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第14章 尾市1
第173話 同級生と再会
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そんな事を言いながら歩いていると、後方に遠ざかった屋台の方でチリンチリンとベルの音がした。
「マスタード入荷しました~。今から販売分はマスタードがつくよ!」
先程のソーセージパン売りのおじさんが大きな声で言っている。
「ああ、惜しかったネ。」
「ですね。」
マスタードが入荷したのは、俺達が乗って来た商会の馬車が運んで来たからだ。
それが分かってるので屋台のおじさんの宣伝で人が集まってくるのが、なんだか嬉しい。
遠くから行列に成って行くのを眺め、最後の一口を呑み込んだ。
「シイナ様ですか?」
狩猟ギルドに伝言を頼もうとしたら、窓口の女性が首を傾げた。
「え、居ないですか?」
他の街に行ってしまった?
焦る。連絡つかないかもしれない?それじゃ椎名は何処に?
どうしようかと思っていたら、受付の女性が伝言用のボードを差し出した。
「ギルド員の滞在の有無はお教えできないんですよ。でも該当するお名前の方がいらしたら伝言はお渡しします。」
伝言料は通常銅貨5枚で狩猟ギルドの身分証があると銅貨2枚だそうだ。
俺は狩猟ギルドの身分証を胸元から出した。その時自分の身分証の文字に目がとまる。
「あ、俺は『ビー』。‥‥そうかアルファベットだった。」
全員登録名をアルファベット一文字の音の通称にしたって事を失念していた。
「すみません。名前を間違って覚えてました。伝言をシーさんに。」
なんとか三日後の昼まではこの街の宿に滞在するというメッセージを預ける事ができた。
彼がその期間中に狩猟ギルドに訪れていれば伝わるはずだ。
俺が銅貨2枚払って手続きをしている間にシグマさんも依頼達成報告を済ませたようだった。
手続きが終わった後、狩猟ギルド内のフロアを見回す。偶然、知っている奴に会ったりしないかと少し期待をしてだ。
しかしそんな都合良くはいかないようで、時間帯的な影響なのか人数自体がまばらで、知っている顔は見かけなかった。
狩猟ギルドを出て、教えてもらった江角さんと柄舟さんの住居を目指す。狩猟ギルドで伝言を残してもよかったのかもしれないけど
せっかく連絡先を聞いたのだから、直接行ってみようと思ったのだ。
江角さんと柄舟さんは東地区のアパートに住んでいるという。住所が書かれたメモを片手に歩き出して、ふと思う。
「住所知ったからっていきなり訪ねて行くのって、大丈夫なのか?」
日本に居たら、メールや電話で連絡するよね。
そう思って呟いたら、シグマさんが「先触れでも出ス?」と聞いて来た。
誰かに先に行って連絡してもらう?誰に?シグマさん?それは恐れ多いよ。
ちょっと考えたけど良い考えが浮かばないのでとりあえず行ってみることにした。
東地区に足を踏み入れると以前来た時の印象と変わらず、ぴりりと張りつめた雰囲気があった。
通りの名前は、建物の壁をよく見ると書いてある。所々掠れたりして読み難いのだけど、何とか進んで歩いていたら声をかけられた。
「あれ?尾市?」
振り向くと知っている顔‥‥。オールバックにちょんまげスタイル。前髪上げてるけど同級生の重盛弘樹だ。それと‥‥知らないけど日本人っぽい男性。背が高くてひょろっとしてるけどちょっと年上かな?
「重盛?」
「やっぱり尾市?すげー日焼けしてるから似てるけど別人かもと思ったよ。」
「重盛も髪型違うから、一瞬ちょっと迷ったよ。」
「ああ、散髪出来ねぇからな。」
重盛はそう言うと自分の頭を撫で上げた。まあ、それは理解できる。鋏自体が手に入り難いし、性能もよくないんだ。
散髪屋はあるけど、ナイフみたいなのでざっと切る感じで怖い。
ちなみに俺は開拓村の仲間同士でカットし合っている。女子達の方が散髪は得意みたいなので,主にカットしてもらう側ではあるけどね。
鋏はね。圭君由来の奴と,実は藍ちゃんも持ってたんだ。普通の文房具の鋏だけど。
だから俺は、少し髪が伸びた程度だ。でも、今日まで旅してたからかなりボサボサな状態だ。
「マスタード入荷しました~。今から販売分はマスタードがつくよ!」
先程のソーセージパン売りのおじさんが大きな声で言っている。
「ああ、惜しかったネ。」
「ですね。」
マスタードが入荷したのは、俺達が乗って来た商会の馬車が運んで来たからだ。
それが分かってるので屋台のおじさんの宣伝で人が集まってくるのが、なんだか嬉しい。
遠くから行列に成って行くのを眺め、最後の一口を呑み込んだ。
「シイナ様ですか?」
狩猟ギルドに伝言を頼もうとしたら、窓口の女性が首を傾げた。
「え、居ないですか?」
他の街に行ってしまった?
