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第4章 詩英1
第58話 家族での食事
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圭が作った作り置きの事を伝えたら、一緒に食べようということになった。
家に着いて、冷蔵庫を開ける。うん。本当に大量だ。父さんも驚いていた。
全部は一度には食べられない。本当言うと食べきりたくない。圭が作った最後の食事なんだ。
おかずを少しずつ色んな種類皿に盛った。米は炊いてなかったけどパンは沢山あった。
父さんが、パンも圭の手作りかと聞いて来た。そうなの?パンは買って来てるのかと思ってた。
でもパン屋の袋じゃなくて、ジッパー付きの袋に入ってるんだ。もしかして手作りだったのかも。
ああ、手作りかどうかすら、俺は知らなかったんだな。
最初の数口は全く味がしなかった。気持ち的に参っていたんだと思う。でも、圭の作った料理をちゃんと味わって食べないと、と強く思って、食感を良く確認したり、
香りを嗅いだり、一口一口食べる事に集中していたら段々味が判るようになった。
「‥‥美味いなぁ‥‥。圭は料理の才能があったんだな‥‥。」
父さんが半泣きで言う。
「‥‥美味しいわね‥‥。」
母さんも、今日はちゃんと食べている。
食べながら話あった。この際だから、再婚して家を売るって話も聞いてみた。
母さんは付き合っている男性が居るのは本当だけど、まだ結婚の話は出ていないのだという。その人は賃貸物件に住んでいるので、マンションを買ったら結婚に踏み切ってくれるのじゃないかと思ったんだと。
それで家を売ってその売却金を元手にマンションを購入する事を考えたんだそうだ。
「先走り過ぎじゃないか。」
父さんがボソリといった。母さんはちょっと怒ったような顔をして父さんを睨んだ。
「そうしたら圭は貴方の所に行くだろうし、その方が圭も幸せだと思ったのよ。」
母さんは、圭が可愛く無いわけではなかったけど、どう接していいかわからなかったのだそうだ。
父さんと母さんが離婚してから、圭が何か心を閉ざしてしまったように見えて、接するのが怖くなったと。
「‥‥そんな回りくどい事せずに、面と向かって話をした方がよかったんじゃないか。」
「でも‥‥何時も部屋に籠ってしまっていて‥‥。嫌われているんだと‥‥。」
父さんに言われて母さんが俯いた。
嫌われてる?そんなわけないだろう。
俺は、牛ごぼうを口に含んだ。美味い。米が欲しい。
「嫌ってたらこんなに飯を作らないだろ?毎晩飯を用意していたりしないだろ。目を背け過ぎなんだよ。」
パンをちぎりながら、涙があふれそうになる。
俺も本当は母さんの事を言えない。ちゃんと向き合って来なかった。
ハンバーグを口にして、先日の卵焼きの事を思い出した。
ああ、こんなに沢山料理があるのに。もう、圭が作った卵焼きは食べられないんだ。
仁美叔母さんの事も気にかかるので、連絡して家に行くことにした。
ふと思いついて大きなタッパーに料理を詰めて持って行く事にした。
料理する気力とかないかもしれないから。
父さんの車で仁美叔母さんの家を訪れた。
仁美叔母さんの家には旦那さんの和人叔父さんと和人叔父さんのご両親も来ていた。
会うなり母さんと仁美叔母さんが抱き合って泣き崩れた。
俺と父さんは二人がおちつくまで黙って見守っていた。
仁美叔母さんは今日はたまたま自宅にいたので、学校からすぐに事件について知らされたそうだ。
連絡を受けて母さんにも仁美叔母さんから連絡をしてみようとしたけど繋がらなかったのだと。
学校に駆けつけてみると、消防車やパトカーが沢山停まっていて現場は騒然としていたそうだ。
家に着いて、冷蔵庫を開ける。うん。本当に大量だ。父さんも驚いていた。
全部は一度には食べられない。本当言うと食べきりたくない。圭が作った最後の食事なんだ。
おかずを少しずつ色んな種類皿に盛った。米は炊いてなかったけどパンは沢山あった。
父さんが、パンも圭の手作りかと聞いて来た。そうなの?パンは買って来てるのかと思ってた。
でもパン屋の袋じゃなくて、ジッパー付きの袋に入ってるんだ。もしかして手作りだったのかも。
ああ、手作りかどうかすら、俺は知らなかったんだな。
最初の数口は全く味がしなかった。気持ち的に参っていたんだと思う。でも、圭の作った料理をちゃんと味わって食べないと、と強く思って、食感を良く確認したり、
香りを嗅いだり、一口一口食べる事に集中していたら段々味が判るようになった。
「‥‥美味いなぁ‥‥。圭は料理の才能があったんだな‥‥。」
父さんが半泣きで言う。
「‥‥美味しいわね‥‥。」
母さんも、今日はちゃんと食べている。
食べながら話あった。この際だから、再婚して家を売るって話も聞いてみた。
母さんは付き合っている男性が居るのは本当だけど、まだ結婚の話は出ていないのだという。その人は賃貸物件に住んでいるので、マンションを買ったら結婚に踏み切ってくれるのじゃないかと思ったんだと。
それで家を売ってその売却金を元手にマンションを購入する事を考えたんだそうだ。
「先走り過ぎじゃないか。」
父さんがボソリといった。母さんはちょっと怒ったような顔をして父さんを睨んだ。
「そうしたら圭は貴方の所に行くだろうし、その方が圭も幸せだと思ったのよ。」
母さんは、圭が可愛く無いわけではなかったけど、どう接していいかわからなかったのだそうだ。
父さんと母さんが離婚してから、圭が何か心を閉ざしてしまったように見えて、接するのが怖くなったと。
「‥‥そんな回りくどい事せずに、面と向かって話をした方がよかったんじゃないか。」
「でも‥‥何時も部屋に籠ってしまっていて‥‥。嫌われているんだと‥‥。」
父さんに言われて母さんが俯いた。
嫌われてる?そんなわけないだろう。
俺は、牛ごぼうを口に含んだ。美味い。米が欲しい。
「嫌ってたらこんなに飯を作らないだろ?毎晩飯を用意していたりしないだろ。目を背け過ぎなんだよ。」
パンをちぎりながら、涙があふれそうになる。
俺も本当は母さんの事を言えない。ちゃんと向き合って来なかった。
ハンバーグを口にして、先日の卵焼きの事を思い出した。
ああ、こんなに沢山料理があるのに。もう、圭が作った卵焼きは食べられないんだ。
仁美叔母さんの事も気にかかるので、連絡して家に行くことにした。
ふと思いついて大きなタッパーに料理を詰めて持って行く事にした。
料理する気力とかないかもしれないから。
父さんの車で仁美叔母さんの家を訪れた。
仁美叔母さんの家には旦那さんの和人叔父さんと和人叔父さんのご両親も来ていた。
会うなり母さんと仁美叔母さんが抱き合って泣き崩れた。
俺と父さんは二人がおちつくまで黙って見守っていた。
仁美叔母さんは今日はたまたま自宅にいたので、学校からすぐに事件について知らされたそうだ。
連絡を受けて母さんにも仁美叔母さんから連絡をしてみようとしたけど繋がらなかったのだと。
学校に駆けつけてみると、消防車やパトカーが沢山停まっていて現場は騒然としていたそうだ。
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