半分異世界

月野槐樹

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第5章 瑛太2

第70話 現地での食糧調達

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マーヤさんに桶を貸してもらえないか訊きにいったら昨晩のうちに気がつかなくて申し訳なかったと謝られてしまった。竃で湯を沸かして使って良いという。
藍ちゃん達に伝えたら喜んでいた。
村には風呂はないらしい。もう少し大きな村だと、お客用に湯浴み用の大きい盥とかもあったりするらしいけど、この村の人達は桶の水で身体を拭くくらいだとか。

身体を洗って、食器洗いも完了。
朝食までの間、藍ちゃん達はまだどこかに行っていた。
どうやら朝食を手伝いがてら、こちらの台所の使い方を見に行っていたらしい。誘ってくれればよかったのに。

まあ、俺は料理とかできないんだけど。この状況ではそんな事は言っていられないから覚えるようにしよう。
朝食は、固いパンと,スープ。猪魔獣の肉の欠片と野菜が少し入っていた。
村の人達が猪魔獣を見てテンション上がってたけど、もしかして猪魔獣の肉がなかったら、村の食事ってこれの肉抜きなんだろうか‥‥。
気になって訊いてみたら、冬の間は野菜も手に入らないので、干し野菜やら干し肉やらの保存食でまかなっているという。
パン用の小麦は備蓄があるから、飢えはしないけど豊かという程ではないそうだ。
そしてそれは、この世界の庶民の生活だと大体何処でも珍しくないのだそうだ。

「街ならお肉とか手に入りやすいけどねぇ。ほんとお肉持って来てくれて助かったわ。」

改めて、猪魔獣を狩って来た事のお礼を言われてしまった。

この先の旅の食事用にパンとかを手にいれておきたいけど、村の人達の食材を減らすのはよくなさそうだ,と考えていたら
1日~2日分くらいならパン焼きのジャヌさんという人の所に行けば、売ってもらえるだろうと教えてくれた。

パン屋のジャヌさん。ジャヌおじさんかな。
なんとなく特殊なパンを色々作っていそうなおじさんを想像していたら、おばさんだった。

「いいよ~。焼きたてを持って行きな!」

そういって焼きあがったばかりというパンを、籠に入れてくれる。籠はマーヤさんから借りて来た。
後で、タッパーとかに移し替える予定だ。
食事に出て来た固いパンは、ジャヌおばさんが焼いていたパンのようだ。焼きたてでも固そうで、ライ麦パンのような色をしている。
一人あたり3個。30個売ってもらった。
肉を調達してくれたからと無料にしてくれそうになったけど、数も多いし申し訳ないので支払っておいた。
でもジャヌさんの言い値はかなりサービス価格だったかもしれない。
一人三個なのは、今日1個、明日2個で考えているからだ。
そのくらいは必要、と思ったけど30個まとめると結構大量だな。

パンを持ち帰って、藍ちゃんのところで弁当箱に詰め替えた。
タッパーには干し肉を入れる予定で、ステンレスの弁当箱とパウンドケーキの空き袋にパンを詰めて行く。
弁当箱は食事の時にパンを食べれば空くので問題ないそうだ。

パンを弁当箱に詰めていたら、尾市さんと椎名さんが干し肉と何やら葉っぱを持って部屋に入って来た。

「干し肉はこの葉っぱに包むといいらしいぜ。」

少し茶色がかった大きな葉だった。夏場に収穫して乾燥させていた物を水で戻したらしい。笹の葉みたいな感覚なのかな。
葉に包んでおくと日持ちするというので、葉に包んでからタッパーに詰めて行った。入りきらない分は紐で縛ってそのまま持って行く事にする。
昼食か夕食で消費しちゃいそうだけどね。

この世界では基本一日二食で朝と早めの夕食が普通らしい。
灯りがもったいないから日が昇ってからと、日が暮れる前に食事を済ませてしまうそうだ。

ろうそく‥‥そうだよな‥‥。昨晩普通に借りて、文字書いたりとかしていたけど、遠慮なく使いすぎたかもしれない。
ちょっと反省し、出発の時間まで水汲みとか力のいる仕事を手伝う事にした。
それを聞いて他のメンバーも俺と一緒に水汲みをしたり、掃除の手伝いとかをしたりした。
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