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第25章 広田4
第245話 水筒を買いに
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「まあ、そうだな‥‥。安心しきるにはまだ早いか。」
秋山さんはぷしゅーっと膨らました口から息を吐き出した。
「岡部は、ほぼほぼ死んだと思われてるから大丈夫だろ。問題は俺かもね。雷に打たれて野たれ死んだと思っててくれるとよいんだが。」
「いっそ太ったらどうだ。」
「はははー、旨いもん食べちゃうぞー。」
岡部さんの軽口に、秋山さんがおどけて答えた。実際のところ、最初に会ったときと印象は大分違うから、追手が居たとしてもすぐには見つからないのではという気はする。
俺と武井さんが神殿を追い出された時の感じからすると、即戦力以外は興味がないみたいなので国境を越えてまで追ってくることはないのではないかと思っている。ただ、それは推測なだけなので、断言はできない。
翌朝、宿の朝食は夕食よりはシンプルだけど、野菜スープと焼きたてのパンが出て来た。ちゃんと期待通りのふんわりしたパンだ。
でも、夕食のパンとは生地がちょっと違っていた。印象としては夕食で食べたパンの方が若干どっしりしている気がした。
「ああ、丸パンと長パンで、ちょっと生地が違うでしょう?コウボとかいうのが違うらしいですよ。」
気になって、給仕をしていた従業員に訊いて見ると、そんな答えが返って来た。
「酵母かな。」
「どっちも旨いよな。」
硬いパンを食べて暮らしていた身からすると、丸いパンも長いパンも凄く旨い。普通に日本のパン屋で売られていたとしても違和感がないかもしれない。
もっと早くこちらの国に来られていればよかった、という考えが頭をよぎった。でも、それには、あの呪具から解放されていないとダメだったんだよな。
そして、あのタイミングでないと、岡部さんと秋山さんとは合流できなかっただろう。
「この後、竹水筒とパンを買いに行きますよね。宿はチェックアウトしちゃいますか?」
「いや、水筒を買うなら、宿で水を補給出来た方が良いんじゃないか?」
「お婆さんのところで水を買うんじゃなく?」
「余裕ないし、ちょっとでも節約したいだろ。」
確かに。水を売っていたお婆さんは親切だったし、宿の情報も教えてくれたから、また店に買いに行けたらとも思うけど、それは所持金に余裕が在る場合だよな。
竹水筒の値段が凄く高くて、結局買えない可能性もあるけれど。
朝食後、宿には水筒を買いに行って、一度戻ってくると告げてから出かけた。
期待に胸を膨らませて行った商業ギルドの出店で、竹水筒を見せてもらうと、やはりそこそこ高めの値段だった。
500mlくらいの大きめサイズのが銀貨5枚。小さい竹水筒が銀貨3枚だ。
見た目は、イメージしている竹の水筒そのものだった。竹の節が利用してあって、節のところに穴をあけて細い竹が刺さっていてそこが飲み口になる。
持ち運びしやすいように、紐がついていてぶら下げられるようになっている。
水を持ち歩くのは重要だから、岡部さんと秋山さんの分は買いたい。俺も欲しいけど、金が貯まってからかな‥‥。
「うーん‥‥。」
大きいサイズを二つ買うと小金貨1枚になる。俺の感覚では1万円くらいかな。
岡部さん達は値段を見て躊躇しているようだ。
「こちら、新製品で、旅の方などに今大変人気の商品です。入荷したばかりなのですが、すぐ売り切れてしまうんですよ。」
店員さんが、お勧めしてくる。
俺は武井さんの顔を見た。岡部さん達は所持金がないから、俺と武井さんが支払うことになる。確かに高いけど、脱水とかになるより買った方が良いんじゃないかと
思うのだが、沢田さんもまだ購入を決めかねている様子だった。
買っちゃいましょうよ、と言いかけた時、店員さんが別の商品を出して来た。
「こちらもリーズナブルで人気ですよ。」
「おお。」
思わず、声が漏れた。店員さんが出して来たのは、ヒョウタンだ。水筒に加工してあるらしい。
」
秋山さんはぷしゅーっと膨らました口から息を吐き出した。
「岡部は、ほぼほぼ死んだと思われてるから大丈夫だろ。問題は俺かもね。雷に打たれて野たれ死んだと思っててくれるとよいんだが。」
「いっそ太ったらどうだ。」
「はははー、旨いもん食べちゃうぞー。」
岡部さんの軽口に、秋山さんがおどけて答えた。実際のところ、最初に会ったときと印象は大分違うから、追手が居たとしてもすぐには見つからないのではという気はする。
俺と武井さんが神殿を追い出された時の感じからすると、即戦力以外は興味がないみたいなので国境を越えてまで追ってくることはないのではないかと思っている。ただ、それは推測なだけなので、断言はできない。
翌朝、宿の朝食は夕食よりはシンプルだけど、野菜スープと焼きたてのパンが出て来た。ちゃんと期待通りのふんわりしたパンだ。
でも、夕食のパンとは生地がちょっと違っていた。印象としては夕食で食べたパンの方が若干どっしりしている気がした。
「ああ、丸パンと長パンで、ちょっと生地が違うでしょう?コウボとかいうのが違うらしいですよ。」
気になって、給仕をしていた従業員に訊いて見ると、そんな答えが返って来た。
「酵母かな。」
「どっちも旨いよな。」
硬いパンを食べて暮らしていた身からすると、丸いパンも長いパンも凄く旨い。普通に日本のパン屋で売られていたとしても違和感がないかもしれない。
もっと早くこちらの国に来られていればよかった、という考えが頭をよぎった。でも、それには、あの呪具から解放されていないとダメだったんだよな。
そして、あのタイミングでないと、岡部さんと秋山さんとは合流できなかっただろう。
「この後、竹水筒とパンを買いに行きますよね。宿はチェックアウトしちゃいますか?」
「いや、水筒を買うなら、宿で水を補給出来た方が良いんじゃないか?」
「お婆さんのところで水を買うんじゃなく?」
「余裕ないし、ちょっとでも節約したいだろ。」
確かに。水を売っていたお婆さんは親切だったし、宿の情報も教えてくれたから、また店に買いに行けたらとも思うけど、それは所持金に余裕が在る場合だよな。
竹水筒の値段が凄く高くて、結局買えない可能性もあるけれど。
朝食後、宿には水筒を買いに行って、一度戻ってくると告げてから出かけた。
期待に胸を膨らませて行った商業ギルドの出店で、竹水筒を見せてもらうと、やはりそこそこ高めの値段だった。
500mlくらいの大きめサイズのが銀貨5枚。小さい竹水筒が銀貨3枚だ。
見た目は、イメージしている竹の水筒そのものだった。竹の節が利用してあって、節のところに穴をあけて細い竹が刺さっていてそこが飲み口になる。
持ち運びしやすいように、紐がついていてぶら下げられるようになっている。
水を持ち歩くのは重要だから、岡部さんと秋山さんの分は買いたい。俺も欲しいけど、金が貯まってからかな‥‥。
「うーん‥‥。」
大きいサイズを二つ買うと小金貨1枚になる。俺の感覚では1万円くらいかな。
岡部さん達は値段を見て躊躇しているようだ。
「こちら、新製品で、旅の方などに今大変人気の商品です。入荷したばかりなのですが、すぐ売り切れてしまうんですよ。」
店員さんが、お勧めしてくる。
俺は武井さんの顔を見た。岡部さん達は所持金がないから、俺と武井さんが支払うことになる。確かに高いけど、脱水とかになるより買った方が良いんじゃないかと
思うのだが、沢田さんもまだ購入を決めかねている様子だった。
買っちゃいましょうよ、と言いかけた時、店員さんが別の商品を出して来た。
「こちらもリーズナブルで人気ですよ。」
「おお。」
思わず、声が漏れた。店員さんが出して来たのは、ヒョウタンだ。水筒に加工してあるらしい。
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