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第14章 尾市1
第180話 椎名の決断
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「ああ、ルースは狩猟ギルド員をしているわ。ここ出身の子4人で東地区で暮らしているのよ。」
やはりルースは孤児院を出ていた。狩猟ギルドなら伝言を残せば会えるだろうか。
でも元気そうならそれでいいかな。
孤児院でも、もしルースが来たら伝えてくれるというので、近況を聞きに来ただけと伝えておいた。
狩猟ギルドまで行って伝言を頼む。伝言って名前だけだけど大丈夫なのかな。
ちょっと気になって聞いてみたら、同じ名前の人物が登録している場合は、差出人に心当たりがあるかなどをきいてギルド職員が判断するらしい。
間違っちゃう場合もありえそうだけど、重要な伝言でもないので伝わればラッキーというくらいに考えて伝言とお土産をギルドに預けた。
配達依頼というものがあるのだから、土産物くらいは渡せるだろうと思ったのだ。
伝言で物を渡すというのは前例はないらしいけど、確かに配達依頼のような物だという事で受け付けてくれた。銅貨1枚だけ追加料金を払った。
保管料とか手間賃とか銅貨1枚でいいのかと思ったけど、伝言を渡すついでだし、配達物に比べると凄く少量の物だから銅貨1枚でいいと言われたのだ。
確かに配達するわけでもないから、そんなものなのかな。
土産物は粒マスタードだ。人気商品って話だったしね。
出発の日の前日の夜に椎名と柊さんと一緒に夕食を食べた。
宿で出される夕食についてくるパンも今はすっかりフカフカのパンが定番になっている。
宿ではフカフカパン発祥の地とか宣伝していて、食事も人気が出ていた。
街中のパン屋も、今はフカフカパンが主流になってきているそうだ。でも旅とかではカチカチパンの方が日持ちするということでカチカチパンも完全に廃れるということはなく、保存食的な扱いで、地位を保っていた。
ソーセージの入ったポトフに添えられたパンを千切って椎名がしみじみとして言った。
「このパンが当たり前になるって嬉しいよ。本当。」
「以前はカチカチパンだけだったってマジなの?」
柊さんが信じられないという様子で、パンを手にとって眺めた。
柊さんが救出された頃は丁度パンを売り出し始めた頃だったんだよな。
「カチカチはカチカチでスープに浸して食べる分にはそんなに抵抗なかったんだよ。」
「そうなんだ。でもカチカチパンだとソーセージパンに出来ないよなぁ。」
柊さんはこの街の食べ物だとやっぱりソーセージパンが気に入っているという。
パンがフワフワになれば、他の具材でサンドイッチなんかも出来そうなんだけど、そもそも季節によっては野菜はほぼ出回らなかったりしていて
他の具材のパンはあまり発売されていないらしい。
近々商会ではジャムパンを売り出すらしいけどね。ジャムパンと言っても、パンの中にジャムがどろりと出てくるタイプじゃなくて、
パンに切れ目を淹れてジャムを塗ったものらしい。それでも人気が出るような気がする。
「そうだ。俺、開拓村に行く事にした。」
椎名がパンを一度更に置いて、俺の顔を見て言った。
「おー、そうか。‥‥ロッシュさんには?」
「伝えた。OKもらったよ。柊さんも行くってさ。」
柊さんが指を顔の横に二本立て、ピースサインをした。
「OKもらったんなら良かった。アパートは?」
「管理人のおばちゃんには伝えた。元々月更新だったから、更新しないで鍵返せばいいらしいんだ。」
「マンスリーマンションみたいな感じなんだな。‥‥でも、迷ってたみたいなのに、何か決め手があった?」
「それはさ。柊さんと話し合ったからって言えばそれだけなんだけど‥‥。このままの生活じゃあ、将来不安だなと思って。
だいぶ狩りとか出来るようにはなって来たけど、怪我したり、病気したら家賃払えなくなって追い出されかねない生活なんだよね。今って。
開拓村で農業も大変そうだけど仲間もいるだろ。何か生活変えたいなら、行った方がいいかなと思ってさ。」
