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第20章 広田2
第212話 次の召還儀式
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最初の召還実験に成功し、「勇者」「聖女」と召還して次はいよいよ「賢者」だと期待されたが失敗して現在に至るようだ。
「最近、全然成功していないって聞いてたけど‥‥正直、犠牲者が増えてなくてよかったと思ってたんだ。」
武井さんが、ちょっと疲れたような笑みを見せた。
「でも、次の召還を成功させる為って呼ばれちゃってさ。成功させたくないけど、失敗すると辛い立場なんだよね。」
武井さんは今日の召還を取り仕切っていた魔導士のような役割を次の召還の儀式でする予定のようだ。
「日本人に会えて嬉しいけど、君も辛い立場みたいだね。」
「‥‥はい‥‥。」
そう言われて思わず目の奥が熱くなった。久しぶりに日本語でしゃべった。最初の頃は、「人形」の同級生を見かけたけど最近は神殿の周りで日本人らしい姿も見かけなくなっていた。その事をいうと武井さんが頷いた。
「国境警備に追いやられているらしいよ。」
以前は神殿の魔法陣を囲む役割に、日本人の「人形」兵士も配備されていたそうだ。召還者は「人形」でも比較的魔力が多かったからだそうだ。
でも、一度儀式をすると魔力が溜まらなくなってきてしまい、儀式での役割を果たせなくなったものは別の場所に追いやられてしまったらしい。
だから、今は「やや有能」と言われた俺しか神殿にいなかったのか。あれ、でも本木は?あいつも「やや有能」だったのに。
「戦力として使われている奴らもいるから。」
武井さんが苦々しい様子で言った。
「勇者」「聖女」は既に他国に攻め入る要員とされているそうで、おそらく好戦的な本木も、戦力として配備されているのだろうというのだ。
俺もいつか前線に配備されるのかもしれない。ぞっとするけど。
武井さんは多少は自由に動ける立場らしくて、この国の情報も俺より詳しかった。
この国はオスタリコラル王国。召還の命令を下していた王女アラナ様は、弟王子のティムト殿下と後継者争いをしているらしい。
古代の神殿があったこの神殿地区で、近年、発掘された神殿の床に描かれた魔法陣が見つかり、古文書とともに研究されたところ、
古代には未知なる世界から勇者が召還されて来て、国を脅かす魔王を退治したという伝説と、神殿の魔法陣が紐づけられるということがわかったのだという。
そこで、アラナ王女は勇者召還を成功させ、その戦力をもって近隣諸国を侵略し、その功績で王位に就こうと画策しているとのこと。
俺が逃亡防止で付けられている腕輪や「人形」を作る呪具なんかも発見されたので、呪具を利用して、戦力を制御しようと考えたようだ。
「うーん、あと一週間で次の召還が成功するとは思えないんだけどねぇ。」
武井さんが神殿の方に目を向けながら小さく溜め息をついた。
「え?一週間後って‥‥早くないですか?」
いつもだったら少なくとも1ヶ月は間を置いていたはずだ。しかも最近は準備に時間がかかるっていってもっと間隔が開いていたのに。」
「うーん‥‥、中々成果がでてないから、焦れているみたいだね。
王女に『すぐ結果を出せ』とか『あらゆる手段を試せ』だとか、言われているらしくってね。目処も立たないのに試すのが一ヶ月に一度だと、
時間がかかるだろう。うまくいかない原因がわかってないんだからさ。」
アラナ王女は、当初の目論みでは「賢者」までを召還して戦力を増強させてから、隣の大国であるヴェスタリコラル王国に攻め入るつもりだったらしい。
しかし、召還が成功しなくなり痺れを切らした状態になっていた。そこに、弟王子であるティムト殿下が北の小国の侵略に成功したという知らせがもたらされた。
アラナ王女は早く功績を上げないと、弟が次期国王に確定してしまうと功績を焦っているらしいのだ。
