半分異世界

月野槐樹

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第10章 瑛太4

第142話 花を買う気持ち

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なんなの?これ?
こんな気分で花を買いたいんじゃないんだよ、俺は。

「まだ買うとか一言も言ってないだろ?」
「なんでいきなり暴言吐くわけ?意味わかんないよ!」
「そーよそーよ!」

尾市さんが彼らを睨み返して言った。藍ちゃんもワイちゃんも怒ってる。
俺は言い争うのもちょっと馬鹿バカしい気持ちになってた。
放っておいて行こうと立ち去りかけたとき、背中に声がかかる。

「俺等はな!」
緑の髪の少年が、一層声を張り上げた。

「親がいないんだ!俺達だけで力を合わせて頑張ってんだ!恵まれてるお前等とは違うんだよ!」
悲痛そうな声をあげてるんだけど。

保護者隊4人と手前の幼児2人。さらに後方にいる他の子達も一斉に何か俺達が酷い事をしたみたいに潤んだ目でみてくる。

何なんだ?俺達何かしましたか?

「‥‥で? 結局どうしてほしいの?」
冷めた口調で尾市さんが言った。

「あ”?」
「君らが親がいない。力を合わせてるってことはわかった。それで?俺達に何を求めてるの?同情?寄付?」
「な?なんだと?」

緑の髪の少年は尾市さんの言葉に目を見開いて当惑した様子だ。

騒がしかったからか、周りに人が集まって来た。緒方さん達も荷物を持って、こちらまで歩いて来てくれた。
教会のシスター達も付近にいたのか、近付いて来た。

「あらあらどうしたのかしら?ルース?」
「シ、シスター‥‥。」

緑の髪の少年はルースというらしい。一歩前に出ていたからか、名指しで問いかけられていた。

「こ、こいつらが‥‥。」
「あら‥‥、貴方達は‥‥。」

先頭にいたシスターは、いつも荷物の受け取り印をくれる人だ。初回限定の印も押してくれた。他のシスターも見覚えがある。
シスターが俺達を見てニコリと微笑んだ。

「まあ、いつも狩猟ギルドからの寄付の品を配達してくれている子達ね。いつもありがとう。」

「え?」
シスターの言葉にルースが目を見開いて俺達の方を見た。

「今日は屋台をやっていたのね。頑張っているわね。」
「‥‥どうも‥‥。」
尾市さんが戦闘モードからプシュっと力が抜けたような返事をした。

「お花を買いに来てくれたのかしら?」
シスターの言葉に、尾市さん、藍ちゃん、ワイちゃんが「どうする?」という感じで俺を見た。

俺は‥‥。

ポケットに手を入れて、腰のベルトから紐で繋いである革袋を取り出した。今日の給与とは別の財布だ。そこから銀貨2枚を出す。

「‥‥寄付です。花はいりません。‥‥他で買いますから。」

シスターに銀貨を手渡すと、今度こそ踵を返して歩き出した。
すぐに藍ちゃん達が追いかけてきた。

「瑛太、単独行動だめだから!その辺でストップ!」
藍ちゃんが俺のシャツを掴んで止めた。
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