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第5章 瑛太2
第61話 食事は大事
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名前だけ自己紹介して、その間にシートをたたんだり、身支度を整える。
休憩するより早く出た方がいいということだったけど、ずっと走って来たらしいので、最低限の水分補給だけしてもらうことにした。
藍ちゃんが、ペットボトルに半分残った水を紙コップに少しずつ分ける。
紙コップとペットボトルが出て来たことに4人は驚愕していた。
「こんな状況でも回し飲みとかしたくないってこと?」
尾市さんが苦笑いして言う。言われても藍ちゃんはきっぱりと返した。
「だって、薬とかない場所だよ。水が痛んでお腹をこわしたり、他の病気とかも避けたいのは当然よ。慣れれば大丈夫かもしれないけど、まだ慣れていないし。」
「まあ、間違ってないな‥‥。水、ありがとう。」
水を飲んだ後紙コップに各自名前を書いた。鞄とか持っていないのかと思ったら、鎧とセットになっていたという肩から下げるポーチ的な物を各自持っていたので
紙コップは各自持ってもらうことになった。
鎧と兜は計画通り、呪具と一緒に川辺にばらまいて来たそうだ。
森の中に馬車でギリギリ通れるくらいの道があり、荷馬車で慎重に進む。
森の奥には魔獣の活動域があるらしく、その少し手前まで移動して休憩を取るということで、
荷台の上で振動に耐えながら座り込んでいた。
全員ボロ布を折り畳んでクッション代わりにしていた。うん、つらいよね。
馬車を降りた頃には、尾てい骨がなにかズキズキしていた。ちょっと腰を屈める。
おじいさんになっちゃうよ。
降りた場所は、森の奥の泉のほとりだった。
泉の水は飲めるとライアンさんが言っていたので、信用して水を両手ですくって飲んでみた。
うん。変な味はしない。寧ろ美味しい。
各自紙コップに汲んで飲み始めた。藍ちゃんは空のペットボトルに水を補充していた。
そして少し泉から離れた所で汲んだ水を使ってタッパーやら弁当箱やらを洗っていた。
おにぎり用のタッパー、おかず用のタッパー。煮込みハンバーグが入っていたステンレスの弁当箱。
見てると圭を思い出す。俺も傍によって洗うのを手伝う。一番大きいタッパーに水を入れて、その水で他の入れ物を洗ってた。
一度布で汚れを拭き取ってあって、洗剤もないしさっと水で流すだけにするらしい。
ステンレスの弁当箱、重たくないのかなと、持ち上げてみたりしてたら、ふと蓋を停める金具の所が外に広げられて取手になることに気がついた。
「‥‥これ、鍋になるやつじゃん。」
「あ!」
俺に言われて気がついたらしい藍ちゃんは声を上げてそれからハクハクと口を動かした。
俺は続けた。
「火にかけて湯がわかせるんじゃない?」
泉の水を沸かせて飲めれば、かなり嬉しい。そう思って言ってみたら、藍ちゃんは目をパチパチさせた。
「凄い!気がつかなかった!‥‥瑛太、あのね。」
「うん?」
「この弁当箱、2個ある。」
「おおう‥‥。」
もう一つには豚の角煮が入っていて、後で食べるようにとっておいたのだという。
圭、どんだけ?ツッコミ入れたくて仕方ないよ。
急遽石を集めて、鍋が置けそうな即席竃をつくった。豚の角煮が入った弁当箱はそのまま火にかける。
もう一つは水を汲んで沸かす。
ほぼ手ぶらで、野営道具どころか保存食も持たずに出て来た皆のテンションが上がった。
流石に10人分の食事用には少ないのだが、角煮が温まると藍ちゃんはそれを人数分の紙コップに分けた。
鍋のまま皆で適当に食べるかと思ってたけど、最初から分けないと食べ損なう人がでそうだという。
まあ、そうかもしれない。もし食べ損なったらずっと恨まれるかもしれないよな。既に尾市さんと椎名さんがかぶりつきで見ている。
パンをちぎって浸しながら食べる。パンも弁当箱の蓋の上に乗せて少し温めていた。暖かい食事って胃袋に滲みる。
和井さんがむせび泣いている。
「は~、美味しい~。こんなの久しぶりだよ。うわーん!」
尾市さんと椎名さんもモグモグしながら涙ぐんでいる。
緒方さん、江角さん、柄舟さんは、その前におにぎりやらハンバーグを食べてたから結構落ち着いて食べている。
緒方さんの隣に居る真希さんは、ちょっと目をうるわせていた。
‥‥煮込みハンバーグとかもあったことは言えないな‥‥。
休憩するより早く出た方がいいということだったけど、ずっと走って来たらしいので、最低限の水分補給だけしてもらうことにした。
藍ちゃんが、ペットボトルに半分残った水を紙コップに少しずつ分ける。
紙コップとペットボトルが出て来たことに4人は驚愕していた。
「こんな状況でも回し飲みとかしたくないってこと?」
尾市さんが苦笑いして言う。言われても藍ちゃんはきっぱりと返した。
「だって、薬とかない場所だよ。水が痛んでお腹をこわしたり、他の病気とかも避けたいのは当然よ。慣れれば大丈夫かもしれないけど、まだ慣れていないし。」
「まあ、間違ってないな‥‥。水、ありがとう。」
水を飲んだ後紙コップに各自名前を書いた。鞄とか持っていないのかと思ったら、鎧とセットになっていたという肩から下げるポーチ的な物を各自持っていたので
紙コップは各自持ってもらうことになった。
鎧と兜は計画通り、呪具と一緒に川辺にばらまいて来たそうだ。
森の中に馬車でギリギリ通れるくらいの道があり、荷馬車で慎重に進む。
森の奥には魔獣の活動域があるらしく、その少し手前まで移動して休憩を取るということで、
荷台の上で振動に耐えながら座り込んでいた。
全員ボロ布を折り畳んでクッション代わりにしていた。うん、つらいよね。
馬車を降りた頃には、尾てい骨がなにかズキズキしていた。ちょっと腰を屈める。
おじいさんになっちゃうよ。
降りた場所は、森の奥の泉のほとりだった。
泉の水は飲めるとライアンさんが言っていたので、信用して水を両手ですくって飲んでみた。
うん。変な味はしない。寧ろ美味しい。
各自紙コップに汲んで飲み始めた。藍ちゃんは空のペットボトルに水を補充していた。
そして少し泉から離れた所で汲んだ水を使ってタッパーやら弁当箱やらを洗っていた。
おにぎり用のタッパー、おかず用のタッパー。煮込みハンバーグが入っていたステンレスの弁当箱。
見てると圭を思い出す。俺も傍によって洗うのを手伝う。一番大きいタッパーに水を入れて、その水で他の入れ物を洗ってた。
一度布で汚れを拭き取ってあって、洗剤もないしさっと水で流すだけにするらしい。
ステンレスの弁当箱、重たくないのかなと、持ち上げてみたりしてたら、ふと蓋を停める金具の所が外に広げられて取手になることに気がついた。
「‥‥これ、鍋になるやつじゃん。」
「あ!」
俺に言われて気がついたらしい藍ちゃんは声を上げてそれからハクハクと口を動かした。
俺は続けた。
「火にかけて湯がわかせるんじゃない?」
泉の水を沸かせて飲めれば、かなり嬉しい。そう思って言ってみたら、藍ちゃんは目をパチパチさせた。
「凄い!気がつかなかった!‥‥瑛太、あのね。」
「うん?」
「この弁当箱、2個ある。」
「おおう‥‥。」
もう一つには豚の角煮が入っていて、後で食べるようにとっておいたのだという。
圭、どんだけ?ツッコミ入れたくて仕方ないよ。
急遽石を集めて、鍋が置けそうな即席竃をつくった。豚の角煮が入った弁当箱はそのまま火にかける。
もう一つは水を汲んで沸かす。
ほぼ手ぶらで、野営道具どころか保存食も持たずに出て来た皆のテンションが上がった。
流石に10人分の食事用には少ないのだが、角煮が温まると藍ちゃんはそれを人数分の紙コップに分けた。
鍋のまま皆で適当に食べるかと思ってたけど、最初から分けないと食べ損なう人がでそうだという。
まあ、そうかもしれない。もし食べ損なったらずっと恨まれるかもしれないよな。既に尾市さんと椎名さんがかぶりつきで見ている。
パンをちぎって浸しながら食べる。パンも弁当箱の蓋の上に乗せて少し温めていた。暖かい食事って胃袋に滲みる。
和井さんがむせび泣いている。
「は~、美味しい~。こんなの久しぶりだよ。うわーん!」
尾市さんと椎名さんもモグモグしながら涙ぐんでいる。
緒方さん、江角さん、柄舟さんは、その前におにぎりやらハンバーグを食べてたから結構落ち着いて食べている。
緒方さんの隣に居る真希さんは、ちょっと目をうるわせていた。
‥‥煮込みハンバーグとかもあったことは言えないな‥‥。
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