焦る。連絡つかないかもしれない?それじゃ椎名は何処に?
どうしようかと思っていたら、受付の女性が伝言用のボードを差し出した。
「ギルド員の滞在の有無はお教えできないんですよ。でも該当するお名前の方がいらしたら伝言はお渡しします。」
伝言料は通常銅貨5枚で狩猟ギルドの身分証があると銅貨2枚だそうだ。
俺は狩猟ギルドの身分証を胸元から出した。その時自分の身分証の文字に目がとまる。
「あ、俺は『ビー』。‥‥そうかアルファベットだった。」
全員登録名をアルファベット一文字の音の通称にしたって事を失念していた。
「すみません。名前を間違って覚えてました。伝言をシーさんに。」
なんとか三日後の昼まではこの街の宿に滞在するというメッセージを預ける事ができた。
彼がその期間中に狩猟ギルドに訪れていれば伝わるはずだ。
俺が銅貨2枚払って手続きをしている間にシグマさんも依頼達成報告を済ませたようだった。
手続きが終わった後、狩猟ギルド内のフロアを見回す。偶然、知っている奴に会ったりしないかと少し期待をしてだ。
しかしそんな都合良くはいかないようで、時間帯的な影響なのか人数自体がまばらで、知っている顔は見かけなかった。
狩猟ギルドを出て、教えてもらった江角さんと柄舟さんの住居を目指す。狩猟ギルドで伝言を残してもよかったのかもしれないけど
せっかく連絡先を聞いたのだから、直接行ってみようと思ったのだ。
江角さんと柄舟さんは東地区のアパートに住んでいるという。住所が書かれたメモを片手に歩き出して、ふと思う。
「住所知ったからっていきなり訪ねて行くのって、大丈夫なのか?」
日本に居たら、メールや電話で連絡するよね。
そう思って呟いたら、シグマさんが「先触れでも出ス?」と聞いて来た。
誰かに先に行って連絡してもらう?誰に?シグマさん?それは恐れ多いよ。
ちょっと考えたけど良い考えが浮かばないのでとりあえず行ってみることにした。
東地区に足を踏み入れると以前来た時の印象と変わらず、ぴりりと張りつめた雰囲気があった。
通りの名前は、建物の壁をよく見ると書いてある。所々掠れたりして読み難いのだけど、何とか進んで歩いていたら声をかけられた。
「あれ?尾市?」
振り向くと知っている顔‥‥。オールバックにちょんまげスタイル。前髪上げてるけど同級生の重盛弘樹だ。それと‥‥知らないけど日本人っぽい男性。背が高くてひょろっとしてるけどちょっと年上かな?
「重盛?」
「やっぱり尾市?すげー日焼けしてるから似てるけど別人かもと思ったよ。」
「重盛も髪型違うから、一瞬ちょっと迷ったよ。」
「ああ、散髪出来ねぇからな。」
重盛はそう言うと自分の頭を撫で上げた。まあ、それは理解できる。鋏自体が手に入り難いし、性能もよくないんだ。
散髪屋はあるけど、ナイフみたいなのでざっと切る感じで怖い。
ちなみに俺は開拓村の仲間同士でカットし合っている。女子達の方が散髪は得意みたいなので,主にカットしてもらう側ではあるけどね。
鋏はね。圭君由来の奴と,実は藍ちゃんも持ってたんだ。普通の文房具の鋏だけど。
だから俺は、少し髪が伸びた程度だ。でも、今日まで旅してたからかなりボサボサな状態だ。
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