半分異世界

月野槐樹

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第15章 瑛太6

第187話 一年

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江角さんが、お茶を飲んで落ち着いてから、ライアンさんに質問をした。

「あの‥‥、ここらでは米が採れるんですか?」
「最近は採れるようになったよ。」
「最近?」
「君達の仲間が来てからだね。種を提供してくれたから。」
「‥‥種?」

ちょっと理解出来ていない様子だったので、うるち米も餅米も、種籾を圭が準備していたと言ったら、驚愕していた。

「圭君って‥‥なんなの?」
「ちょっと待って、味噌汁あったよね。味噌も?」
「流石圭君。」
「サスケイ‥‥。」
「サスケイ!」

味噌も作り方の記載されたメモが会って作る事が出来たと説明をした。稲から取る麹の記載もあったんだけど、なんと初回限定サービスで、乾燥麹まで入っていた。
おかげで稲が育つのを待たずに味噌造りができたのだ。
とりあえず皆驚いてくれたので大成功かな。
圭ってなんなの?っていう意見には同意するけど。

翌日、3月14日早朝。
張りつめたように冷たい空気はそれでいて澄んでいるように感じる。
まだ薄暗い空を見上げながら一年前の事を考える。

あの日、用事があるから一緒に登校しないと言った圭。
何の用事なのか、もっと突っ込んで聞いていたら、
無理にでも一緒に行こうって言っていたら、今とは違う風景が目の前に広がっていたんだろうか。
もう、起きてしまったことをあれこれ考えても仕方ないのだとは思うけれど色々考えてしまう。

「瑛太、皆集まってくれたよ。」
「ああ、うん。」

藍ちゃんが呼びに来てくれた。俺は先程摘んで来たばかりの花の入った籠を持って歩き出した。

場所は離れの食事室。そんなに広くない場所に結構大勢の人。
召還者メンバーに加えて、ライアンさん一家が来てくれていた。まだ赤ちゃんのケイン君まで一緒だ。
そんなに大々的に行うつもりはなくて、ひっそりと祈ろうと思っていたので、大人数にちょっと焦る。
食事室の端に小さいテーブルを置き、テーブルに布を被せて、蝋燭台を置いて、蝋燭に火を付けた。
線香も何もないので、摘んで来た花を献花する形にした。お供え用に作った饅頭を蝋燭の隣に置いた。
一人ずつ籠から一つ取って台の上に置き、祈るのだ。人数が多いとまるでお通夜のようだけど、遺影も何もない。
蝋燭だけがゆっくりと炎を揺らしている。

一人一人何も言葉を交わさず、花を置いて静かに祈った。イーリアさんが抱っこしているケイン君にディーン君がそっと花を握らせた。

そして手を添えてケイン君にも花を供してもらった。ケイン君も騒いだりしないで大人しくしていてくれている。
全員のお祈りが終わったら終了。皆にお礼を言って、饅頭とお茶を出した。

「こんなに朝早くから圭の為にお集りいただきありがとうございます。」

皆に頭を下げると、皆静かに微笑んでいた。

「ねえ。圭君の写真ってないの?」

お茶を飲んでいる時に、ワイちゃんに聞かれた。
そう聞かれて少し胸が痛む。

「写真とか,持ち歩いてなかったから‥‥。」
「スマホに写真とか残ってたりしない? あ、見せたくなかったら別にいいよ。」
「見せたくないとかでは‥‥。スマホか‥‥。」

写真がなくて遺影も用意できないということが悲しかった。でもスマホの写真の事は考えてなかった。だってここでは印刷もできないし。
スマホの映像でも皆に圭の写真を見てもらうのはいいのかもしれない。

まだソーラーモバイルバッテリーは機能しているから、時々充電している。
スマホに圭の映像、あるかな。学校内ではむやみにスマホを使うの禁止ってなってるから写真取った事ないと思うけど休日の時のとか撮ってたかな‥‥。

俺はスマホを起動した。写真フォルダを見ると、召還者達や家族の映像や動画がずらり。そうだSDカードからコピーしたから、召還者関連で凄い沢山の映像が写真フォルダを占めているんだった。

無数に並んだサムネイルが表示されている画面をスクロールしていくと、圭の写真らしきサムネイルを見つけてタップした。

あれ?動画?
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