半分異世界

月野槐樹

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第25章 広田4

第243話 湯浴み

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「個室は一人銀貨4枚か‥‥。」
お婆さんに教えられた通りで、少し古びたこじんまりした宿を見つけた。宿泊費を確認すると最初に見た宿よりは安かった。しかし、他にも安い宿があるかもしれないという気にさせる値段だ。
他も見ようかと顔を見合わせていたら、宿の従業員の小柄で細いお兄さんが提案してきた。

「大部屋はどうです?一人銀貨2枚ですよ。」
「大部屋か‥‥。」

大部屋ということは他の宿泊客と一緒ということだ。今までも泊まった事はあるが、うるさかったり、警戒していたりしないといけないところはあった。
まあ,野宿よりずっとマシなんだが。
どうしようかと顔を見合わせていると、宿のお兄さんが更に勧めて来た。

「いまなら、ちょうど四人部屋の大部屋が空いてますよ。」
「お‥‥?」

追加でベッドを足したりして他の客が入ったりはないらしい。それなら個室と変わらないんじゃないか。
ただ、食堂近くでちょっと周囲が騒がしいかもと言われた。
他にも6人部屋の大部屋があるらしいが、そちらだと他の宿泊客が入る可能性がある。

「家族連れにも人気なんですよねぇ。今なら空いているんですけど。」
「‥‥。」

充分安い料金だし、その部屋に泊まることにした。決して押し切られたわけじゃないぞ。
食事は別料金だったが夕食と朝食が付いて一人銀貨1枚。別々だと夕食は銀貨8枚。朝食が銀貨4枚だという。
ただし、一番低いグレードのメニューの時だそうだ。もっと豪華なメニューもあるらしい。

外に買いに行くと、もう少し安くあがるかもしれないが、そんなに高くはない気がする。それと食事の為に歩き回るより、今は身体を休める方が良い気がした。

大部屋用の部屋に入って見ると2段ベッドが二つ並んでいた。部屋もあまり広くはなかった。
それでも、ずっと気を張っていたから、ゆっくり休める状況というのはホッとする。

顔等を洗う場合、裏庭にある井戸を使って構わないという。
とりあえず、顔を洗う用と飲み水用の水を用意してから、まだ午前中だがそれぞれベッドに横になった。

「昼近くなったら、外に買いに行こう。」

そんな事を言っていたのだが、目が覚めたら日が暮れかけていた。
起きてみたら沢田さんが、窓辺近くに置いた椅子に腰を下ろして窓の外を眺めていた。
岡部さんと秋山さんはまだ眠っていた。

「‥‥凄く眠っちゃったみたいですね。」
「俺もだよ。疲れが溜まってたのも在るけど、ちょっと緊張が解けたのかな。」
「ああ、それはあるかも‥‥。」

岡部さん達が眠っている間に、明日、この先の街に向かう準備の為の買い物にでも行くかと言う話もでたが、眠ったままの二人に何も言わずに出かけるものちょっと気がかりだ。
とりあえず水浴びだとか、荷物の整理だとかをしていることにした。
宿には、シャワールームならぬ、水浴びルームがあった。大きさはシャワールーム程で,水の入った桶を持ち込んで身体を洗うのだ。

井戸水を汲んでくると、武井さんが魔法で湯に変えてくれるので助かる。
水浴びというか湯浴みをしてサッパリとして部屋に戻ってくると、秋山さんが起きて来ていた。空腹で目が覚めたそうだ。
腹は減っていても、湯浴みは魅力的だったらしい。
いそいそと井戸に水を汲みに行っていた。
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