167 / 305
第13章 瑛太5
第166話 命名
しおりを挟む
「ほう~、これが異世界の料理なのか。」
お会いした侯爵様は、思ったより屈強そうな雰囲気だった。「敏腕社長」みたいなイメージでいたんだけど「将軍」って感じ?
青い鋭い瞳を俺に向けて来た。
「君がこの料理のレシピをもたらしたと聞いたが。料理の知識が豊富なのかね。」
「俺というより、圭が‥‥従兄弟の持っていたレシピからなんです。」
「ああ、亡くなったという少年か‥‥。オスタリコラルも酷い事をしたものだね。」
「‥‥。」
圭の事を話すと、未だに目の奥とか鼻の奥とかが熱くなってきてしまう。それを察したのか藍ちゃんがそっと背中に手を添えてくれた。
「その少年は素晴らしいレシピを我が国にもたらせてくれたのだね。この色鮮やかなソースも?」
「あ、はい。圭が野菜の種を持っていたので。栽培方法も書き残してくれていて。」
「なんということだ。豊富な知識を持っていたであろうに。本当に惜しいことだ。」
侯爵様は、悲しげな顔をして頷いた後、スプーンを手にしてスープを飲み始めた。
食事中は、あまり重苦しい話題にしないようにという配慮なのか、こちらの国の食事情だとか、イグレック領にできたベーコンドックの店の繁盛ぶりなどが
話題となった。
「あの『粒マスタード』というものが非常に気に入っていてね。焼いた肉には必ず添えているよ。長男のロアンも嵌っていたよ。
長男一家も来れれば、この料理にも嵌っただろうなぁ。」
侯爵様が話をしている間、イーリアさんの奥様は黙って微笑んでいる。イーリアさんにはお兄さんがいるそうだけど、今回は留守番だそうだ。
一家で来たいけど、跡継ぎだから留守番して領地を守っているらしい。
侯爵夫妻は食事に凄く満足してくれたようだった。
「大変美味であった。異世界の食というものは興味深いな。それに、食材もだ。
短期間の間に、これほど美味な食材を生産するようになるとは思っていなかったよ。
なんと言っても砂糖だな。国内で生産出来るようになった功績は大きい。来期の議会で推薦をしておこう。」
侯爵様は最後にチラリとライアンさんの方を見た。
「義父上‥‥。それは‥‥。」
「議会で通れば昇爵となるだろう。今後も期待をしておるぞ。」
「はっ。ご尽力感謝いたします!」
食事を終えた後の席で、そろそろ退散させてもらおうと思っていたんだけど、侯爵様とライアンさんが何か重要そうなことを話してる。
昇爵って、爵位が上がるの?
食事が美味しかったから?いや、さすがにそれはないか。
会話が途切れないと退散する挨拶もできないので、少し待っていると侯爵様がニコニコして俺達の方を見た。
「数々の製法と食材をもたらした君の従兄弟の名はなんと言ったかね。」
侯爵様が俺を見て言う。
「え‥‥、圭‥‥ケイといいます。」
「ケイ、か。ライアン、候補の名前に近い名がなかったかね?」
侯爵様がライアンさんの方に手を差し出した。
「はい‥‥。この中ですと『ケイン』でしょうか。」
ライアンさんが懐から筒状に丸めた羊皮紙を出して広げ,侯爵様に見せた。
「うむ。大いなる知識をこの地にもたらした者の名にあやかるのはどうかな。」
「はっ。ご命名感謝いたします!」
ライアンさんとイーリアさんが侯爵様に頭を下げた。ディーン君とジーナちゃんも遅れて頭を下げている。
どうやら、産まれた赤ちゃんの名前の候補の中から侯爵様が名前を選んだらしい。この国では、候補の中から当主だとか祖父母が名前を選ぶという事がよく有るらしい。
親が決められないの?って思うけど、親は候補を挙げているし、もしもどうしても親が決めたい場合は候補を一つだけにすればいいんだって。まあ、そうか。
そして明日命名式が行われるんだそうだ。
侯爵様が尋ねて来たのは、命名式に出席する為でもあったんだって。
お会いした侯爵様は、思ったより屈強そうな雰囲気だった。「敏腕社長」みたいなイメージでいたんだけど「将軍」って感じ?
青い鋭い瞳を俺に向けて来た。
「君がこの料理のレシピをもたらしたと聞いたが。料理の知識が豊富なのかね。」
「俺というより、圭が‥‥従兄弟の持っていたレシピからなんです。」
「ああ、亡くなったという少年か‥‥。オスタリコラルも酷い事をしたものだね。」
「‥‥。」
圭の事を話すと、未だに目の奥とか鼻の奥とかが熱くなってきてしまう。それを察したのか藍ちゃんがそっと背中に手を添えてくれた。
「その少年は素晴らしいレシピを我が国にもたらせてくれたのだね。この色鮮やかなソースも?」
「あ、はい。圭が野菜の種を持っていたので。栽培方法も書き残してくれていて。」
「なんということだ。豊富な知識を持っていたであろうに。本当に惜しいことだ。」
侯爵様は、悲しげな顔をして頷いた後、スプーンを手にしてスープを飲み始めた。
食事中は、あまり重苦しい話題にしないようにという配慮なのか、こちらの国の食事情だとか、イグレック領にできたベーコンドックの店の繁盛ぶりなどが
話題となった。
「あの『粒マスタード』というものが非常に気に入っていてね。焼いた肉には必ず添えているよ。長男のロアンも嵌っていたよ。
長男一家も来れれば、この料理にも嵌っただろうなぁ。」
侯爵様が話をしている間、イーリアさんの奥様は黙って微笑んでいる。イーリアさんにはお兄さんがいるそうだけど、今回は留守番だそうだ。
一家で来たいけど、跡継ぎだから留守番して領地を守っているらしい。
侯爵夫妻は食事に凄く満足してくれたようだった。
「大変美味であった。異世界の食というものは興味深いな。それに、食材もだ。
短期間の間に、これほど美味な食材を生産するようになるとは思っていなかったよ。
なんと言っても砂糖だな。国内で生産出来るようになった功績は大きい。来期の議会で推薦をしておこう。」
侯爵様は最後にチラリとライアンさんの方を見た。
「義父上‥‥。それは‥‥。」
「議会で通れば昇爵となるだろう。今後も期待をしておるぞ。」
「はっ。ご尽力感謝いたします!」
食事を終えた後の席で、そろそろ退散させてもらおうと思っていたんだけど、侯爵様とライアンさんが何か重要そうなことを話してる。
昇爵って、爵位が上がるの?
食事が美味しかったから?いや、さすがにそれはないか。
会話が途切れないと退散する挨拶もできないので、少し待っていると侯爵様がニコニコして俺達の方を見た。
「数々の製法と食材をもたらした君の従兄弟の名はなんと言ったかね。」
侯爵様が俺を見て言う。
「え‥‥、圭‥‥ケイといいます。」
「ケイ、か。ライアン、候補の名前に近い名がなかったかね?」
侯爵様がライアンさんの方に手を差し出した。
「はい‥‥。この中ですと『ケイン』でしょうか。」
ライアンさんが懐から筒状に丸めた羊皮紙を出して広げ,侯爵様に見せた。
「うむ。大いなる知識をこの地にもたらした者の名にあやかるのはどうかな。」
「はっ。ご命名感謝いたします!」
ライアンさんとイーリアさんが侯爵様に頭を下げた。ディーン君とジーナちゃんも遅れて頭を下げている。
どうやら、産まれた赤ちゃんの名前の候補の中から侯爵様が名前を選んだらしい。この国では、候補の中から当主だとか祖父母が名前を選ぶという事がよく有るらしい。
親が決められないの?って思うけど、親は候補を挙げているし、もしもどうしても親が決めたい場合は候補を一つだけにすればいいんだって。まあ、そうか。
そして明日命名式が行われるんだそうだ。
侯爵様が尋ねて来たのは、命名式に出席する為でもあったんだって。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる