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第10章 瑛太4
第143話 買い物し直し
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花売りの屋台から見えない位置まで来たことを確認して俺は小さく溜め息をついた。
「‥‥最後ちょっと嫌み言っちまった。」
「ムカついた事言われたんだもん。もっと言ってやればよかったんだよ。あ!違う!私も言ってやればよかった!」
藍ちゃんが怒った顔をして言った。まんまるのつぶらな瞳でほっぺたを膨らませているとちょっとポメラニアンみたいだ。
「ぼったくりとか、ふざけんなって思うよ! シスターだってあの子達の責任者なら、まず謝れ!だよ!」
ワイちゃんが怒りをあらわにした。ちょっと声が大きいね。
「瑛太、寄付しなくてもよかったんじゃない?」
尾市さんが言う。
「俺も、どうするのが正解かわからなくて。寄付が欲しいってことなのって解釈することにして渡して来た。
でも、今日の給料じゃないところから。
‥‥今日稼いだお金は、圭のおかげでもあるから、圭の為に使いたい。圭の為の花なら、気分よい店で買いたい。」
目の奥が熱くなってきた。
こんなので泣くなんて情けない。深く呼吸して堪えた。
「瑛太‥‥。」
藍ちゃんが泣きそうな顔をして俺を見上げた。
藍ちゃんの肩越しに、大きな荷物を持った緒方さん達が見えた。あ、荷物任せたままだ。
ふぅっともう一度深く息を吐いて、口角を上げた。
「ごめん。うだうだして。緒方さん達に荷物預けたままだから、戻ろう。」
「あ、そうだった!」
四人で緒方さん達の所に駆けて行くと、緒方さん、真希さんに頭をワシワシとされた。ディーン君までワシワシしてきた。
「あの男の子が暴言を吐いた事は抗議しておいたよ。」
ディーン君がニコニコして言った。
「え?」
「当然だろう。彼らが自分達の境遇を嘆くのは‥‥時と場所を選んで欲しいところではあるが、仕方ないとしても。頑張っている君達を否定したり侮辱したりすることは
許容できないからね。」
「‥‥。」
さっき堪えたのに、頬を涙が伝って来た。俺も‥‥圭の事も,皆で協力して来た事も、勝手な偏見で否定されて悔しかったんだ。
ポンポンとディーン君が俺の頭を撫でた。くそぅ、同い年だった。
しばらくして落ち着いた頃に、ディーン君が「じゃあ、買いに行こうか。」と言い出した。
「え?」
「花、買いに行くんだろう? 早くしないと日が暮れて店が閉まってしまうよ。」
ディーン君が街の花屋まで案内してくれると言う。
でもパン営業用の荷物が有ると言うと、手押し車以外の荷物を全部馬車で運んでくれた。軽くなった手押し車だけ宿まで運んで行って、
それから、馬車に乗せてもらって花を買いに行った。
連れていってもらった店は、少し高級そうな花屋だった。
どんな花を買うとか決めていなかったんだけど、そもそも花瓶もなかったんだと思い至り、小さめの陶器の花器とそれに合いそうな花を数本。お店の人に見繕ってもらった。
それで今日分の給料は使い切った。まあ銀貨6枚だけど。
花器に生けてもらった状態でそのまま持ち帰る。馬車にはディーン君、俺、藍ちゃん、尾市さん、ワイちゃん、メイドさんが乗っていた。護衛の人は御者の隣に座っている。
俺が花器を抱えたまま黙っていたから、気を遣ったんだろう。ディーン君が話しかけて来た。
「父から聞いたよ。君の従兄弟が亡くなったんだってね。年齢は近かったの?」
「‥‥同い年だったよ。」
「そう。仲が良かったんだろうね。」
そう言われて頷く。
「親友で、従兄弟で、同級生で、弟みたいで‥‥。」
俺がそう言うと、ディーン君が微笑んだ。
「親友で、弟みたいだったんだね。君は兄のように慕われていたんだろうな。」
「‥‥それは、ちょっとわからないけど‥‥。」
圭にはジェイ兄っていう実の兄がいたし‥‥、小さい頃は俺の後ろを付いて歩いていたけど‥‥。
「‥‥最後ちょっと嫌み言っちまった。」
「ムカついた事言われたんだもん。もっと言ってやればよかったんだよ。あ!違う!私も言ってやればよかった!」
藍ちゃんが怒った顔をして言った。まんまるのつぶらな瞳でほっぺたを膨らませているとちょっとポメラニアンみたいだ。
「ぼったくりとか、ふざけんなって思うよ! シスターだってあの子達の責任者なら、まず謝れ!だよ!」
ワイちゃんが怒りをあらわにした。ちょっと声が大きいね。
「瑛太、寄付しなくてもよかったんじゃない?」
尾市さんが言う。
「俺も、どうするのが正解かわからなくて。寄付が欲しいってことなのって解釈することにして渡して来た。
でも、今日の給料じゃないところから。
‥‥今日稼いだお金は、圭のおかげでもあるから、圭の為に使いたい。圭の為の花なら、気分よい店で買いたい。」
目の奥が熱くなってきた。
こんなので泣くなんて情けない。深く呼吸して堪えた。
「瑛太‥‥。」
藍ちゃんが泣きそうな顔をして俺を見上げた。
藍ちゃんの肩越しに、大きな荷物を持った緒方さん達が見えた。あ、荷物任せたままだ。
ふぅっともう一度深く息を吐いて、口角を上げた。
「ごめん。うだうだして。緒方さん達に荷物預けたままだから、戻ろう。」
「あ、そうだった!」
四人で緒方さん達の所に駆けて行くと、緒方さん、真希さんに頭をワシワシとされた。ディーン君までワシワシしてきた。
「あの男の子が暴言を吐いた事は抗議しておいたよ。」
ディーン君がニコニコして言った。
「え?」
「当然だろう。彼らが自分達の境遇を嘆くのは‥‥時と場所を選んで欲しいところではあるが、仕方ないとしても。頑張っている君達を否定したり侮辱したりすることは
許容できないからね。」
「‥‥。」
さっき堪えたのに、頬を涙が伝って来た。俺も‥‥圭の事も,皆で協力して来た事も、勝手な偏見で否定されて悔しかったんだ。
ポンポンとディーン君が俺の頭を撫でた。くそぅ、同い年だった。
しばらくして落ち着いた頃に、ディーン君が「じゃあ、買いに行こうか。」と言い出した。
「え?」
「花、買いに行くんだろう? 早くしないと日が暮れて店が閉まってしまうよ。」
ディーン君が街の花屋まで案内してくれると言う。
でもパン営業用の荷物が有ると言うと、手押し車以外の荷物を全部馬車で運んでくれた。軽くなった手押し車だけ宿まで運んで行って、
それから、馬車に乗せてもらって花を買いに行った。
連れていってもらった店は、少し高級そうな花屋だった。
どんな花を買うとか決めていなかったんだけど、そもそも花瓶もなかったんだと思い至り、小さめの陶器の花器とそれに合いそうな花を数本。お店の人に見繕ってもらった。
それで今日分の給料は使い切った。まあ銀貨6枚だけど。
花器に生けてもらった状態でそのまま持ち帰る。馬車にはディーン君、俺、藍ちゃん、尾市さん、ワイちゃん、メイドさんが乗っていた。護衛の人は御者の隣に座っている。
俺が花器を抱えたまま黙っていたから、気を遣ったんだろう。ディーン君が話しかけて来た。
「父から聞いたよ。君の従兄弟が亡くなったんだってね。年齢は近かったの?」
「‥‥同い年だったよ。」
「そう。仲が良かったんだろうね。」
そう言われて頷く。
「親友で、従兄弟で、同級生で、弟みたいで‥‥。」
俺がそう言うと、ディーン君が微笑んだ。
「親友で、弟みたいだったんだね。君は兄のように慕われていたんだろうな。」
「‥‥それは、ちょっとわからないけど‥‥。」
圭にはジェイ兄っていう実の兄がいたし‥‥、小さい頃は俺の後ろを付いて歩いていたけど‥‥。
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