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第25章 広田4
第247話 次の街
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街道をほぼ早歩きで歩き抜いて、昼飯の時と2度程15分程度の休憩を取っただけで、移動を続けた結果、日暮れ前に次の街に到着した。
思ったより大きい街だったので少し緊張する。道中で角兎を3体倒したので、出来ればそれを売って資金にしてしまいたい。
街の門の近くに出ていた屋台で、果実水を買って、売り子の人に角兎を買い取りしてくれる場所を聞いて見た。
「狩猟ギルドがいいんじゃない?肉屋は取引ないところからはあまり買い取らないし。」
売り子の人はそう言って、狩猟ギルドまでの道を大ざっぱに教えてくれた。
「わからなくなったら、近くの人に聞くと良いよ。」
「ありがとうございます!」
お礼を言って、果実水のカップを返してから、教えてもらった方向に進む。歩きながら岡部さんが屋台の方を振り返った。
「親切だし、物価が馬鹿高いとかもなさそうだね。」
「それに言葉が通じる!」
「お、そうだね。‥‥って、それは国境通った時点でわかっただろ。」
「国境付近だから、外国語も通じるとかっていうこともあるだろ。それと串焼き食いたい。」
「‥‥だな‥‥。」
果実水の屋台の隣で、串焼きの屋台が上手そうな匂いをさせていたのだ。
ぐぅと、小さく腹がなる。
「宿がいくらかかるかわからないからな。先に角兎を売って、それから宿を取る。串焼きで散在して宿代が足りないとかは避けたいだろ。」
「‥‥まあ、そうだな。」
武井さんの冷静な言葉に、皆俯いた。半日歩き続けて足が棒になってる。今日はなるべくなら宿で休みたい。皆同じ気持ちだったようだ。
食欲がそそられてしまうから、なるべく屋台等を見ないようにして歩いた。
「‥‥ああ、ソーセージパンだ。あったぞ!この街にも!」
途中の屋台の前を通った時に、秋山さんが反応して足を止めた。
ソーセージパンの事は、分かってる。目の端に映ってたから。でも、見ちゃダメだ。
「秋山、堪えろ。宿確保したら、すぐ食事だ。」
岡部さんがぐいぐいと秋山さんの背中を押して歩く。
この国に入る前まで、この国、ヴェスタリコラルは碌に食べるものがない貧しい国だと聞かされて来た。それが、国境を入ってすぐの村でも、半日歩いて到着した街でも、食欲をそそる食べ物が購入可能なレベルの金額で売られているという事が分かった。
それ自体は喜ばしい事だと思った。しかし‥‥、今は辛い。肉を焼いている匂いと音とか、マジやばい。
食べ物の誘惑に負けて、いっそ、野宿でも良いかななんて考えも浮かんで来たが、直ぐにそれを打ち消す。全く知らない街で、治安がどうだかもわからないのだ。
ようやく狩猟ギルドらしい建物の前に到着した。
「つ、ついたぞ。」
「あ、ああ。」
街の門からそれほど長距離ではなかったはずだが、長い道のりに感じた。何となく息がキレる。
「じゃ、じゃあすぐに売りに行くぞ!」
秋山さんが、角兎を入れた麻袋の口を鷲づかみにした。
「あ、ちょっと待て。」
武井さんが秋山さんを手で制止させた。
「な、なんだ?」
「狩猟ギルドの登録名。忘れるなよ。ヨー?」
「おーー、俺はヨー。YO!YO!YO! イエー!」
秋山さんが妙なテンションになってる。
追っ手が来ないとも限らないので、迂闊に狩猟ギルドで本名を名乗るわけにはいかない。お互いの呼び名を確認する。
「フーユーアー?俺はフー!イェー!」
「おか‥‥やめて。お前まで‥‥。」
岡部さんまでヒップホップの人みたいな口調で語り始めたので、武井さんが口を手で押さえている。
「‥‥オー、俺はオー、オーォオー。」
「‥‥オーちゃんは捻りが足りないね。」
「‥‥。」
口に出した方が呼び名が印象に残るかと思って、真似してみたら滑ったようだ。い、いいんだ。気にしないさ‥‥。
武井さんも何か名乗りを上げるかと思ったら、ちょっと呆れ気味な様子でVサインを作った
。
「ヴイ、ってそれだけー?」
