半分異世界

月野槐樹

文字の大きさ
上 下
262 / 305
第28章 瑛太10

第261話 伝達

しおりを挟む
江角さんと柄舟さんと、子供用のケイン君が一緒だった。

「子供用のを作ったぜ。ケイン君が試運転してくれてる。」
「ビューッだよー!」
鍛冶屋のところで修業をしている江角さんと柄舟さんは、自転車だのキックボードだのを作ったりしている。


移動手段が限られているから、徒歩より早く楽に移動出来るキックボードは最近人気だ。
子供用サイズのキックボードを作ると言っていたのが完成したらしい。

テンッと地面を蹴って、スーッと進んでケイン君がご機嫌で笑っている。
ワイちゃんがケイン君の傍に行ってしゃがみ込んだ。
「わぁ!格好いいの作ってもらったね!」
「ん!」
ニッコリ笑ったケイン君は、一度キックボードから降りて、足元のボード部分を指差した。
「ケインの!」
「おお、名前入り~。格好いいね!』
「ん!」
ボード部分にケイン君の名前が書かれていた。最近開発したスライム素材を組み合わせた塗料でペンキみたいに色を出せるようになっていた。
「ワイチャものる?」
「いいの?」
ワイちゃんがケイン君の後ろに立ってキックボードに二人乗りを始めた。
「おーい、危ないぞー。」
「大丈夫ー!」
「ダイジョブ-!」
キックボードのサイズは小さいし、元々二人乗りとかを想定した作りじゃないのだが、はしゃぎながら二人で進んでいた。
キックボードの交通規制とかはないわけだけど、調子に乗って飛ばし始めたりしたら危ない。
今のところはワイちゃんも態と地面に片足をつけているし、ちょこちょこヨタヨタと進むのを楽しんでいるだけみたいだけど。
その光景を見て和んだ後、江角さん達にMOINEの個別メッセージの話を切り出した。

「おお!ホントだ!どうみても、あのときより後のメッセージが届いてる!やべ!誕生日とか!新年の挨拶とか‥‥。」
しっかり携帯を充電し直してから、メッセージを確認していた江角さんの声が段々震えてきていた。
「‥‥誕生日は滲みるよな‥‥。」
柄舟さんもスマホの画面を見つめながらしんみりしていた。
最初の方は頻繁に心配をするメッセージが送られて来ていて、その後は、ポツリポツリと誕生日やら節目に語りかけるようなメッセージが送られて来ていたそうだ。

俺が召還された時には、既に他の県で行方不明事件が何度も起きていたから、家族の受け止め方が違ったのかもしれない。
最初から事件と関連して考えられていたと思う。
でも、江角さん達が召還された頃だと、行方不明になったのが発覚してから「集団家出か?」という捕えられ方もしていた頃があったみたいだから
叱責やら説得やらという感じの文面も沢山送られていたみたいだ。

「‥‥ちょっと文面練ってから返信するわ。元気だってことは伝えたいけどさ。‥‥帰る手段がないって言わないと‥‥。」
「異世界召還されました、って信じてくれるかな。」

江角さんも柄舟さんも返事をどう書くか、迷って手を止めていた。
確かに、今の状況をどうやって説明するのか考え出したら迷うよな。
俺の時は繋がった事自体が訳分からなくて、あまり深く考えずにやり取りしてたけど。

江角さん達も家族からメッセージを受け取ったのが確認できたから、
これで全員ということか。まあ、柊さんはMOINEアプリのアカウントを持っていなかったみたいだから別として。

ピコンと俺の携帯が音を立てた。見るとジェイ兄からメッセージが来ていた。

『尾市君と椎名君は、今も一緒に行動している? 彼らの親御さんが彼らから連絡が来たと言っているそうだ。』
「話はや!」

尾市さんのお母さんが知らせたのは同級生の家族の連絡網のグループじゃなかったっけ。もう、ジェイ兄まで連絡がいっちゃうのか。
俺は、尾市さん達も一緒だということと、一緒に行動している人のうちMOINEアカウントを持っている全員が家族からのメッセージを受け取ったと伝えた。

