半分異世界

月野槐樹

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第13章 瑛太5

第164話 上がる開拓意欲

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とはいえ油が生産できるようになったら、作れる料理の種類も増えるし、石鹸も作れる。石鹸とか作ってみたかったんだけど、植物油が手に入らなくて着手できてなかったんだよ。市場で売られている魔獣の脂とかだと臭そうだったし。

こんなの作りたい物がどんどん出来たら畑がいくらあっても足りなくなるんじゃないか?
目の前に広がる固そうな大地をどういう風に耕してやろうかと考えながら俺は辺りを見回した。

一度自室に戻って引きこもり、圭の異世界ガイドノートを取り出した。
ガイドノートには、色々な植物の栽培方法や利用方法が書かれていた。
思っていたんだよ。味噌や醤油の作り方が書いてあっても、大豆の育て方まで書いてあっても、大豆が手に入らないとだめじゃないかとか。
麹はどうするんだよ、とか。
綿花から糸を紡いで旗を織るとか書いてあるけど,綿花はどうやって手にいれるのかとか、藍染めの藍ってどうやって入手するんだとか。

ありましたよ。種。それも沢山!

栽培法が書かれているものは少しずつ種が用意されていたんだよ。

大豆、綿花、ひまわりの種、藍、大葉、トマト、茄子、キュウリ、カボチャ、大根。茶の種なんてものもある。それと米!うるち米と餅米って!
小麦まで? 薄力粉用と強力粉用? 甜菜‥‥。てん菜糖作るの?砂糖を?

あ、甜菜からてん菜糖作る方法も書いてある‥‥。

これ全部育てたら、この領、すごく発展出来ちゃうんじゃ?

一瞬テンションがムキムキと爆上がりしたけど‥‥、そうはいっても、この土地の気候や土で、育つかどうかもわからないんだよな。一旦落ち着こう‥‥。
まずは栽培時期を逃さないように、今種まきできるもののピックアップか。それと土造りだよな。

俺は暫く部屋に籠って異世界ガイドノートの栽培の箇所の熟読からやり直す事にした。

*****************************************

金色に輝く稲穂を眺めながら感慨にふける。
藍ちゃんは少し不安げに何度も穂の状態を確認している。ワイちゃんは、感極まって泣き出している。
尾市さんは早く刈り取りたくて鎌を持って身構えているし、真希さんは嬉しそうに笑ってる。
普段落ち着いている緒方さんがちょっと落ち着きなく周囲を見回している。

「これ、次に植える種籾分を含んでるからな!絶対全部食べたらダメだぞ!絶対だぞ!」
「緒方さん、フラグっぽい言い方止めてください。」

圭が用意してくれていた種籾は、そんなに量が多いわけじゃないから、見渡す限り一面全部が田んぼというほどではない。
土とかの環境も技術も道具も不十分な上に、異世界という不確定要素も加わって、どうなるかわからなかったが何とか収穫時期を迎える事ができた。
圭の用意していた「種セット」を皆に見せた時の反応は凄かった。

「何故そんなものが?」「事前に察知してたの?」とか詰め寄られても、俺もよくわからないし、こんなものがあったのに気がついたのも最近なんだ。
圭の謎バッグの事には言わずに、鞄の奥底に遭った物を発見したとだけ言っておいた。
ワイちゃんがしきりに「サスケイ!サスケイ!」って言っていた。

今までも、弁当だとか石鹸だとかちょくちょく色々出て来ていたせいか、あまり深くは追求されなかった。
圭ならあり得るみたいな雰囲気になってきている。

ともかく育ててみようということで、それまでほとんど魔法の練習場と化していた畑が、もの凄い勢いで耕作される流れとなった。
特に皆のモチベーションを高めていたのは、やはり米だった。
しかしそれ以外の数多くの野菜の種も、食生活を豊かにする意欲を満たすには充分だった。

土魔法、水魔法以外でも耕作道具を作成したり、肥料の調達に走り回ったりした。
やはり、異世界だからなのか、魔法で耕した土が何か作用するのか、驚く程の勢いで成長する作物もあったけど、
米は約半年かかった。地球で育てるのと同じくらいなんじゃないかと思う。

収穫後に10日程乾燥させて脱穀。
収穫した米の半分は種籾に取っておいて、半分を食糧とすることにみんなで話し合って決めた。
決めておかないと、あっという間に食べ切ってしまうくらいの量しかない。
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