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第27章 詩英7
第253話 虫除け案件
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「シューシューでモワモワだよ!それでね、それでね!むいむいバイバイなの!」
彗汰が得意顔で何かスプレーを噴射するようなジェスチャーをした。
仁美叔母さんが、「しょうがないわね」と苦笑しながらバッグから緑と白の色彩のスプレーを取り出した。
「彗汰がこれをジェイ君の家に持って行くって言い出して。」
「むいむいシュッシュだよ!モワモワのやつ!」
仁美叔母さんが取り出したスプレーに、彗汰が両手を伸ばした。とどかなくて背伸びしてる。
「虫除けスプレーとか、口に入ったら危ないんじゃないんですか?」
Yがスプレーを見つめて少し心配そうに言う。そうだよな。
「これは原料がハーブだけなので、口に入っても安全なのよ。止めると他のも使っちゃいそうだから使わせてあげてるの。そうしたら彗汰がジェイ君の家も虫除けしたいって言い出しちゃって‥‥。」
「‥‥いいけど。」
万一、彗汰の口に入っても大丈夫なものなら使ってもらっても大丈夫かなと、頷いた。
彗汰は、スプレーを嬉しそうに仁美叔母さんから受け取って、きゅっと口を一文字に結んで身構えた。
「むいむいバイバイ!あ、ワイチャのところのむいむいもバイバイ!」
シュー!シュー!とちょっと真剣な顔をして、何回かスプレーを噴射した。その後、ドヤ顔の彗汰。
「これで、モワモワがんばる!むいむいこないよ!」
「モワモワ?」
「スプレーの霧の事みたい。」
彗汰の台詞を仁美叔母さんに解説してもらっていると、Yが身を屈めて彗汰の頭を撫でた。
「ははは。彗汰くん、虫除けありがとう。おにいさんね、なんだかすっきりしたかも。」
「うん!ワイチャのむいむいバイバイね!」
「うん。そうだね。もう虫は来ないね。」
Yがそう言うと彗汰は嬉しそうに笑った。それから俺の方をキラキラした目で見る。俺も彗汰にお礼を言う。
「彗汰、シュッシュありがとう。」
「うん!えへへ。」
彗汰の笑顔を見ていて、ふと、先程の行方不明者家族の取材の話を思い出した。仁美叔母さんと彗汰をリビングに通して話を始めたが仁美叔母さんは既に他の人から聞いていたようだった。
「ええ。河村さんからも聞いたし、他にもママ友だった方達からも連絡がきたわ。うちには今のところ記者らしい人は来ていないけど。」
「そうなんだ。一応、気をつけてね。」
既に、瑛太と圭の同級生達の家族の何軒かには取材が行っているらしい。
こちらの行方不明者は人数が多いから、他を回っていて今はまだ来ていないだけかもしれない。
「今のところ何かされたわけじゃないけど。万一彗汰が傷つくような事があったら困るから、彗汰の事を訊かれても何も言うつもりはないわよ。写真だって撮らせないわ。」
仁美叔母さんが、膝の上に乗せた彗汰をギュッと抱きしめた。彗汰はキャッと笑ってから、仁美叔母さんを見上げた。
「おかあさん、イヤイヤ?むいむい?」
「うーん。むいむいみたいな感じかしら? そうね。イヤイヤね。」
「むいむい、バイバイね!」
シューッと口で音を立てて、彗汰がスプレーを噴射するようなジェスチャーをした。
仁美叔母さんが笑って、彗汰の頭を撫でた。
「そういえば、茨木でまた行方不明者かって、ニュースで出ていたけど‥‥。」
「ああ、アレは、違ったらしいですよ。勘違いだとかで。実は塾さぼってカラオケだったそうです。」
Yが肩を竦めた。
俺も最初にネットニュースで、茨木で行方不明という記事を見て驚いた。しかし早速確認をしたらしいYからすぐに連絡があったのだ。
中学生のグループが、塾をさぼってこっそりカラオケに行っていたらしいのだが、連絡が取れなくなった家族が、行方不明事件だと思い込んで騒いでしまい
