半分異世界

月野槐樹

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第6章 詩英2

第88話 メッセージ

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『考えてみたんだけどね。異世界に行ったとしても、死んじゃったとしても、こっちにはいないのは同じでしょ?
そうしたらさ‥‥。
僕がいなかったら、父さんと母さんもまた一緒に暮らせるよね。
‥‥僕がいなかった頃‥‥みたいに‥‥。仲良く出来ると思うんだ。‥‥だから‥‥。父さん、母さん、兄さん。仲良く元気で暮らしてね。』
「‥‥‥。なに‥‥、何言ってるんだ‥‥。」

圭は少し言葉を詰まらせて、唇が少し震えているように見えた。
俺は圭が言っている言葉が理解できなくて、呆然とした。

圭がいなかったら、父さんと母さんが一緒に暮らせるってなんだ?圭がいるせいで離婚したって思ってる?
そう思った時、突然台詞が頭の中に蘇った。

ーーーー誰のせいだと思ってるんだ。

その台詞を思い出して,思わず動画の再生を止めた。

それを言ったのは‥‥、俺だ。

圭が怪我をした後、治療で病院に行くことや示談金だかの交渉だとか、怪我した圭の身の回りの世話だとかで、母さんは忙しく走り回っていた。当時母さんが凄くストレスを溜めているのが傍からも判った。家ではしょっちゅう父さんと母さんが喧嘩をしていた。夜とか俺達が寝ているような時間にリビングで二人で言い合っていたけど、言い争う声が部屋まで聞こえてきていたんだ。

結局、父さんが出て行ってそのまま離婚する事になった。

でも、圭はまだ小さかったし怪我の事もあったから、両親の離婚の事を伝えてなかったんだった。
だから仕方なかったんだけど、父さんと会う度に圭は無邪気な様子で父さんに向かって「一緒に帰ろうよ」って言ってたんだ。圭は知らないのだから、仕方ないとは思っていたけど、その台詞を聞く度になんだかイラっとしていた。

それである日つい、言ってしまった。

『誰のせいだと思ってるんだ。』

その日、父さんと会う待ち合わせの時、渋滞で父さんが遅れて来て母さんがまた父さんに対して怒りだしたんだ。
それを見て俺も苛々してたんだと思う。それで、何も知らずに無邪気な様子の圭の台詞に苛立って意地悪を言ってしまったんだ。

その時の圭は驚いた様子というより,表情をなくしたように見えた。
それから、圭はあまり笑わなくなった。

俺は言っては行けない事を言ったと思ったけど、自分の中でその事から逃げてしまってた。
圭に、謝ってもいない。

まるで何も言わなかったかのように振る舞っていた。圭も特に何もいってなかったから、忘れてくれていたかと思ってた。そう、思いたかった。

「圭。ごめん。本当にごめん。」

いまさら謝ってももう圭には届かない。分かっているけど、停止した動画映像の中の圭に向かって何度も謝った。
その先、俺を罵倒するような台詞をいうかもしれない。そう思いながら動画の再生ボタンを押した。
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