥‥はぁ。嫌な思い出が‥‥。」

椎名さんは召還された時の事を思い出したのか表情を曇らせた。トンッと尾市さんが椎名さんの腕を軽く叩いた。

「勇者だ聖女だって俺達と同じように無理矢理連れて来られたんだからな。興味本意で騒ぐなよ。」
「‥‥わかったよ‥‥。悪かったよ‥‥。」

椎名さんが肩を落とし軽く溜め息をついた。

「ねえ。興味本位とかじゃなくて、ちょっと気になるんだけど。
勇者とかって‥‥聖女もかな。あっちの国は、他の国を攻撃する為に呼んだんでしょ。
それで、私達とかみたいに召還されたって人が勇者になったら、勇者がこの国に攻めてくるのかな。」

ワイちゃんの言葉に、俺はギョッとした。
それは考えていなかった。もしかしたら考えないようにしていたのかもしれない。
俺や藍ちゃんと一緒に召還されたクラスメートの中に、「勇者だとか「聖女」だとかって認定された人がいたとしたら、クラスメートがこの国に攻めてくるってことだ。

クラスメートじゃなかったとしても、同じ日本の関東地方の学生だった人が誰か「勇者」って存在になったら、この国の平和を脅かすかもしれないのか?

「‥‥召還された人が勇者になったとしたら、日本の学生だよね。他の国を攻撃何て出来るのかな。」

「あの王女の命令で動くように呪具とか付けられているかもしれないぞ。」
「呪具‥‥。」

尾市さんがピクリと肩を震わせた。緒方さん達も顔を曇らせた。俺と藍ちゃん以外は、呪具というものを付けられて、しゃべる事すらできなくなっていた。
命令だけ聞くようにか、呪具を身に付けられてからは段々と思考が定まらなくなってきたという話も聞いた。

勇者と認定される人もそんな呪具を付けられるのだろうか。命令されたらその通りに行動して、何か強い魔法だとかで攻撃したり、と考えると恐ろしい。

江角さんが、凄く険しい顔をして、遠くに目をやった。

「そうか‥‥。勇者とかが知っている奴って可能性があるのか‥‥。もし、知っている奴がこの国に攻めて来たら、そいつ相手に戦うかもしれないのか。」
「ここは国境から結構離れているから、この国に攻めて来たとしても戦う機会があるかはわからないぞ。」
「そうかもしれないけど。もしも‥‥。この村にやってきて畑とかを焼き払い始めたらどうする?」
「畑を?返り討ちにするよ。」

一瞬、丹誠込めた畑を焼かれるイメージが脳裏をよぎって、即座に戦う宣言をしてしまった。
同級生と戦う事が出来るかっていうと、そこはまだイメージがわかない。だけど、圭が用意してくれた種で育てた野菜を育てている畑を何かしようとするなら、
相手が誰でも戦うつもりだ。
ギュッと藍ちゃんが俺の手を握った。

「そうなったら私も戦うよ!」
キリッとした目で俺を見つめて言う。可愛い。

「私も戦うよ!」
「ぼくもーー!」
ワイちゃんが手を上げたら、ケイン君も真似して同じポーズをとった。ケイン君分かってないで言ってるでしょ。満面の笑顔だし。
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