すると、更にメッセージが届いた。
『多分、こちらはこれから混乱した状態になると思う。誰と一緒という情報を出すのは控えてもらうことは出来るか?』
「一緒に居るっていうとそんなにまずいのか‥‥。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

マスターズ・リーグ ~傭兵王シリルの剣~

ふりたけ(振木岳人)
ファンタジー
「……あの子を、シリルの事を頼めるか? ……」  騎士王ボードワンが天使の凶刃に倒れた際、彼は実の息子である王子たちの行く末を案じたのではなく、その後の人類に憂いて、精霊王に「いわくつきの子」を託した。 その名はシリル、名前だけで苗字の無い子。そして騎士王が密かに育てようとしていた子。再び天使が地上人絶滅を目的に攻めて来た際に、彼が生きとし生ける者全ての希望の光となるようにと。  この物語は、剣技にも魔術にもまるで秀でていない「どん底シリル」が、栄光の剣を持って地上に光を与える英雄物語である。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

ドグラマ3

小松菜
ファンタジー
悪の秘密結社『ヤゴス』の三幹部は改造人間である。とある目的の為、冷凍睡眠により荒廃した未来の日本で目覚める事となる。 異世界と化した魔境日本で組織再興の為に活動を再開した三人は、今日もモンスターや勇者様一行と悲願達成の為に戦いを繰り広げるのだった。 *前作ドグラマ2の続編です。 毎日更新を目指しています。 ご指摘やご質問があればお気軽にどうぞ。

なぜか俺だけモテない異世界転生記。

一ノ瀬遊
ファンタジー
日本で生まれ日本で育ったこの物語の主人公、高崎コウが不慮?の事故で死んでしまう。 しかし、神様に気に入られ異世界クラウディアに送られた。 現世で超器用貧乏であった彼が異世界で取得したスキルは、 彼だけの唯一無二のユニークスキル『ミヨウミマネ』であった。 人やモンスターのスキルを見よう見まねして習得して、世界最強を目指していくお話。 そして、コウは強くカッコよくなってハーレムやムフフな事を望むがどういう訳か全然モテない。 バチくそモテない。 寄ってくるのは男だけ。 何でだ?何かの呪いなのか!? ウオォォォ!! プリーズ、モテ期ィィ!! 果たしてこの主人公は世界最強になり、モテモテハーレム道を開けるのか!?

絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜
ファンタジー
有栖佑樹はアラフォーの会社員、結城亜理須は女子高生、ある日豪雨に見舞われた二人は偶然にも大きな木の下で雨宿りする。 その木に落雷があり、ショックで気を失う。気がついた時、二人は見知らぬ山の中にいた。ここはどこだろう? と考えていたら、突如猪が襲ってきた。危ない! 咄嗟に亜理須を庇う佑樹。だがいつまで待っても衝撃は襲ってこない。 なんと猪は佑樹達の手前で壁に当たったように気絶していた。実は佑樹の絶対防御が発動していたのだ。 そんな事とは気付かず、当て所もなく山の中を歩く二人は、やがて空腹で動けなくなる。そんな時、亜理須がバイトしていたマッグのハンバーガーを食べたいとイメージする。 すると、なんと亜理須のイメージしたものが現れた。これは亜理須のイメージ転送が発動したのだ。それに気付いた佑樹は、亜理須の住んでいた家をイメージしてもらい、まずは衣食住の確保に成功する。 ホッとしたのもつかの間、今度は佑樹の体に変化が起きて... 異世界に飛ばされたオッサンと女子高生のお話。 ☆誤って消してしまった作品を再掲しています。ブックマークをして下さっていた皆さん、大変申し訳ございません。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...