半分異世界

月野槐樹

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第27章 詩英7

第254話 次の召還?

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「勘違いならよかったわ。3年も経ってまた発生したのって、びっくりしたわよ。」
お茶を一口飲んで少し落ち着いた様子で仁美叔母さんが言った。

実は、茨木の噂の件が気になっていたのも、今日来た理由だったのかもしれない。

「また『召還』ってのはないんじゃないですかね。あ、これ旨。餡子が甘過ぎなくて。」
仁美叔母さんがお土産に持って来てくれた人形焼きをつまんで、Yが言った。

仁美叔母さんは、Yの言葉を聞いて、ちょっと複雑そうな顔をした。

「埼玉、栃木、千葉、神奈川で、その『召還』っていうのをされたのでしょう?
瑛太達みたいに皆逃げちゃったから、また別の人を呼ぼうとするということはないのかしら。」

瑛太達とMOINEのメッセージのやり取りができるようになって、今まで謎のままだった行方不明の背景みたいなものが少し見えて来た。
しかし、それでも何故4県もの人達を集めようとしたのか、最後の神奈川の行方不明事件の後、3年間何も起きていない理由だとか、分からない事が多い。
神奈川の行方不明者は人数が多かったから、呼び寄せる目的を果たしたのかもしれないが、それは想像でしかない。
瑛太達は、行方不明事件の元凶である国からは逃亡して安全な場所にいる。それなら、元凶に近付く危険を冒して理由を探ったりするより、安全な場所に居て欲しい。

「ありえそうだけど、起きないでほしいね。」
「ジェイにいイヤイヤ?」

俺が小さく溜め息をつくと、彗汰が俺の顔を覗き込んで来た。頭を撫でて、笑みを作った。

「うん?起きて欲しくない事はあるけどね。大丈夫だよ。」
「ダイジョウブ。イヤイヤないないね!」

彗汰が小さい拳を作ってニコッと笑った。

「ハハ、彗汰が守ってくれるのかな?」
「まもるよー。」
「頼もしいね。ありがとう。」
「えへへ。」

彗汰が嬉しそうに笑った。
彗汰が立ち上がって部屋の中をプラプラと歩き出したのを眺めながら仁美叔母さんが言った。

「河村さん‥‥、藍ちゃんママにMOINEの事を言おうか考えていたけど、取材の人がうろうろしている時じゃ危険よね。」
「ああ、そうか。そうだね‥‥。」

瑛太達と,俺達が連絡を取れた事を、藍ちゃんのご両親に知らせるかどうか、考えていた。
他の人に知らせたとき、どんな反応になるかわからないし、漏洩するリスクはあるのだが、MOINEを通じて藍ちゃんが、口外しないように両親にしっかり伝えると言っていて
落ち着いた状況で、説明できればという考えにかわって来ていた。
瑛太とYの妹の咲良ちゃんだけが家族と連絡が取れているという状況は、藍ちゃんも、他の子達も辛いだろうと思って来てしまったのだ。

だけど、妙にしつこい記者がうろうろしているとなると、何か記者に感づかれて漏洩する可能性も出てくるのではないかと思う。
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