半分異世界

月野槐樹

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第5章 瑛太2

第80話 救出

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「罠?」

尾市さんが理解出来ないという顔をしたら、江角さんは尾市さんの耳元に顔を近づけて小声で言った。

「俺達の状況、思い出せよ。分かってる?」
「あ‥‥。」

俺達って逃亡中なんだよね、一応。死んだって思われているかもしれないけど。
そこに知っている人物の姿が見えて、状況を確認せずに近付くのはまずいのかもしれない。

「一旦ライアンさんに相談しよう。」

江角さんはそう言うと俺と尾市さん椎名さんに様子を見ておくようにいって、ワイちゃんと購入組の居る方に歩いて行った。
スリとかにも警戒しておくようにといわれて、俺が警戒係をすることにした。尾市さん椎名さんの知り合いっぽいからね。
石倉さんというのは尾市さん椎名さんの同級生の女子で、クラスも一緒だったけどほとんどしゃべった事はないらしい。挨拶したことがあるかどうか位だという。
親しくしていたわけではないから、似ているように見えるというだけで確証はないらしい。

でも召還された時には同じ教室にいたそうだ。
それで似ているなら、本人の確率は高そうだ。

「あ、またしゃがみ込んだ。」
「怒られてるんじゃね?あれ。」

石倉さん(仮)は、掃除をしながら時々しゃがみ込んでいるという。フラフラしているように見えるようだ。

「無理やりこきつかわれていそうだなぁ。」

店は看板からすると薬草かなにかを売っている所らしい。
兵士とかでなく薬草屋で働かされているのか?

あまり待たないうちに江角さんが購入組を連れて来た。
連れてくる途中で状況を説明していたようで、ライアンさんは通りの向こうをちらりと見て言った。

「労働力外となって神殿地区から放逐されたようだな。」

召還されてすぐに有能とされたものは「勇者」として扱われ、それ以外は「その他」で呪具を使われて使役される。
体力や腕力があるものは兵士にされるけど、そうでないものは労働力とされて荷運び等に使われているそうだ。
そして、労働力にもならないとされたものは市井に下げ渡されるらしい。
石倉さん(仮)はあの薬屋に下げ渡されたのだろうとのこと。
何かとても腹立たしい。勝手に連れて来て使えないから放逐とか。ホント何様なんだよ。
網で漁をして、目当ての魚以外の雑魚は放り出すって感じなのか。

ライアンさんが先に通りを横切って様子を見に行った。
店主らしい人に話しかけている。何やら交渉してるのか?
ライアンさんが何か店主に手渡した。店主は石倉さん(仮)の腕を引っ張ると、ライアンさんの方に押し付けた。

「お、もしかして、解放された?」

様子を見に行きたいけど、ライアンさんの合図があるまで待機。
ライアンさんは石倉さん(仮)の手を掴んでひきずるようにして移動して行った。店三軒分くらい移動してから、一度薬屋の方を振り返り、
俺達に手で合図をした。指を一本立てている。

「え、一人こっちに来いってことだよな。」

周囲に確認してから椎名さんが通りを渡って行った。
そして、ライアンさんと話をしたと思ったらすぐに戻って来た。

「薬屋から譲ってもらったけど、俺達と一緒なのを見られると神殿に話がいってしまうかもしれないから、
通りを一本移動するまで離れてろってさ。で、何人かで宿に連れてくことにしようって。女子だから、だれか女子が付いてた方がいいよな。」
「じゃあ、私が宿まで行こうか。」

ワイちゃんが手を上げた。

「俺達も行くよ。一応知ってる奴だし。」

尾市さんと椎名さんも行くというので、チェック組で宿に連れて行くことにした。
通りから外れた所にライアンさんが移動してから合流した。

「街中で解呪はしないほうがいい。顔を知られているだろうから。」

呪具を付けて通りを掃除していた人物が、いきなり呪具もなくなって元気一杯になっていたらまずいだろうといわれた。まあ、そうかもしれない。
動画を見せなければいいんだよな。
何故動画で解呪されるのか、よくわかってないけど。
尾市さんと椎名さんが、石倉さん(仮)を間近でみて、石倉さん(本人)と確認した。
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