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第13章 瑛太5
第168話 桜餅
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藍ちゃんについていって、居住している領主邸の離れの食堂に行くと、ディーン君が来ているのが見えた。赤ちゃんを抱えている。
「やあ。お呼ばれしたよ。故郷のお菓子なんだって?」
「そうなんです。本当はこの季節に咲く、桜という木の葉っぱをまくものなんですけど、それはないので違う葉っぱを巻いています。葉っぱは食べないでくださいね。」
藍ちゃんが説明している。桜の葉っぱの代わりに何か別の葉っぱを適当な大きさに切ったもので巻いていた。
作った桜餅は長命寺ってやつ?もっちりした焼いた生地で餡子をまいたもので、道明寺じゃない方。
「そうなんだね。サクラという木の葉は、何か特別なのかい?」
ディーン君が椅子に腰を下ろし、膝にケイン君を乗せて、ケイン君の肩越しに手を伸ばして、桜餅を手にとった。あ、ケイン君も手をのばしてる。もう固形物食べても大丈夫なんだっけ?
「ああーん!」
ディーン君が手を高く持ち上げたら、ケイン君が届かなくて、不満そうな声を上げた。
ディーン君はニコニコしながら、桜餅を少し千切って食べてみた後に、また少し千切ってケイン君の顔の前に持って来た。
パクっとケイン君がかぶりつく。仕草が可愛いな。
「ふふ。美味しいかい?ケイン。」
ケイン君がきゃっきゃと笑って、ディーン君の持っている桜餅をつかもうとする。ディーン君がもう一口あげるとそれを食べて満足そうな顔をした。
「はー、かわいい‥‥。」
「ねー。」
藍ちゃんとワイちゃんがちょっと微笑ましげに見ている。
「あ、桜は、日本国民にとっても愛されている花なんです。白っぽいとても美しい花で‥‥お見せしたかったです!」
藍ちゃんがハッとして答えた。うん。桜はちょっと特別な感じがあるよな。
圭の用意した種の中に桜の種もあったらよかったんだけど‥‥。
‥‥‥桜‥‥探したっけ?
いくらなんでも桜の種はないよな。‥‥絶対必要ってもんでもないし‥‥。でも‥‥圭だよ?
‥‥後で見てみよう。うん。
「あら?ケイン君って泣きぼくろがあるぅ。セクシー!」
真希さんがディーン君からケイン君を受け取って抱っこしている。ワイちゃんがケイン君の顔を覗き込んで歓声をあげていた。
藍ちゃんも近付いて行って一緒に見ていた。
「あ、本当だ!ケイン君の泣きぼくろ。圭君と一緒。ねえ、瑛太?」
藍ちゃんが俺の方を振り向いた。
見に行ってみると、ケイン君の左目の目尻の下の辺りにうっすらと茶色いホクロがあった。
確かに、圭も左に泣きぼくろがあったな。
「ほんとだ。圭のと同じ位置だね。」
「流石ケイン君。サスケイ!」
ワイちゃんが楽しそうに言った。ケインくんがニコッと笑った。何が流石なのか今ひとつ分からないけど、愛くるしいケイン君についてのちょっとした発見は、みんなをほっこりさせるんだよね。」
「あーいー!」
「あ、今ワイちゃんの名前呼んだ!」
「ちがうよ藍って言ったよ。」
「マキちゃんって呼んで~。」
アイドル状態のケイン君は、女子に囲まれてもニコニコしてる。
平和だなー、とこちらもちょっと肩の力が抜ける。
椅子に腰を下ろして、桜餅を手にとって口にした。
桜の香りはしないけど、モッチリと柔らかい食感と甘さ控えめの餡子の甘さが、じんわりくる。
ふと、人数が足りないことを感じて部屋を見渡した。
「尾市さんて、そろそろ帰ってくるかな?」
「うーん、そうだねぇ。順調ならそろそろかな。」
緒方さんが、目線を壁にかけられたカレンダーに向けて言った。
尾市さんは、国境付近の街まで行く商隊に付いて行っている。商隊の本来の目的は交易品の運搬と情報収集らしいのだが
尾市さんは椎名さんの状況が気になって様子を見に行くことになったんだ。
「やあ。お呼ばれしたよ。故郷のお菓子なんだって?」
「そうなんです。本当はこの季節に咲く、桜という木の葉っぱをまくものなんですけど、それはないので違う葉っぱを巻いています。葉っぱは食べないでくださいね。」
藍ちゃんが説明している。桜の葉っぱの代わりに何か別の葉っぱを適当な大きさに切ったもので巻いていた。
作った桜餅は長命寺ってやつ?もっちりした焼いた生地で餡子をまいたもので、道明寺じゃない方。
「そうなんだね。サクラという木の葉は、何か特別なのかい?」
ディーン君が椅子に腰を下ろし、膝にケイン君を乗せて、ケイン君の肩越しに手を伸ばして、桜餅を手にとった。あ、ケイン君も手をのばしてる。もう固形物食べても大丈夫なんだっけ?
