92 / 305
第7章 瑛太3
第92話 助けたくても
しおりを挟む
トイレ休憩なんかも適当にすませて再び荷馬車に乗りこんだ。
荷馬車に揺られながら尾市さんと椎名さんが石倉さんと話をしていた。
「麻美ちゃんも多分来てると思う。助け出せないかな。」
「まみちゃん‥て‥‥。」
「越前麻美ちゃんだよ。」
「ああ‥‥合唱部の。」
「放送部だよ。」
「ああ、そういえば朝礼で見た事あったかも‥‥。」
石倉さんが召還されたときに近くにいたはずだという誰かの話をしているようだった。
「助け出すって言ったって、どこにいるか分からないだろ。」
「神殿にいるかも。見に行くだけでも行けない?」
「いや,俺達神殿から逃げて来たんだからね。それも何日もかけて。」
尾市さんと椎名さんは石倉さんの要望に応じる事ができなくて困った顔をしている。石倉さんは聞き入れてもらえず今にも泣きそうな様子だ。
尾市さんが助けを求めるように周囲を見回した。
緒方さんと真希さんが三人に向かって移動して行く。荷馬車の上なので座った姿勢のままの移動だ。
真希さんが石倉さんの傍に両膝を付いて顔を覗き込み話しかけた。
「あなたの気持ちはわかるわ。でもね。考えてみて。今、神殿に戻ったら全員捕まってしまうと思うの。」
「だけど‥‥。」
「誰かを助けに行くとしても、力や知識を付けてからだと思うわ。今の私達ってこの世界の事ほとんど何も知らないのよ。
字だって最近覚えはじめたばかりだし。腕力もない。お金もない。逃げるルートだって知らない。」
「でも‥‥、今こうやって隣の国に向かって行ってるのに‥‥。」
「ライアンさんが協力してくれているからよ。でもライアンさんに、戻って他の人も助けて何てお願いできないわ。」
「‥‥そんな‥‥。」
石倉さんが少し睨むように真希さんを見た後、ギュッと唇を噛んで俯き、肩を震わせた。泣き出してしまったようだ。
助けたいと思っている人物は石倉さんにとって大事な友達なんだろうな。
もしも藍ちゃんが捕まってたら? うん、俺だって助けに行きたいって思う。
周囲に協力を求められそうな人がいたら頼んでみるし、だめなら自分一人で助けに行こうとするだろう。
今は藍ちゃんも無事だし、自分も多少余裕が有って落ち着いているからわかるけど、
一人で行って助け出す程の実力は今の俺にはないと思う。
皆もそうだ。そうじゃなかったら今逃げてないよ。
でこぼことした道を進む荷馬車のガタゴトという音と石倉さんのすすり泣く声をききながら
重苦しい空気を感じていた。
日暮れの直前にギリギリ街に辿り着いた。
街の門番の所で、作ったばかりの身分証を見せる。石倉さんだけはまだ持っていなかったけど、俺達が身分証を持っているから同行者として追加料金なく入れた。
この街にも狩猟ギルドがあるみたいなので、後で作れるだろう。
宿は一軒目は空きがなく、二軒目で四人部屋が3部屋ちょうど空いていたのでそこに決まった。
俺はいつもと同じように尾市さんと椎名さんと同部屋。部屋に入ってみて窓を開ける。
どれでもいいけど一応最初に各自のベッドを決めておくことにした。
荷馬車に揺られながら尾市さんと椎名さんが石倉さんと話をしていた。
「麻美ちゃんも多分来てると思う。助け出せないかな。」
「まみちゃん‥て‥‥。」
「越前麻美ちゃんだよ。」
「ああ‥‥合唱部の。」
「放送部だよ。」
「ああ、そういえば朝礼で見た事あったかも‥‥。」
石倉さんが召還されたときに近くにいたはずだという誰かの話をしているようだった。
「助け出すって言ったって、どこにいるか分からないだろ。」
「神殿にいるかも。見に行くだけでも行けない?」
「いや,俺達神殿から逃げて来たんだからね。それも何日もかけて。」
尾市さんと椎名さんは石倉さんの要望に応じる事ができなくて困った顔をしている。石倉さんは聞き入れてもらえず今にも泣きそうな様子だ。
尾市さんが助けを求めるように周囲を見回した。
緒方さんと真希さんが三人に向かって移動して行く。荷馬車の上なので座った姿勢のままの移動だ。
真希さんが石倉さんの傍に両膝を付いて顔を覗き込み話しかけた。
「あなたの気持ちはわかるわ。でもね。考えてみて。今、神殿に戻ったら全員捕まってしまうと思うの。」
「だけど‥‥。」
「誰かを助けに行くとしても、力や知識を付けてからだと思うわ。今の私達ってこの世界の事ほとんど何も知らないのよ。
字だって最近覚えはじめたばかりだし。腕力もない。お金もない。逃げるルートだって知らない。」
「でも‥‥、今こうやって隣の国に向かって行ってるのに‥‥。」
「ライアンさんが協力してくれているからよ。でもライアンさんに、戻って他の人も助けて何てお願いできないわ。」
「‥‥そんな‥‥。」
石倉さんが少し睨むように真希さんを見た後、ギュッと唇を噛んで俯き、肩を震わせた。泣き出してしまったようだ。
助けたいと思っている人物は石倉さんにとって大事な友達なんだろうな。
もしも藍ちゃんが捕まってたら? うん、俺だって助けに行きたいって思う。
周囲に協力を求められそうな人がいたら頼んでみるし、だめなら自分一人で助けに行こうとするだろう。
今は藍ちゃんも無事だし、自分も多少余裕が有って落ち着いているからわかるけど、
一人で行って助け出す程の実力は今の俺にはないと思う。
皆もそうだ。そうじゃなかったら今逃げてないよ。
でこぼことした道を進む荷馬車のガタゴトという音と石倉さんのすすり泣く声をききながら
重苦しい空気を感じていた。
日暮れの直前にギリギリ街に辿り着いた。
街の門番の所で、作ったばかりの身分証を見せる。石倉さんだけはまだ持っていなかったけど、俺達が身分証を持っているから同行者として追加料金なく入れた。
この街にも狩猟ギルドがあるみたいなので、後で作れるだろう。
宿は一軒目は空きがなく、二軒目で四人部屋が3部屋ちょうど空いていたのでそこに決まった。
俺はいつもと同じように尾市さんと椎名さんと同部屋。部屋に入ってみて窓を開ける。
どれでもいいけど一応最初に各自のベッドを決めておくことにした。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる