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第7章 瑛太3
第115話 初回限定特典
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ちょっとドキドキしながら運んで行ったら教会の扉が開いているのを見えてきてホッとした。
配達は教会の正面入り口からでなくて裏口に運んで来て欲しい、と依頼票に注意書きが書いてあったのを思い出して裏口を探す。
「え?そんな事書いてあったっけ?」
「ギルドの人の説明になかったよね。」
藍ちゃんとワイちゃんが首を傾げた。
「俺は読んだよ。」
と尾市さんが言う。俺はポケットからスマホを出した。
こっそり撮った依頼票の写真を拡大してみる。
「ほら、書いてある。」
スマホの画面を見せると、3人ともちょっと呆れたような顔をした。
「わざわざスマホで撮ったの?」
「そこまでする?」
「スマホ使ってるとこ誰かに見られたらまずいんじゃない?」
「そうは言ってもさ。そもそも依頼票の写しもくれないし。」
俺がそういうと藍ちゃんがハッとした。
「あ、これって初級者の教育用なんじゃないの? ちゃんと依頼票を良く読んだり、覚えられないなら依頼票を移したりしなさいよって、後から言われるやつ。
きっと、教会正面から入ったら、指導されるんじゃない?」
「なるほど。」
「ひぇー!そんな罠が?」
ミスったらペナルティで依頼料減額とかになったら嫌だな、何て思いながら教会の裏手に回った。
ワーワーと賑やかな声が響いてくる。子供が沢山いるみたいだ。
「孤児院とかかな。それか学校とか。」
ワイちゃんが言った。藍ちゃんがふむ、と自分達の配達物を見た。
「‥‥この大量の食糧はその為なんじゃない?」
ワイちゃんと藍ちゃんの推測通り、教会内に孤児院があって、食糧は孤児院の子供達の為のものだった。
教会の裏口の扉らしき物を見つけてノックすると、中年のシスターがでてきた。
「あらまあ、ちゃんと裏口から来れて偉いわね。」
子供に言うかのように褒められてしまった。まあ、未成年だけどね。
「初回限定特典があるのよ。よかったわね。」
シスターが俺達の依頼達成証明書にサインをしてから、スタンプのような物を出してきて押した。
「初回限定特典、ですか?」
「そうよ、これがその証明。」
シスターがニコニコして赤い印を指し示した。
「これがあると銀貨一枚増額されるわ。初回だけよ。」
「わぁ~!そういうことでしたか!」
ちゃんと初日から依頼票をきちんと読んでこなした人だけボーナスがあるのか。ということは間違って正面から入った場合は普通の金額で減額はされないってことかな。
「なかなかいないのよね。ちゃんと読む子が。貴方達は偉いわ。」
「‥‥どうも‥‥。」
子供扱いされたみたいでちょっと気恥ずかしくなりながら、教会を後にした。
帰りがけちらりと振り返ると、子供達の中でも大きい子、‥‥いや俺より背は高いかも‥‥が、配達された肉を運んでいるところだった。
その周りを小さい子がじゃれ付いている。大きい子に何か言われて、小さい子が野菜を抱えて運び始めた。
「なんだか健全っぽいね、ここ。」
俺が見ていたら、尾市さんがひょいと一緒に覗いて言った。
「健全?」
俺が聞き返すと尾市さんが頷いた。そして小声になって言った。
「たまにあるじゃん。運営側が寄付金を横領、なんて話。寄付も金じゃなくて、物だけどさ。寄付された物がちゃんと孤児院の子供達のところに行ってるみたいだと思って。」
「そういうこと? でも運んでたのを見ただけでは何とも言えないんでは?」
「まあ、見た目で分かるのは、ガリガリに痩せた子とか居ない、服装もボロボロとかでない、という位だけどね。そういうレベルでは健全かなって。」
「そっか。そうだね。」
教会を離れて歩きながら、依頼達成票を取り出した。初回限定特典の赤い印を見る。
「教育熱心なところなのかな。低レベルの狩猟ギルド員の教育みたいなこともやってる感じ?」