「そっか。じゃあ、これからよろしく。」
「ああ、よろしく。」
「よろしく。」
宿の人にミント水を頼んでそれで乾杯をした。
やはりルースは孤児院を出ていた。狩猟ギルドなら伝言を残せば会えるだろうか。
でも元気そうならそれでいいかな。
孤児院でも、もしルースが来たら伝えてくれるというので、近況を聞きに来ただけと伝えておいた。
狩猟ギルドまで行って伝言を頼む。伝言って名前だけだけど大丈夫なのかな。
ちょっと気になって聞いてみたら、同じ名前の人物が登録している場合は、差出人に心当たりがあるかなどをきいてギルド職員が判断するらしい。
間違っちゃう場合もありえそうだけど、重要な伝言でもないので伝わればラッキーというくらいに考えて伝言とお土産をギルドに預けた。
配達依頼というものがあるのだから、土産物くらいは渡せるだろうと思ったのだ。
伝言で物を渡すというのは前例はないらしいけど、確かに配達依頼のような物だという事で受け付けてくれた。銅貨1枚だけ追加料金を払った。
保管料とか手間賃とか銅貨1枚でいいのかと思ったけど、伝言を渡すついでだし、配達物に比べると凄く少量の物だから銅貨1枚でいいと言われたのだ。
確かに配達するわけでもないから、そんなものなのかな。
土産物は粒マスタードだ。人気商品って話だったしね。
出発の日の前日の夜に椎名と柊さんと一緒に夕食を食べた。
宿で出される夕食についてくるパンも今はすっかりフカフカのパンが定番になっている。
宿ではフカフカパン発祥の地とか宣伝していて、食事も人気が出ていた。
街中のパン屋も、今はフカフカパンが主流になってきているそうだ。でも旅とかではカチカチパンの方が日持ちするということでカチカチパンも完全に廃れるということはなく、保存食的な扱いで、地位を保っていた。
ソーセージの入ったポトフに添えられたパンを千切って椎名がしみじみとして言った。
「このパンが当たり前になるって嬉しいよ。本当。」
「以前はカチカチパンだけだったってマジなの?」
柊さんが信じられないという様子で、パンを手にとって眺めた。
柊さんが救出された頃は丁度パンを売り出し始めた頃だったんだよな。
「カチカチはカチカチでスープに浸して食べる分にはそんなに抵抗なかったんだよ。」
「そうなんだ。でもカチカチパンだとソーセージパンに出来ないよなぁ。」
柊さんはこの街の食べ物だとやっぱりソーセージパンが気に入っているという。
パンがフワフワになれば、他の具材でサンドイッチなんかも出来そうなんだけど、そもそも季節によっては野菜はほぼ出回らなかったりしていて
他の具材のパンはあまり発売されていないらしい。
近々商会ではジャムパンを売り出すらしいけどね。ジャムパンと言っても、パンの中にジャムがどろりと出てくるタイプじゃなくて、
パンに切れ目を淹れてジャムを塗ったものらしい。それでも人気が出るような気がする。
「そうだ。俺、開拓村に行く事にした。」
椎名がパンを一度更に置いて、俺の顔を見て言った。
「おー、そうか。‥‥ロッシュさんには?」
「伝えた。OKもらったよ。柊さんも行くってさ。」
柊さんが指を顔の横に二本立て、ピースサインをした。
「OKもらったんなら良かった。アパートは?」
「管理人のおばちゃんには伝えた。元々月更新だったから、更新しないで鍵返せばいいらしいんだ。」
「マンスリーマンションみたいな感じなんだな。‥‥でも、迷ってたみたいなのに、何か決め手があった?」
「それはさ。柊さんと話し合ったからって言えばそれだけなんだけど‥‥。このままの生活じゃあ、将来不安だなと思って。
だいぶ狩りとか出来るようにはなって来たけど、怪我したり、病気したら家賃払えなくなって追い出されかねない生活なんだよね。今って。
開拓村で農業も大変そうだけど仲間もいるだろ。何か生活変えたいなら、行った方がいいかなと思ってさ。」
「そっか。じゃあ、これからよろしく。」
「ああ、よろしく。」
「よろしく。」
宿の人にミント水を頼んでそれで乾杯をした。
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