半分異世界

第4章 詩英1

第53話 圭との今後

Yの言葉を聞いて俺はぎょっとした。俺の様子をみてYが慌ててフォローの言葉を追加した。

「あ、極端な話だよ。ごめん、変な事言って。」
「いや‥‥。俺もちょっと引っかかってた。‥‥父との思い出がない場所で暮らしたいだけかもしれないけど。」
「そう言う理由はまあ有りそうだけどな。ちゃんと話しを聞いてみたらいいよ。弟君のこともあるんだから、親父さんに相談してもいいと思うし。」
「そうだな。ありがと。」

Yと駅の改札前で別れる。今日はお母さんの家に向かうらしいけど途中までは普段と同じ路線らしい。いつもと同じ方角に消えて行った。

一人で電車に乗り込み、ドアの所に凭れながら父さんにメールを打ってみる。「ちょっと相談したいことがある。」と。
現在住んでいる家は母さんの名義になっているから、父さんに相談したからといって父さんが家の売却を止められるわけではない。
でも、もしも俺と圭でどこかアパートで暮らすとかになったら生活費の問題もあるんだ。早めに相談しておいた方がいいだろう。

父さんが一緒に住もうと言うだろうか。
父さんと会う時は何時も外だから、一緒に暮らせる状況なのかも知らない。
それと圭がどうしたいかだな。
‥‥まだ、母さんが再婚するとも決まってないんだけど。

電車を乗り換える頃に父さんから返事があった。今週末はどうか、と。日曜なら何時でもいいと。
ちょっとホッとした。バイトのシフト入ってた気がするけど、調整してもらおう。

ネットで関東圏学生行方不明事件というのを検索してみた。
あ、Yが映ってる動画発見。画像データは今日着ていた物と違う服装のものもある。
普段よりずっと真剣な顔で、訴えかけるように話をしている。Yの隣に立っている女性はお母さんかな。辛そうな顔をしてる。
早く見つかるといいんだけど‥‥。

更に検索してみたら「異世界召還か」なんて推測したまとめサイトみたいな物が出て来た。
なんだよ、面白がってるんじゃねぇよ。家族は必死なんだぞ。
圭も異世界とか興味あるみたいだったな。圭に話したらこのまとめサイトを書いている人みたいな反応になるんだろうか。

‥‥圭と最近ちゃんと話してないな。圭がどういう反応するか思い浮かばないや。
母さんが再婚して出て行くんだとしたら、俺は圭と暮らそうってそれは迷いなく思ってるけど、その前に向き合って会話しないとな。

帰ってみたら今日は台所に灯りが付いていた。
台所に行ってみると、圭が大量に積み上げたタッパーを前にして溜め息をついている。なんだ？どうした？