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第25章 広田4
第249話 これからの事
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「なあ、こっちに地球の人が来ているなら、連絡とかとれないかな。」
「そうだな。‥‥だが岡部、まずはこの料理を堪能しようぜ。」
同郷の人間がいるかもという話を始めた岡部さんに武井さんが冷静な口調で言った。凄い勢いで食べていた秋山さんの皿はもう空になっていて、岡部さんの皿をじっとみていた。
食べる速度がゆっくりになっていた岡部さんはハッと気がついて、皿を自分の方に引き寄せた。
食事を終えてから、肉料理のお礼を宿の食堂の人に言いつつ、情報を仕入れた。
「ツェット商会ってところが、色々変わったものを販売しているらしいな。」
部屋に戻ってから、食堂で聞いた情報について話をした。
マヨネーズはツェット商会という商会の系列店で販売されていて、唐揚げも、ツェット商会の系列のレストランで流行った料理らしい。
他にも色々珍しい商品を販売しているところだそうだ。
「ツェット商会って日本人が作ったのかな。店に行ったら会えるかな。」
「いや,地球の人だったとしても、日本人とは限らないだろ。‥‥というか系列店って言ってたんだから、沢山店があるってことだろ?
この街のツェット商会の店に行ったからって、マヨネーズを作った人に会えるわけじゃないんじゃないか?」
「‥‥そうか。でもこの街に系列店があるなら、明日にでも行ってみないか?」
召還された国を逃げ出して来て、この街に到着はしたが、何をするとか決まった事は何もない。
あの国から遠ざかる事と、生きて行くための資金を稼ぐ事くらいしか今のところは考えていなかった。
同郷の人がいるかもしれない、と思うと、何だか希望が沸いて来た気がした。同時に、今のままだと、目指すところもなく不安定な状態だということも感じていた。
「唐揚げ、マジで上手かったなぁ。」
「角兎、狩りに行くか‥‥。」
「それもありだな。資金を稼ぎつつ、毎日唐揚げ。」
「いや、流石に毎日唐揚げは作ってくれないんじゃないか?今日だって、特別に作ってくれたっぽいし。」
宿の食堂では、肉料理の追加注文は受け付けているが、その中のメニューには唐揚げはなかったらしい。
肉を持ち込みというのもあるが、俺達がこの街に来たばかりと聞いて、最近街で流行っている料理を作ってくれたのだそうだ。
親切だよな。この宿を選んだのは正解かもしれない。
まだ国境にも近い場所だし,この街に長居はしない方が良いのかもしれないが、移動するための資金も乏しいので、
この街が危険だったり、物価が他より高いとかでない限りは、数日は滞在をして、狩猟ギルドでの依頼で稼いで行こうと考えていた。
宿が親切で居心地が良いというのは運が良いと思う。
部屋は、簡素なベッドが狭い部屋に詰め込まれていて、殺風景な部屋だった。値段相応かもしれないが4人部屋なので一人当たりの料金が割安だ。
狩猟ギルドで複数人で活動している人がよく利用する部屋のようだ。
ポンポンと軽くベッドを叩いてみてから、腰を下ろした。たまに木の板に布を敷いているだけみたいなベッドもあるから先に叩いて確認する癖がついた。
ここの宿のベッドは、硬いけど、板の上にせんべい布団を敷いたみたいな感じだ。
「明日はツェット商会と角兎狩り、どっちを先に行く?」
岡部さんは、宿の裏の井戸から水差しに水を汲んで来て、壁に備え付けの小さい棚の上に置いた。
「資金的に狩り優先だろ。そもそも資金稼がないと、何も買えないだろうし。」
沢田さんは、荷物の中から洗濯するシャツやら手ぬぐいやらを出してまとめながら言う。確かに資金にあまり余裕はない。
道中で狩った角兎を売ったが、何もしないで何日も宿泊出来る程ではなかった。
午前中に角兎を狩って、狩猟ギルドに売りに行き、午後は街を見て回りならら例のツェット商会にも行ってみようかという話になった。
「狩りを仕事って考えると、午前中しか仕事しないみたいだぞ。」
「街の情報収集も大事だろ。」
「まあね。」
あれこれ考えてしまうのは、この先の生活のことを考えるからかもしれない。今のところ、生活資金を稼ぐ手段が狩りしかない。
「将来狩人になる」なんて考えた事もなかったのに、だ。
このまま、狩りをしながら生活して行くんだろうかという考えが、時々ふとよぎる。多分、あの国を無事出て来られて、逃げなくちゃと緊迫した状態から少し余裕が出て来たからじゃないかと思う。
もしかしたら、何処かで別の職業を見つけるかもしれない。だが、それは追手が来ないと思えてからだろうな。
「そうだな。‥‥だが岡部、まずはこの料理を堪能しようぜ。」
同郷の人間がいるかもという話を始めた岡部さんに武井さんが冷静な口調で言った。凄い勢いで食べていた秋山さんの皿はもう空になっていて、岡部さんの皿をじっとみていた。
食べる速度がゆっくりになっていた岡部さんはハッと気がついて、皿を自分の方に引き寄せた。
食事を終えてから、肉料理のお礼を宿の食堂の人に言いつつ、情報を仕入れた。
「ツェット商会ってところが、色々変わったものを販売しているらしいな。」
部屋に戻ってから、食堂で聞いた情報について話をした。
マヨネーズはツェット商会という商会の系列店で販売されていて、唐揚げも、ツェット商会の系列のレストランで流行った料理らしい。
他にも色々珍しい商品を販売しているところだそうだ。
「ツェット商会って日本人が作ったのかな。店に行ったら会えるかな。」
「いや,地球の人だったとしても、日本人とは限らないだろ。‥‥というか系列店って言ってたんだから、沢山店があるってことだろ?