「もういいだろ。買い取り行くぞ。」
妙なテンションになってきている秋山さんと岡部さんの方を、武井さんがボンと叩いて、狩猟ギルドに入って行った。
思ったより大きい街だったので少し緊張する。道中で角兎を3体倒したので、出来ればそれを売って資金にしてしまいたい。
街の門の近くに出ていた屋台で、果実水を買って、売り子の人に角兎を買い取りしてくれる場所を聞いて見た。
「狩猟ギルドがいいんじゃない?肉屋は取引ないところからはあまり買い取らないし。」
売り子の人はそう言って、狩猟ギルドまでの道を大ざっぱに教えてくれた。
「わからなくなったら、近くの人に聞くと良いよ。」
「ありがとうございます!」
お礼を言って、果実水のカップを返してから、教えてもらった方向に進む。歩きながら岡部さんが屋台の方を振り返った。
「親切だし、物価が馬鹿高いとかもなさそうだね。」
「それに言葉が通じる!」
「お、そうだね。‥‥って、それは国境通った時点でわかっただろ。」
「国境付近だから、外国語も通じるとかっていうこともあるだろ。それと串焼き食いたい。」
「‥‥だな‥‥。」
果実水の屋台の隣で、串焼きの屋台が上手そうな匂いをさせていたのだ。
ぐぅと、小さく腹がなる。
「宿がいくらかかるかわからないからな。先に角兎を売って、それから宿を取る。串焼きで散在して宿代が足りないとかは避けたいだろ。」
「‥‥まあ、そうだな。」
武井さんの冷静な言葉に、皆俯いた。半日歩き続けて足が棒になってる。今日はなるべくなら宿で休みたい。皆同じ気持ちだったようだ。
食欲がそそられてしまうから、なるべく屋台等を見ないようにして歩いた。
「‥‥ああ、ソーセージパンだ。あったぞ!この街にも!」
途中の屋台の前を通った時に、秋山さんが反応して足を止めた。
ソーセージパンの事は、分かってる。目の端に映ってたから。でも、見ちゃダメだ。
「秋山、堪えろ。宿確保したら、すぐ食事だ。」
岡部さんがぐいぐいと秋山さんの背中を押して歩く。
この国に入る前まで、この国、ヴェスタリコラルは碌に食べるものがない貧しい国だと聞かされて来た。それが、国境を入ってすぐの村でも、半日歩いて到着した街でも、食欲をそそる食べ物が購入可能なレベルの金額で売られているという事が分かった。
それ自体は喜ばしい事だと思った。しかし‥‥、今は辛い。肉を焼いている匂いと音とか、マジやばい。
食べ物の誘惑に負けて、いっそ、野宿でも良いかななんて考えも浮かんで来たが、直ぐにそれを打ち消す。全く知らない街で、治安がどうだかもわからないのだ。
ようやく狩猟ギルドらしい建物の前に到着した。
「つ、ついたぞ。」
「あ、ああ。」
街の門からそれほど長距離ではなかったはずだが、長い道のりに感じた。何となく息がキレる。
「じゃ、じゃあすぐに売りに行くぞ!」
秋山さんが、角兎を入れた麻袋の口を鷲づかみにした。
「あ、ちょっと待て。」
武井さんが秋山さんを手で制止させた。
「な、なんだ?」
「狩猟ギルドの登録名。忘れるなよ。ヨー?」
「おーー、俺はヨー。YO!YO!YO! イエー!」
秋山さんが妙なテンションになってる。
追っ手が来ないとも限らないので、迂闊に狩猟ギルドで本名を名乗るわけにはいかない。お互いの呼び名を確認する。
「フーユーアー?俺はフー!イェー!」
「おか‥‥やめて。お前まで‥‥。」
岡部さんまでヒップホップの人みたいな口調で語り始めたので、武井さんが口を手で押さえている。
「‥‥オー、俺はオー、オーォオー。」
「‥‥オーちゃんは捻りが足りないね。」
「‥‥。」
口に出した方が呼び名が印象に残るかと思って、真似してみたら滑ったようだ。い、いいんだ。気にしないさ‥‥。
武井さんも何か名乗りを上げるかと思ったら、ちょっと呆れ気味な様子でVサインを作った
。
「ヴイ、ってそれだけー?」
「もういいだろ。買い取り行くぞ。」
妙なテンションになってきている秋山さんと岡部さんの方を、武井さんがボンと叩いて、狩猟ギルドに入って行った。
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