それで、力が蓄えられるまで待つより、今までと違う試みを期間をあけずに実施してみることにしたそうだ。
何か、効果が出そうだったら、改めて力を蓄えてからもう一度実施するということか。
「最近、全然成功していないって聞いてたけど‥‥正直、犠牲者が増えてなくてよかったと思ってたんだ。」
武井さんが、ちょっと疲れたような笑みを見せた。
「でも、次の召還を成功させる為って呼ばれちゃってさ。成功させたくないけど、失敗すると辛い立場なんだよね。」
武井さんは今日の召還を取り仕切っていた魔導士のような役割を次の召還の儀式でする予定のようだ。
「日本人に会えて嬉しいけど、君も辛い立場みたいだね。」
「‥‥はい‥‥。」
そう言われて思わず目の奥が熱くなった。久しぶりに日本語でしゃべった。最初の頃は、「人形」の同級生を見かけたけど最近は神殿の周りで日本人らしい姿も見かけなくなっていた。その事をいうと武井さんが頷いた。
「国境警備に追いやられているらしいよ。」
以前は神殿の魔法陣を囲む役割に、日本人の「人形」兵士も配備されていたそうだ。召還者は「人形」でも比較的魔力が多かったからだそうだ。
でも、一度儀式をすると魔力が溜まらなくなってきてしまい、儀式での役割を果たせなくなったものは別の場所に追いやられてしまったらしい。
だから、今は「やや有能」と言われた俺しか神殿にいなかったのか。あれ、でも本木は?あいつも「やや有能」だったのに。
「戦力として使われている奴らもいるから。」
武井さんが苦々しい様子で言った。
「勇者」「聖女」は既に他国に攻め入る要員とされているそうで、おそらく好戦的な本木も、戦力として配備されているのだろうというのだ。
俺もいつか前線に配備されるのかもしれない。ぞっとするけど。
武井さんは多少は自由に動ける立場らしくて、この国の情報も俺より詳しかった。
この国はオスタリコラル王国。召還の命令を下していた王女アラナ様は、弟王子のティムト殿下と後継者争いをしているらしい。
古代の神殿があったこの神殿地区で、近年、発掘された神殿の床に描かれた魔法陣が見つかり、古文書とともに研究されたところ、
古代には未知なる世界から勇者が召還されて来て、国を脅かす魔王を退治したという伝説と、神殿の魔法陣が紐づけられるということがわかったのだという。
そこで、アラナ王女は勇者召還を成功させ、その戦力をもって近隣諸国を侵略し、その功績で王位に就こうと画策しているとのこと。
俺が逃亡防止で付けられている腕輪や「人形」を作る呪具なんかも発見されたので、呪具を利用して、戦力を制御しようと考えたようだ。
「うーん、あと一週間で次の召還が成功するとは思えないんだけどねぇ。」
武井さんが神殿の方に目を向けながら小さく溜め息をついた。
「え?一週間後って‥‥早くないですか?」
いつもだったら少なくとも1ヶ月は間を置いていたはずだ。しかも最近は準備に時間がかかるっていってもっと間隔が開いていたのに。」
「うーん‥‥、中々成果がでてないから、焦れているみたいだね。
王女に『すぐ結果を出せ』とか『あらゆる手段を試せ』だとか、言われているらしくってね。目処も立たないのに試すのが一ヶ月に一度だと、
時間がかかるだろう。うまくいかない原因がわかってないんだからさ。」
アラナ王女は、当初の目論みでは「賢者」までを召還して戦力を増強させてから、隣の大国であるヴェスタリコラル王国に攻め入るつもりだったらしい。
しかし、召還が成功しなくなり痺れを切らした状態になっていた。そこに、弟王子であるティムト殿下が北の小国の侵略に成功したという知らせがもたらされた。
アラナ王女は早く功績を上げないと、弟が次期国王に確定してしまうと功績を焦っているらしいのだ。
それで、力が蓄えられるまで待つより、今までと違う試みを期間をあけずに実施してみることにしたそうだ。
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