この街のツェット商会の店に行ったからって、マヨネーズを作った人に会えるわけじゃないんじゃないか?」
「‥‥そうか。でもこの街に系列店があるなら、明日にでも行ってみないか?」
召還された国を逃げ出して来て、この街に到着はしたが、何をするとか決まった事は何もない。
あの国から遠ざかる事と、生きて行くための資金を稼ぐ事くらいしか今のところは考えていなかった。
同郷の人がいるかもしれない、と思うと、何だか希望が沸いて来た気がした。同時に、今のままだと、目指すところもなく不安定な状態だということも感じていた。
「唐揚げ、マジで上手かったなぁ。」
「角兎、狩りに行くか‥‥。」
「それもありだな。資金を稼ぎつつ、毎日唐揚げ。」
「いや、流石に毎日唐揚げは作ってくれないんじゃないか?今日だって、特別に作ってくれたっぽいし。」
宿の食堂では、肉料理の追加注文は受け付けているが、その中のメニューには唐揚げはなかったらしい。
肉を持ち込みというのもあるが、俺達がこの街に来たばかりと聞いて、最近街で流行っている料理を作ってくれたのだそうだ。
親切だよな。この宿を選んだのは正解かもしれない。
まだ国境にも近い場所だし,この街に長居はしない方が良いのかもしれないが、移動するための資金も乏しいので、
この街が危険だったり、物価が他より高いとかでない限りは、数日は滞在をして、狩猟ギルドでの依頼で稼いで行こうと考えていた。
宿が親切で居心地が良いというのは運が良いと思う。
部屋は、簡素なベッドが狭い部屋に詰め込まれていて、殺風景な部屋だった。値段相応かもしれないが4人部屋なので一人当たりの料金が割安だ。
狩猟ギルドで複数人で活動している人がよく利用する部屋のようだ。
ポンポンと軽くベッドを叩いてみてから、腰を下ろした。たまに木の板に布を敷いているだけみたいなベッドもあるから先に叩いて確認する癖がついた。
ここの宿のベッドは、硬いけど、板の上にせんべい布団を敷いたみたいな感じだ。
「明日はツェット商会と角兎狩り、どっちを先に行く?」
岡部さんは、宿の裏の井戸から水差しに水を汲んで来て、壁に備え付けの小さい棚の上に置いた。
「資金的に狩り優先だろ。そもそも資金稼がないと、何も買えないだろうし。」
沢田さんは、荷物の中から洗濯するシャツやら手ぬぐいやらを出してまとめながら言う。確かに資金にあまり余裕はない。
道中で狩った角兎を売ったが、何もしないで何日も宿泊出来る程ではなかった。
午前中に角兎を狩って、狩猟ギルドに売りに行き、午後は街を見て回りならら例のツェット商会にも行ってみようかという話になった。
「狩りを仕事って考えると、午前中しか仕事しないみたいだぞ。」
「街の情報収集も大事だろ。」
「まあね。」
あれこれ考えてしまうのは、この先の生活のことを考えるからかもしれない。今のところ、生活資金を稼ぐ手段が狩りしかない。
「将来狩人になる」なんて考えた事もなかったのに、だ。
このまま、狩りをしながら生活して行くんだろうかという考えが、時々ふとよぎる。多分、あの国を無事出て来られて、逃げなくちゃと緊迫した状態から少し余裕が出て来たからじゃないかと思う。
もしかしたら、何処かで別の職業を見つけるかもしれない。だが、それは追手が来ないと思えてからだろうな。
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