半分異世界

月野槐樹

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第5章 瑛太2

第65話 初の村

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「ついていたな。小物しか出て来なかった。」

ようやく森を抜けたときにライアンさんが言う。あれで小物って‥‥。たしかにもっと大きいのが来てたらダメだったかも。
森から出た後、川を見つけ血を洗い流した。荷馬車の荷台も猿魔獣の血が飛び散っているのでそれをボロ布で拭く。
一度川で布を洗った後にもう一度荷台を拭いた。
手は顔も洗ったけど、来ている服は着替えがないので洗うのは我慢した。

河原で休憩。
パウンドケーキを食べる。オレンジの香りがする。甘いからか、身体に染み渡って癒されるような気がした。
紙の焼き型に入っていたパウンドケーキ。紙にこびりついている生地もこそげ落として大事に食べる。

「ああ、食べ終わりたくないー。」

ワイちゃんが嘆くように言った。その気持ち分かる。

少し休憩をした後、再び馬車に揺られる。今日のうちに村か街につけるといいな。
街道を進んでいる間、二度程猪系の魔獣に襲撃をされた。襲撃して来たのは一頭ずつだ。群れじゃなくてよかった。
二頭目は追い払った形になったけど、二頭目は仕留めた。
緒方さん達は魔獣に怯む事もなく、対応している。
召還されてから一番長いし、戦闘訓練も受けているからなのかな。高校生で身体も大きいというのもあるのかもしれない。
なんというか、頼りになる。石投げ部隊とはだいぶ差があるなぁ。

こっちは魔獣の死体に慣れるところから頑張らないといけない。
ボアの血抜きを手伝いながら思う。
ロープを足に縛り付けて、皆で引っぱりながら荷馬車に引き上げる。
まだ体温が残っていてうわーってビビるんだけど、売れれば当面の生活資金や移動資金になるって言われたら頑張るしかない。

「解体して肉食べないの?」

とかワイちゃんが言っている。

「丸々売った方が高く買い取ってくれるはずよ。」

藍ちゃんが言う。
馬車の荷台に猪魔獣の死体をおいてその近くに座るのってどうかと思ったけど女子達も嫌がってはいなさそうだ。
現実的っていうかね。

日が高く昇って来た頃に、村を見つけた。
荷台に猪魔獣をつんでいたからか、門番がにこやかに迎え入れてくれた。
是非村で売って欲しいという。

村には猪系魔獣を狩るような人はいなくて、とても希少なんだとか。
狩猟ギルドというのがこの国にはあるらしいのだけど、
村にはギルドは存在していないそうだ。村長の所に行けば買い取ってもらえるといわれた。
教えてもらった先に村長の家があった。何処からか聞きつけて来たのか、結構人が集まって来ている。

村の人々の目線が猪魔獣に釘付けだ。
ライアンさんが村長と交渉してくれるそうだ。交渉の間、しっかり見張っておいてくれといわれて、俺と江角さん、尾市さん、椎名さんで猪魔獣の周りを取り囲んでいた。
俺達の周りを村人が大勢取り囲んでいる。
もう、買い取りが決まった前提で、どうやって料理するかとか、素材は誰が使うだとか言い始めてた。集団で襲い掛かられそうでちょっと怖い。
村長との交渉にはライアンさんの他に真希さん、緒方さんが行っている。柄舟さん、藍ちゃん、ワイちゃんは待機。

人里離れた村にはそんなに潤沢な資金があるわけではないようで、交渉はちょっと時間がかかっていた。
猪魔獣の肉はどうしても欲しいらしいけど、丸々一頭を現金で払う程の資金がないそうだ。
結局、肉の一部と牙はこっちで貰うのと、衣料やら食器やらを物品で受け取ることでまとまったようだ。後、村長の家に泊まらせてもらって宿泊費と食費も無料となった。
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