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第22章 広田3
第218話 勇者と聖女
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「やあ、レラン地区から来た井伊だよ。手続きよろしく。宿舎はどこ?」
「おい!無視すんなよ!」
本木が向かって行こうとした時、レラン地区から来たというその人物と本木の間に、身体の大きな兵士が数人割り込んで来た。
目の前に急に壁が出来て、本木の足が止まった。
「やだぁ~!本木君ったら。」
松井がキャラキャラと笑った。
「勇者様に喧嘩を売ったら大変よぅ~。」
「勇者様‥‥?」
俺は松井の言葉を聞いて、その人物をマジマジとみつめた。
勇者と呼ばれたその人物は、頬にかかった前髪を払うようにさっと首を動かした。
「『勇者様』という程立派じゃないよ。職業が『勇者』なだけさ。」
「勇者様は強いのよぉ~。」
松井はちょっとドヤ顔でそう言うと「勇者様」の腕にしがみついた。本木は不機嫌そうに「勇者様」を睨みつけている。
「勇者様」は松井が腕にしがみついていても、本木が睨みつけていても気にした様子なく、爽やかな笑みを浮かべた。
「僕は井伊秀彦。君達も日本人のようだね。エルの同級生かな。」
「そうよぉ~。本木君とぉ~、広田君っていうの~。」
本木と俺が反応する前に松井が答えてしまう。
武井さんが言っていた「勇者」というのがこの井伊さんの事らしい。
目鼻立ちははっきりしている。外国人の血が混じっているかもしれないけど日本人なんだろう。周りに兵士が沢山いるので、簡単な挨拶くらいしかできない。
「勇者」という立場は優遇されているのか、余裕のある笑みを浮かべている。
挨拶程度では会話が続かないしどうしようと思っていたら、ふと、松井達の後方に誰か立っているのが見えた。
黒髪、色白の人形のような顔立ちの大人しそうな女の子だ。彼女も日本人のようだ。
「お、マミちゃん。」
勇者、井伊さんがマミちゃんと呼ばれた女の子に手を差し出した。マミちゃんは、俺達を見回してぺこりと頭を下げた。
「越前麻美です。」
「マミちゃんはねぇ。聖女様なんだよ。」
井伊さんがそう言うと、マミちゃんはピクリと肩を撥ねさせた。俯いてモジモジとする。
「そ、そんな大した者では‥‥。」
「職業がぁ『聖女』なのよねぇ~。」
松井が、口を挟んで来た。マミちゃんはコクリと頷いた。
「そ、そうです‥‥。職業が『聖女』って出ただけで、あの‥‥っ」
マミちゃんはオドオドした様子だった。俺も一応名乗った方が良いだろうと思って、自己紹介をした。
「広田桜威です。松井と本木の同級生です。」
「はい‥‥。」
「‥‥。」
‥‥広がらない。また気まずい状態になったと思ったら井伊さんが補足してくれた。マミちゃんは、実は俺達より一つ年上らしい。
栃木で行方不明になっていた中学生の一人のようだ。井伊さんは、千葉の高校生だった。
話が弾まないまま、少しして井伊さん達は宿舎に向かって行った。
「マミちゃん、行こう。じゃあねぇ。」
井伊さんがマミちゃんに手を差し出すと、マミちゃんは井伊さんの手の上に自分の手を重ねた。もう一方の手を振ってから二人で手を繋いで宿舎の方に歩いて行った。
「勇者様」と「聖女様」の二人はもしかして付き合っているんだろうか。
そんな事を考えていたら、松井が不満そうな声を上げた。
「もう~、職業『聖女』ってだけじゃない。あんな地味な娘なのに~。」
松井はほっぺたを膨らませてそう言った後、ちらりと俺の顔を流し目で見た。
「ねぇ~、広田君。広田君はぁ~。華やかな方が良いと思わない?」
「え?‥‥っ!」
戸惑って聞き返してたら、ドンッと本木に体当たりされた。
「広田!おめぇ、絵琉に色目つかってんじゃねぇよ!」