「ああーん!」
ディーン君が手を高く持ち上げたら、ケイン君が届かなくて、不満そうな声を上げた。
ディーン君はニコニコしながら、桜餅を少し千切って食べてみた後に、また少し千切ってケイン君の顔の前に持って来た。
パクっとケイン君がかぶりつく。仕草が可愛いな。
「ふふ。美味しいかい?ケイン。」
ケイン君がきゃっきゃと笑って、ディーン君の持っている桜餅をつかもうとする。ディーン君がもう一口あげるとそれを食べて満足そうな顔をした。
「はー、かわいい‥‥。」
「ねー。」
藍ちゃんとワイちゃんがちょっと微笑ましげに見ている。
「あ、桜は、日本国民にとっても愛されている花なんです。白っぽいとても美しい花で‥‥お見せしたかったです!」
藍ちゃんがハッとして答えた。うん。桜はちょっと特別な感じがあるよな。
圭の用意した種の中に桜の種もあったらよかったんだけど‥‥。
‥‥‥桜‥‥探したっけ?
いくらなんでも桜の種はないよな。‥‥絶対必要ってもんでもないし‥‥。でも‥‥圭だよ?
‥‥後で見てみよう。うん。
「あら?ケイン君って泣きぼくろがあるぅ。セクシー!」
真希さんがディーン君からケイン君を受け取って抱っこしている。ワイちゃんがケイン君の顔を覗き込んで歓声をあげていた。
藍ちゃんも近付いて行って一緒に見ていた。
「あ、本当だ!ケイン君の泣きぼくろ。圭君と一緒。ねえ、瑛太?」
藍ちゃんが俺の方を振り向いた。
見に行ってみると、ケイン君の左目の目尻の下の辺りにうっすらと茶色いホクロがあった。
確かに、圭も左に泣きぼくろがあったな。
「ほんとだ。圭のと同じ位置だね。」
「流石ケイン君。サスケイ!」
ワイちゃんが楽しそうに言った。ケインくんがニコッと笑った。何が流石なのか今ひとつ分からないけど、愛くるしいケイン君についてのちょっとした発見は、みんなをほっこりさせるんだよね。」
「あーいー!」
「あ、今ワイちゃんの名前呼んだ!」
「ちがうよ藍って言ったよ。」
「マキちゃんって呼んで~。」
アイドル状態のケイン君は、女子に囲まれてもニコニコしてる。
平和だなー、とこちらもちょっと肩の力が抜ける。
椅子に腰を下ろして、桜餅を手にとって口にした。
桜の香りはしないけど、モッチリと柔らかい食感と甘さ控えめの餡子の甘さが、じんわりくる。
ふと、人数が足りないことを感じて部屋を見渡した。
「尾市さんて、そろそろ帰ってくるかな?」
「うーん、そうだねぇ。順調ならそろそろかな。」
緒方さんが、目線を壁にかけられたカレンダーに向けて言った。
尾市さんは、国境付近の街まで行く商隊に付いて行っている。商隊の本来の目的は交易品の運搬と情報収集らしいのだが
尾市さんは椎名さんの状況が気になって様子を見に行くことになったんだ。
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