「あー、だからちょっと緊張したんだー。学校の先生みたいだったよね!」
ワイちゃんが合点が行ったという様子で笑った。
配達は教会の正面入り口からでなくて裏口に運んで来て欲しい、と依頼票に注意書きが書いてあったのを思い出して裏口を探す。
「え?そんな事書いてあったっけ?」
「ギルドの人の説明になかったよね。」
藍ちゃんとワイちゃんが首を傾げた。
「俺は読んだよ。」
と尾市さんが言う。俺はポケットからスマホを出した。
こっそり撮った依頼票の写真を拡大してみる。
「ほら、書いてある。」
スマホの画面を見せると、3人ともちょっと呆れたような顔をした。
「わざわざスマホで撮ったの?」
「そこまでする?」
「スマホ使ってるとこ誰かに見られたらまずいんじゃない?」
「そうは言ってもさ。そもそも依頼票の写しもくれないし。」
俺がそういうと藍ちゃんがハッとした。
「あ、これって初級者の教育用なんじゃないの? ちゃんと依頼票を良く読んだり、覚えられないなら依頼票を移したりしなさいよって、後から言われるやつ。
きっと、教会正面から入ったら、指導されるんじゃない?」
「なるほど。」
「ひぇー!そんな罠が?」
ミスったらペナルティで依頼料減額とかになったら嫌だな、何て思いながら教会の裏手に回った。
ワーワーと賑やかな声が響いてくる。子供が沢山いるみたいだ。
「孤児院とかかな。それか学校とか。」
ワイちゃんが言った。藍ちゃんがふむ、と自分達の配達物を見た。
「‥‥この大量の食糧はその為なんじゃない?」
ワイちゃんと藍ちゃんの推測通り、教会内に孤児院があって、食糧は孤児院の子供達の為のものだった。
教会の裏口の扉らしき物を見つけてノックすると、中年のシスターがでてきた。
「あらまあ、ちゃんと裏口から来れて偉いわね。」
子供に言うかのように褒められてしまった。まあ、未成年だけどね。
「初回限定特典があるのよ。よかったわね。」
シスターが俺達の依頼達成証明書にサインをしてから、スタンプのような物を出してきて押した。
「初回限定特典、ですか?」
「そうよ、これがその証明。」
シスターがニコニコして赤い印を指し示した。
「これがあると銀貨一枚増額されるわ。初回だけよ。」
「わぁ~!そういうことでしたか!」
ちゃんと初日から依頼票をきちんと読んでこなした人だけボーナスがあるのか。ということは間違って正面から入った場合は普通の金額で減額はされないってことかな。
「なかなかいないのよね。ちゃんと読む子が。貴方達は偉いわ。」
「‥‥どうも‥‥。」
子供扱いされたみたいでちょっと気恥ずかしくなりながら、教会を後にした。
帰りがけちらりと振り返ると、子供達の中でも大きい子、‥‥いや俺より背は高いかも‥‥が、配達された肉を運んでいるところだった。
その周りを小さい子がじゃれ付いている。大きい子に何か言われて、小さい子が野菜を抱えて運び始めた。
「なんだか健全っぽいね、ここ。」
俺が見ていたら、尾市さんがひょいと一緒に覗いて言った。
「健全?」
俺が聞き返すと尾市さんが頷いた。そして小声になって言った。
「たまにあるじゃん。運営側が寄付金を横領、なんて話。寄付も金じゃなくて、物だけどさ。寄付された物がちゃんと孤児院の子供達のところに行ってるみたいだと思って。」
「そういうこと? でも運んでたのを見ただけでは何とも言えないんでは?」
「まあ、見た目で分かるのは、ガリガリに痩せた子とか居ない、服装もボロボロとかでない、という位だけどね。そういうレベルでは健全かなって。」
「そっか。そうだね。」
教会を離れて歩きながら、依頼達成票を取り出した。初回限定特典の赤い印を見る。
「教育熱心なところなのかな。低レベルの狩猟ギルド員の教育みたいなこともやってる感じ?」
「あー、だからちょっと緊張したんだー。学校の先生みたいだったよね!」
ワイちゃんが合点が行ったという様子で笑った。
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