本木が怒りの形相を俺に向けて来た。
「は?」
「いやぁ~ん!アタシのために争わないでぇ~。」
松井は面白そうな顔をしながら身体をクネクネさせた。
「‥‥絵琉!ふざけてないで行くぞ!」
本木が松井の腕をぐいっと引っぱった。
「あ、ちょっと待ってよぅ!」
本木は松井の腕を掴んだままずんずんと宿舎の方に歩いて行ってしまった。松井は腕を引っぱられながら俺に手を振っていた。
「おい!無視すんなよ!」
本木が向かって行こうとした時、レラン地区から来たというその人物と本木の間に、身体の大きな兵士が数人割り込んで来た。
目の前に急に壁が出来て、本木の足が止まった。
「やだぁ~!本木君ったら。」
松井がキャラキャラと笑った。
「勇者様に喧嘩を売ったら大変よぅ~。」
「勇者様‥‥?」
俺は松井の言葉を聞いて、その人物をマジマジとみつめた。
勇者と呼ばれたその人物は、頬にかかった前髪を払うようにさっと首を動かした。
「『勇者様』という程立派じゃないよ。職業が『勇者』なだけさ。」
「勇者様は強いのよぉ~。」
松井はちょっとドヤ顔でそう言うと「勇者様」の腕にしがみついた。本木は不機嫌そうに「勇者様」を睨みつけている。
「勇者様」は松井が腕にしがみついていても、本木が睨みつけていても気にした様子なく、爽やかな笑みを浮かべた。
「僕は井伊秀彦。君達も日本人のようだね。エルの同級生かな。」
「そうよぉ~。本木君とぉ~、広田君っていうの~。」
本木と俺が反応する前に松井が答えてしまう。
武井さんが言っていた「勇者」というのがこの井伊さんの事らしい。
目鼻立ちははっきりしている。外国人の血が混じっているかもしれないけど日本人なんだろう。周りに兵士が沢山いるので、簡単な挨拶くらいしかできない。
「勇者」という立場は優遇されているのか、余裕のある笑みを浮かべている。
挨拶程度では会話が続かないしどうしようと思っていたら、ふと、松井達の後方に誰か立っているのが見えた。
黒髪、色白の人形のような顔立ちの大人しそうな女の子だ。彼女も日本人のようだ。
「お、マミちゃん。」
勇者、井伊さんがマミちゃんと呼ばれた女の子に手を差し出した。マミちゃんは、俺達を見回してぺこりと頭を下げた。
「越前麻美です。」
「マミちゃんはねぇ。聖女様なんだよ。」
井伊さんがそう言うと、マミちゃんはピクリと肩を撥ねさせた。俯いてモジモジとする。
「そ、そんな大した者では‥‥。」
「職業がぁ『聖女』なのよねぇ~。」
松井が、口を挟んで来た。マミちゃんはコクリと頷いた。
「そ、そうです‥‥。職業が『聖女』って出ただけで、あの‥‥っ」
マミちゃんはオドオドした様子だった。俺も一応名乗った方が良いだろうと思って、自己紹介をした。
「広田桜威です。松井と本木の同級生です。」
「はい‥‥。」
「‥‥。」
‥‥広がらない。また気まずい状態になったと思ったら井伊さんが補足してくれた。マミちゃんは、実は俺達より一つ年上らしい。
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話が弾まないまま、少しして井伊さん達は宿舎に向かって行った。
「マミちゃん、行こう。じゃあねぇ。」
井伊さんがマミちゃんに手を差し出すと、マミちゃんは井伊さんの手の上に自分の手を重ねた。もう一方の手を振ってから二人で手を繋いで宿舎の方に歩いて行った。
「勇者様」と「聖女様」の二人はもしかして付き合っているんだろうか。
そんな事を考えていたら、松井が不満そうな声を上げた。
「もう~、職業『聖女』ってだけじゃない。あんな地味な娘なのに~。」
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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