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第4章 詩英1
第54話 圭の料理
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「何、溜め息ついてんだよ。」
台所に足を踏み入れて圭に声をかけてみると、圭がビックリした顔をして振り返った。何か疲れた顔してるな。疲れた顔して夜中に何やってるんだ?
「疲れたんなら作るの止めたら? そんだけ沢山作ったら充分だろ。」
「兄さん‥‥。」
俺がタッパーをじっと見てそう言ったら、圭がちょっと気まずそうな顔をした。何だ?何かあるのか?
「何?何かのイベント用?」
「ううん。作り置き。」
「はあ?」
作り置きってそんなにいるか?3人分だって言ったって食べきれないんじゃないか?
俺が呆れた顔をしてみていたからか、圭はタッパーをそそくさと冷蔵庫にしまい始めた。冷蔵庫って結構沢山物が入るもんなんだな。
テーブルには既に夕食の準備がしてあった。食べながら話ができるかな。
手を洗って席につくと、味噌汁を温めて出してくれた。
今日はサバの味噌煮か。美味そうだけど、ちょっと会話を広げたいな。
「‥‥今日は卵焼きないのか?」
つい、先日の卵焼きの事を思い出して話題にだした。って、食いしん坊キャラみたいになってないかな。
「え、食べたかったの?」
圭は意外そうな様子で俺の顔を見た。
「ああ‥‥あれ美味いから。」
言ってみるとちょっと照れる。でも、圭は思ったよりビックリした顔をしていた。
「え?」
「いや‥‥全部美味いよ? 卵焼きは特に好きなだけで‥‥。」
うん。圭の料理は全部美味いと思う。言うの照れくさいけど。
「‥‥美味しい?僕の料理?」
圭が小さい声で俺に尋ねた。俺は迷わず頷いた。
「ああ、圭、腕上げたよな。」
「‥‥っ。」
俺がそう言ったら圭が少し目線を落とした。え?肩が震えてる?目が潤んでる?泣いているのか?何で泣く?
戸惑っていたら圭はコホンと小さく咳払いをしてエプロンを外し出した。あ、気まずくなっちまったか。慌てて他の話題を探す。
「あんなに色々作ってたのに、卵焼きはないんだ?」
部屋に戻りかけている圭を呼び止める。
「‥‥卵は半熟煮卵に全部使っちゃった。」
「あー、アレも美味いよな。」
「あ、明日!明日作るね!」
圭がパッと明るい顔になって言った。よかった。
「ああ、楽しみにしてる。」
「‥‥。」
そう応えたら、何だか圭の顔がくしゃっと崩れた。スンと鼻を軽くすすっている。
「‥へ?泣いてんのか?」
「ち、違う‥‥。花粉症の季節だから‥‥。じゃあ、また明日ね。おやすみ!」
そういって今度は呼び止める間もなく、圭は部屋に戻って行ってしまった。
ああ、家の話とかできなかった。
でも明日卵焼きを作ってくれるって言っていたから明日も会話できるだろう。
そう。その時はそう思って安心していたんだ。
それが圭と会話をした最期の時間になるなんて思いもしなかった。
台所に足を踏み入れて圭に声をかけてみると、圭がビックリした顔をして振り返った。何か疲れた顔してるな。疲れた顔して夜中に何やってるんだ?
「疲れたんなら作るの止めたら? そんだけ沢山作ったら充分だろ。」
「兄さん‥‥。」
俺がタッパーをじっと見てそう言ったら、圭がちょっと気まずそうな顔をした。何だ?何かあるのか?
「何?何かのイベント用?」
「ううん。作り置き。」
「はあ?」
作り置きってそんなにいるか?3人分だって言ったって食べきれないんじゃないか?
俺が呆れた顔をしてみていたからか、圭はタッパーをそそくさと冷蔵庫にしまい始めた。冷蔵庫って結構沢山物が入るもんなんだな。
テーブルには既に夕食の準備がしてあった。食べながら話ができるかな。
手を洗って席につくと、味噌汁を温めて出してくれた。
今日はサバの味噌煮か。美味そうだけど、ちょっと会話を広げたいな。
「‥‥今日は卵焼きないのか?」
つい、先日の卵焼きの事を思い出して話題にだした。って、食いしん坊キャラみたいになってないかな。
「え、食べたかったの?」
圭は意外そうな様子で俺の顔を見た。
「ああ‥‥あれ美味いから。」
言ってみるとちょっと照れる。でも、圭は思ったよりビックリした顔をしていた。
「え?」
「いや‥‥全部美味いよ? 卵焼きは特に好きなだけで‥‥。」
うん。圭の料理は全部美味いと思う。言うの照れくさいけど。
「‥‥美味しい?僕の料理?」
圭が小さい声で俺に尋ねた。俺は迷わず頷いた。
「ああ、圭、腕上げたよな。」
「‥‥っ。」
俺がそう言ったら圭が少し目線を落とした。え?肩が震えてる?目が潤んでる?泣いているのか?何で泣く?
戸惑っていたら圭はコホンと小さく咳払いをしてエプロンを外し出した。あ、気まずくなっちまったか。慌てて他の話題を探す。
「あんなに色々作ってたのに、卵焼きはないんだ?」
部屋に戻りかけている圭を呼び止める。
「‥‥卵は半熟煮卵に全部使っちゃった。」
「あー、アレも美味いよな。」
「あ、明日!明日作るね!」
圭がパッと明るい顔になって言った。よかった。
「ああ、楽しみにしてる。」
「‥‥。」
そう応えたら、何だか圭の顔がくしゃっと崩れた。スンと鼻を軽くすすっている。
「‥へ?泣いてんのか?」
「ち、違う‥‥。花粉症の季節だから‥‥。じゃあ、また明日ね。おやすみ!」
そういって今度は呼び止める間もなく、圭は部屋に戻って行ってしまった。
ああ、家の話とかできなかった。
でも明日卵焼きを作ってくれるって言っていたから明日も会話できるだろう。
そう。その時はそう思って安心していたんだ。
それが圭と会話をした最期の時間になるなんて思いもしなかった。
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