ネットにも書き込んだので話が広がってしまったそうだ。
彗汰が得意顔で何かスプレーを噴射するようなジェスチャーをした。
仁美叔母さんが、「しょうがないわね」と苦笑しながらバッグから緑と白の色彩のスプレーを取り出した。
「彗汰がこれをジェイ君の家に持って行くって言い出して。」
「むいむいシュッシュだよ!モワモワのやつ!」
仁美叔母さんが取り出したスプレーに、彗汰が両手を伸ばした。とどかなくて背伸びしてる。
「虫除けスプレーとか、口に入ったら危ないんじゃないんですか?」
Yがスプレーを見つめて少し心配そうに言う。そうだよな。
「これは原料がハーブだけなので、口に入っても安全なのよ。止めると他のも使っちゃいそうだから使わせてあげてるの。そうしたら彗汰がジェイ君の家も虫除けしたいって言い出しちゃって‥‥。」
「‥‥いいけど。」
万一、彗汰の口に入っても大丈夫なものなら使ってもらっても大丈夫かなと、頷いた。
彗汰は、スプレーを嬉しそうに仁美叔母さんから受け取って、きゅっと口を一文字に結んで身構えた。
「むいむいバイバイ!あ、ワイチャのところのむいむいもバイバイ!」
シュー!シュー!とちょっと真剣な顔をして、何回かスプレーを噴射した。その後、ドヤ顔の彗汰。
「これで、モワモワがんばる!むいむいこないよ!」
「モワモワ?」
「スプレーの霧の事みたい。」
彗汰の台詞を仁美叔母さんに解説してもらっていると、Yが身を屈めて彗汰の頭を撫でた。
「ははは。彗汰くん、虫除けありがとう。おにいさんね、なんだかすっきりしたかも。」
「うん!ワイチャのむいむいバイバイね!」
「うん。そうだね。もう虫は来ないね。」
Yがそう言うと彗汰は嬉しそうに笑った。それから俺の方をキラキラした目で見る。俺も彗汰にお礼を言う。
「彗汰、シュッシュありがとう。」
「うん!えへへ。」
彗汰の笑顔を見ていて、ふと、先程の行方不明者家族の取材の話を思い出した。仁美叔母さんと彗汰をリビングに通して話を始めたが仁美叔母さんは既に他の人から聞いていたようだった。
「ええ。河村さんからも聞いたし、他にもママ友だった方達からも連絡がきたわ。うちには今のところ記者らしい人は来ていないけど。」
「そうなんだ。一応、気をつけてね。」
既に、瑛太と圭の同級生達の家族の何軒かには取材が行っているらしい。
こちらの行方不明者は人数が多いから、他を回っていて今はまだ来ていないだけかもしれない。
「今のところ何かされたわけじゃないけど。万一彗汰が傷つくような事があったら困るから、彗汰の事を訊かれても何も言うつもりはないわよ。写真だって撮らせないわ。」
仁美叔母さんが、膝の上に乗せた彗汰をギュッと抱きしめた。彗汰はキャッと笑ってから、仁美叔母さんを見上げた。
「おかあさん、イヤイヤ?むいむい?」
「うーん。むいむいみたいな感じかしら? そうね。イヤイヤね。」
「むいむい、バイバイね!」
シューッと口で音を立てて、彗汰がスプレーを噴射するようなジェスチャーをした。
仁美叔母さんが笑って、彗汰の頭を撫でた。
「そういえば、茨木でまた行方不明者かって、ニュースで出ていたけど‥‥。」
「ああ、アレは、違ったらしいですよ。勘違いだとかで。実は塾さぼってカラオケだったそうです。」
Yが肩を竦めた。
俺も最初にネットニュースで、茨木で行方不明という記事を見て驚いた。しかし早速確認をしたらしいYからすぐに連絡があったのだ。
中学生のグループが、塾をさぼってこっそりカラオケに行っていたらしいのだが、連絡が取れなくなった家族が、行方不明事件だと思い込んで騒いでしまい
ネットにも書き込んだので話が広がってしまったそうだ。
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