半分異世界

第5章 瑛太2

第75話 秘密の異次元鞄

SDカードが読めないのはちょっと残念だよな。
そう考えていたらふと圭の顔が浮かんだ。

マルチケーブル準備してたってことは‥‥。
イメージしながら鞄に手を突っ込んでみた。

（SDカードリーダー）

やっぱりそうですか。

尾市さんの携帯で試してみたら、ちゃんとSDカードが読み込めた。
良かった。
良かったけど、混乱中だよ。圭エモン～。

圭の鞄、気がついたら蓋も開いていてぺちゃんこになっていたから、異世界に運ばれる途中で中身が出てしまったのかと思ってたけど、実は、異次元鞄になっちゃってたんじゃないか？
召還される時に、スキルが付与される場合があるっていうけど、圭が死んじゃったから鞄にスキルが付いたんだろうか？
これ‥‥他の人に言っていいのか？　暫く様子をみてみるか。そもそも入る量とかもわからないし。
見た目ぺしゃんこで軽くなるけど、容量は普通の鞄と変わらないということもあるかもしれない。
異次元鞄として狙われて、盗まれたりしても嫌だよな。せっかく圭が用意してくれた物が入っているんだし。

尾市さんはSDカードの読み込みが出来た事で再び感涙していた。
そして携帯にコピーしたデータで、動画を再生して、また泣いていた。
そこに椎名さんが起きて来た。
椎名さんの携帯はSDカードが読めるタイプだったけど、ソーラーモバイルバッテリーに感動していた。

その後、皆が起きて来た頃、SDカードの読み込みが出来ていなかった藍ちゃんと、柄舟さんも携帯に動画を取り込めるようになって嬉しそうだった。

「うわーん！兄貴～！スーツ似合わない～！」

ワイちゃんはお兄さんからの動画を見て、普段着ないスーツ姿だったらしくてツッコミを入れながら目を潤ませていた。
ワイちゃんも神殿では親御さんの動画しかみてなかったのだそうだ。

喜んだりしんみりしたりしながら朝食の準備。
前の村で入手したパンは既に食べてしまったので、この村で朝焼き上がるパンを買いに行く。
10人分となると結構量があるが、宿の人を通じて事前に頼んでおいたから開店時間と同時に行ってもすんなり受け取る事ができた。
朝は小さい市場が開いているというので、見に行った。
農閑期の間の手仕事らしい、手作りの服や雑貨が多かった。
食料品はあまりなかったけど、芋を少しと、干し野菜を買う事ができた。

出発の時間、前回の村と違って、特に見送ってくれる人はいない。
荷物を積んだら宿の人に声をかけて出発するだけだ。
でも、ワイちゃんが、手を上げて提案してきた。

「ねえねえ。写真とらない？一応記録しておこうよ！」

ソーラーモバイルバッテリーだって、寿命があるからずっと使えるわけではない。
でも何回かは携帯を充電できるのだし、写真を撮っておくのはいいかもしれない。
いつか日本に持ち帰ってみる事ができるといいのだけど。