半分異世界

月野槐樹

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第13章 瑛太5

第161話 開拓村と生活魔法

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「出た!水!出たよ!」
「おめでとー!」
「あ!こら!水のついた手を振り回すなよ!」
「ははは!」

国境近くの街から馬車に乗った俺達は一度、イグレック侯爵邸のある侯爵領の領都に行った。そこで数日滞在した後、再び馬車に乗って、ライアンさんの領地である開拓村‥‥のような場所にたどり着いた。

来てみて分かった。確かに田舎だ。
一応領地内には他にも元々人が住んでいる村がいくつもある。
到着した村は領地の中でも一番大きい、というか土地が広い場所のようだ。石や草で一杯の畑とは呼べないような土地の向こうに森が見える。
さらにその向こうには山があった。山の向こうには南側の国境があるらしい。

この未開発の土地に連れて来られた
俺達に最初に要望されたことは開墾‥‥ではなく、パン造りだった。

ライアンさん達領主一家と使用人達用にパンを焼く事で給料が貰え、屋敷に住んで厨房も使わせてもらうことができた。
その上、パン屋を経営して村の人達等に販売をすることと、専用の農地で色々な植物を育ててみたり、物造りをしたりしてもいいと言われた。

屋敷住まいと言っても離れだけど。かなり優遇された条件なんじゃないかと思う。
パン以外の事で忙しくなって来たら、人を雇ってパンを焼いても構わないという。
領地までの移動の旅の間に、燻製をしてベーコンを作ったりしていたので、パン以外でも領地に有益なことならやって欲しいと思われたようだった。
ベーコンの製法も道中の商業ギルドに申請しておいた。

領地に付くまでの道中、皆で魔法の練習をした。
この国では、魔法は貴族の子息子女が小さい頃から家庭教師に習って体得するものらしい。

魔力自体は持ってても発動するのに技術が必要で、独学では中々難しいのだという。だから、魔法を使うのはほとんどは貴族とのことだ。
俺が街中の店の軒先で貰って来た魔法関連の本は、家庭教師が教材で使う用だったのかもしれない。
発動を体得するには家庭教師が必要という話だったけど、本に書かれた事を実践したら、それなりに試行錯誤はしたけど全員小さい規模だけど魔法の発動はできるようになった。

なんとなくだけど幼少期だと本に書かれている内容を理解しきれなくて、家庭教師が必要なのではないかという気がしている。
でも魔力を増やしたり、魔法技能を向上させるには成長期に魔法を発動出来ている事が望ましくて、結局、「幼少期に家庭教師」という環境が求められていたのではないかな。
魔法の発動には人によって属性の向き不向きがあるようで、それがいわゆる「持っている属性」と呼ばれるもののようだ。

圭が異世界ガイドノートに書いていた「生活魔法」に近い物がこの世界にもあることがわかった。

「それは属性に関わらず使用出来る小規模な魔法」だ。

蝋燭に火を付けたり,小さい灯りを灯したり、コップ一杯分の水を出したり、顔の周辺にそよ風を吹かせたりということができる。

圭の説では、水量は多いけど届くのに時間がかかる山奥の湖と近所の溜め池の違いのように経路が違っていて、小さい魔法を発するところからは属性の制御がしやすいのではないか、ということだった。

熟練度が増して来たら大きい魔法の属性も制御できるようになるかは、今後の鍛錬次第だけど、ちょっとした火が起こせたり、手を洗いたい時に洗えたりできるのは
生活の便利度が全然違うのを実感した。
こちらの国の人は俺達程頻繁に手を洗ったりしないらしいけどね。
旅の途中もパンを捏ねることになって、手を洗えるかどうかは本当に重要だったんだよ。

開拓村は元男爵領だった所らしくて、元男爵の別宅の屋敷が残っていた。辺鄙な場所に別宅を造ったのは何か家庭内のごたごたが関係していたらしいけど
今となってはよくわからない。でも、少し古びているけれどそれなりの大きさの邸宅があって多少手を入れれば充分住めるということでそこが領主邸となったそうだ。
屋敷の離れの住まいではようやく一人部屋になった。
共同部屋も嫌ではなかったけど、結構解放された気分。少し寂しくも感じたりするけどね。

俺達用と言われた農地は、草ぼうぼうで地面はカチカチとなった場所だった。
農地の先に見える森も開墾すれば農地を広げることもできるらしい。
とはいえ農具も充分じゃないので、とりあえず魔法で何とかできないか練習ついでに試していたんだ。
ワイちゃんは中々水がだせなかったんだけど、ついさっきやっと掌に入るくらいの水を出せたそうで大喜びしている。

俺はというと、土と水の属性魔法が得意みたいだったので、
ある程度範囲を決めて、土を掘り起こし水を撒いてまた堀るということを魔法でやってみていた。

多分「生活魔法」の範囲以上は出来るようになったと思う。
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